祭りは財布の紐が緩む
2019/05/06
第5話 箱入りお嬢様疑惑 内の通貨の設定を一部変更 追加しました 以下が変更および追加点です
銅貨100枚で銀貨1枚 銀貨50枚で銀貨1枚
銅貨1枚でパンが1つ、銅貨20枚もあれば宿に泊まれる
銀貨1枚あればそこそこいい宿に泊まれる、銀貨10枚くらいあれば高級料理も食べれる
銅貨と銀貨には10枚通貨とよばれるものがあり、銅貨10枚と10枚銅貨1枚、銀貨10枚を10枚銀貨1枚と交換できる
作者の勝手な都合で内容を一部変更し、読んでくださっている読者の皆様にご迷惑をかけてしまい申し訳ありません
「シェッフェル商会の青嵐祭限定一掃セェルだよー!」
「そこのお嬢さんどう??グラスフレーズのアイスクリーム!甘くって冷たくって夏の暑さも吹き飛んじゃうよー!」
「ランクスの肉を使ったジューシーなハンバーガーはいかが?」
「夏の精霊カロケリ様の希少な精霊結晶を使った装飾品はどうだい?少し値段は高いがね、この海を閉じ込めたような青い宝石、買う価値はあるよ?」
「西の大国から輸入したばかりの魔法道具はいかがだい?こちら空飛ぶ板のウォラーレタブラ!勿論安全機能もばっちり、落下防止に抵抗軽減機能搭載!」
「こちら一見普通の、しかして口に入れればあら不思議パチパチ弾けて味がみるみる変化!どぞどぞ百聞は一味にしかず、よってらっしゃい食べて見て!」
数多の屋台から聞こえる商人の勧誘と客の楽しげな声、色とりどりに彩られた王国都市を支配するのは祭りの喧騒。
学園を出るまではアイリスをたしなめていた側であったフランとミシェルすらも飲み込まれるほどに、楽しさで支配されていた。
「わぁ〜〜!!これだよこれ!やっぱ祭りはいいよねぇ!食べ物美味しそうだしあの魔法道具楽しそうだしアクセサリーも可愛い!!!」
「すっげぇ……」
「ナニコレめちゃくちゃ楽しそう」
キラキラとしたその空間に目を開きぽかんと呆気にとられるフランとミシェルに、アイリスは不思議そうに首をかしげる。
「フランとミシェルも青嵐祭参加したことなかったの?」
「……あー、まぁ俺はスエルテの隣国出身だし、そこから出たこともなかったからな。…………黒髪が祭なんぞ参加できるわけもなかったしな」
「……あはー、俺も入学するまでスエルテ来たことなかったしお家が厳しくってねぇ。…………祭なんてそもそも間近で見ることもできなかったしぃ?」
何かを思い出してるのか光が入らず死んだような目をしている2人に、それ以上の詮索はすることはなく。
祭というものの楽しさを今まで体験することなかった2人は、この光景を間近で見て漸くアイリスが遠足前の子供のようにワクワクしていた意味がわかったらしい。
「じゃあこれが初体験だ!食べてはしゃいで目一杯楽しむぞー!!」
「馬鹿、思いっきり引っ張んなって!」
「ちょっ、お嬢さんまってってば!」
楽しそうに笑ったアイリスは2人の腕を掴んで喧騒の中へと飛び込んだ。
「やっぱり祭の醍醐味は食べ歩きに屋台巡りだよね」
「そういうもんなのか?」
「そうそう、お祭りでしか見ないようなのも多いからね」
青嵐祭で屋台を出しているのは、スエルテに店を構える商会や商店の出張店としてだったり、はたまた他国からの商人たちである。
故にまだ国の間での取引が始まっていない他国の魔法道具だったり、祭限定出張店だからこその食べ物や薬類なども存在するのだ。
「祭はきちんとお財布の中身を確認しつつ心を惹かれたものは買うべし!がルールだよ」
アイリスの持論である。
割と偏っている持論だが祭というものを体験したことのない2人にそれがわかるわけもなく。
「「なるほど」」
…………幸いにか、青嵐祭の屋台では大手の商会なども絡むためぼったくりはないし、仮に割とヤバめなものがあったとしてもその辺りの観察眼には長けている為あしからず。
「おっとそこ行くお嬢ちゃんたち!アクアメーロ丸ごと使ったスイーツ、はどうだい?」
何を食べようか何処を見ようかと辺りを見渡していたアイリスたちに唐突に声をかけ、差し出されたの前前世では祭の食べ物といえばで代表的な林檎飴に似たもの。
見かけはにているが違っている点は、前前世での林檎飴は真っ赤なのに比べ、それは半透明で水のようなのに形を持っていた。
「アクアメーロってなんだ、普通のメーロと違うのか?」
「おや、もしかしてスエルテの外出身かな?なら知らないのも無理はないかな。カロケリ様の夏の領域は知ってるかい?」
人に住まいがあるように、国があるように、四季を司る精霊たちにも領域がある。
所属としては一応領域がある国の管轄となるが、その国の持ちものという訳ではなく、持ち主はあくまで精霊たちであり不可侵領域となるのだ。
夏の精霊、カロケリの領域はスエルテ王国の王国都市の北西部、ほぼ隣接した場所に位置している。
不可侵の領域は祭りの間のみ、一部の場所が開放され精霊を敬う人々がこぞって集まる。
「その領域の周囲にはカロケリ様の魔力が作用して、水種っていう……こんなふうに、水でできたような果物がなるのさ」
そう言って商人が見せてきたアクアメーロの果実は、一言で言うならば林檎の形をとった水だった。
「水の、メーロ……」
「ちょうど夏の領域はスエルテ以外の国とは面していないこともあってね、水種の植物はスエルテの特産なったのさ。ここじゃあんまり珍しくないんだけど、スエルテの外、特に精霊信仰の強いとこじゃ高級品扱いもされてるんだよ」
メーロとは、この世界における林檎に該当する。
そしてファンタジー世界ならではの種類が多く、この水でできたような水種のアクアメーロから始まり鉱石のように光るものなどが存在する。
「水みたいだけどきちんと質量があって、こんなだけど普通の果物と同じだよ?見た目と違って味がぎゅぅーって濃縮されてるみたいで甘くて美味しいよ!」
「おや、そちらのお嬢さんは食べたことがあるのかな」
「私の昔の友達が作ってくれたアクアメーロのパイがとっても美味しくって、好きだったんだぁ」
そしていくら見た目が林檎の形の水であるからといって、食べれないわけでもなければ調理できないわけでもない。
アヤメだった頃、その見かけに驚いたのは深く覚えている、それから一番料理上手だったリードが作ってくれたアクアメーロのパイの味がとてもとても美味しかったことも。
……ああいや、それだけじゃなくて、リードの作ってくれた料理はどれもこれも全部美味しかった。
「よーし、じゃあそれ、ください!フランとミシェルはどうする?」
「味気になるし、俺もください」
「俺もー」
「おっとまいどありぃ!ついでのついでにこれサァビス!この店は出張店でね、本店じゃあ他にも沢山の種類のメーロを使ったケーキやらが売ってるのさ。君の思い出のパイに負けず劣らずのが揃ってるからこちらの割引券持って是非是非ご贔屓に!」
水林檎飴を購入して再び歩き出す。
齧り付くと薄い膜を張った飴を噛み砕き、それからシャクリとした心地のいい音。
「うわ……これくそうめぇな……あんまっ」
「見た目は完全に水なのにちゃんと歯ごたえもあって味も普通のメーロより甘くて濃いんだねぇ……」
口から溢れるほどの果汁、水を噛んだようなものかと訝しく思っていたのだが、しっかりとした質量を持っていて普通の林檎よりも余程歯応えがあった。
薄くコーティングされた飴は非常にシンプルに、シロップで薄く甘く味付けられつつも、アクアメーロ本来の甘さが際立っている。
見た目が完全に林檎の形の水であるために、歯ごたえがあって水々しく濃厚な甘さが広がると不思議な感覚に襲われる。
「食べ歩きっていうのもプラスして更に美味しく感じるのが祭りの七不思議なんだよ」
「残り6つは?」
「特に欲しくないのに装飾品が欲しくなる、さっきも食べたのにお腹が空く、景品いらなくてもゲームがしたくなる、なんか知らない人とも喋れる、お金がすぐなくなる!」
「一個たりねぇ!お前今適当に考えただろ」
「なんでわかった!」
「なんでわからないと思った!?」
そう茶番をしているうちにあっというまに水林檎飴は食べきってしまった。
美味しいものほど食べてしまうのが早い。
「よし、次だ次ー!時間は有限、楽しめるだけ楽しまなきゃ損だもんね!」
2尾の虎のような姿のランクスの肉で作ったソースの味が染み込んだジューシーなハンバーガーに巨大なオオカミのような姿のルヴトーの串焼き、冬の領域周辺で取れる氷種の果物で作ったシャーベットに一口サイズでサイダーのようにパチパチ弾けては味が変化する綿菓子。
勿論満喫したのは食べ物だけではない。
西の国で作られた空を飛べる安全機能付きの魔法道具ウォラーレタブレ、大手商会の量は少なめだが安値の魔法傷薬、回数制限付きの簡易魔装、声を変化させるジョークグッズみたいな魔法薬、月の光で育つセレニルルディの花のアロマペンダント。
美味しいものをたくさん食べて、面白い魔法道具の体験もして、可愛くて綺麗な装飾品に心を踊らせる。
あぁやっぱり、祭りはこうでなくっちゃ!!




