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【初代地球王】  作者: 池上雅
第二章 【成長篇】
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*** 14 鉄の女にフォローは不要 ***


 そうした折りに、榊純子は研究所内で偶然厳真に出会ったのである。


 いつも霊たちの溜まり場に根を生やしたように座っている榊警部補が、研究所内を歩くことは珍しい。

 なにしろここに座って霊たちの話を聞いているだけで、ベテラン捜査員五十人分の捜査情報が得られるのだ。

 霊たちの数はどんどん増えているので、遠からず百人分になりそうである。


 だが榊の助手もようやく仕事を覚えて職務が効率的に動き出したので、たまには外に出てリフレッシュしようとしたのである。


 厳真とすれ違って会釈しようとした榊警部補は立ちつくした。


「真兄ちゃん……」

「純ちゃん……」


 厳真も立ちつくした。


 二人は県内のおなじ寒村の出で幼なじみだった。

 榊純子は、厳真の二つ年下で隣の家に住んでいたのである。


 当時から二人は淡い恋心を抱いていたのだが、家が貧しかった厳真、本名高橋真一郎は高校を卒業すると同時に出家して修行僧になった。

 純子も高校を卒業後は警察官となり、その後多忙を極めた二人は会うこともなかったのである。


 そのときたまたま居合わせた光輝は驚いた。

 厳真のこんな顔は見たこともない。

 榊警部補のこんな顔も見たことはない。

 鉄の女がまるでとうふのような顔になっている。それも赤いとうふだ。


 厳真は見事な権僧正の衣を身につけており、弟子を八人も引き連れている。

 純子もぱりっとしたスーツ姿だ。

 立ち振る舞いも警察官らしく張りがある。


 立ちすくむ二人を見て、厳真の弟子の霊視能力者の女の子が警戒するような表情で純子を見ていた。

 もう少しで厳真と純子の間に手を広げて立ちはだかりそうだ。


 その後、何故か榊警部補が研究所内にいることが増えた。

 心なしか厳真も研究所に来る回数が増えている。

 事情を知っている光輝は、奈緒ちゃん以外には誰にも言わずに黙っていた。



 今日は光輝たちの邸の屋上で、研究所の幹部と退魔衆たちを招いてのバーベキューパーティーである。

 もちろん非番の榊警部補も招待されている。

 退魔衆たちには私服で来てくれと頼んであり、みんなあの休暇旅行の際に買った、デザイナーズブランドのクールな服を着ていた。

 榊警部補も清楚な私服姿だ。


 お手伝いの異常研のバイト達に肉を焼くのは任せて、光輝たちも話の輪に加わっている。

 光輝と奈緒はなるべく厳真と純子を二人だけにしようと画策し、レックスさんとアロさんも協力してくれている。


 真兄ちゃんこと厳真は、純ちゃんこと榊純子警部補と昔話に花を咲かせていた。

 他の退魔衆たちは、やや驚いた顔をして彼らを遠巻きにして見ている。

 厳空と腕を組んだ詩織ちゃんもうれしそうに二人を見ていた。

 鉄の女はまたとうふの女になっていた。今度は薔薇色のとうふだ。




 翌日、また光輝は退魔衆たちとプールサイドで体を休めていた。

 厳真もいる。

 昼休みとあって、たくさんの大胆水着美女たちもプールサイドに来ていた。


 そこへ徳永署長からのやや急ぎの伝言を携えた榊警部補が来てしまったのである。

 そんなものは助手にでも任せればいいものを、今日は厳真が来ているのを知っていたのだ。


 研究所のスタッフに、「ああ、三尊さんでしたら退魔衆さんたちと一緒にプールサイドにいらっしゃいますよ。伝言でしたら私がお持ちしましょうか」と言われたが、「いえ、これは重要な伝言なので……」と断って、少し頬を赤らめながらプールサイドに来てしまったのだ。


 榊警部補は、まだ退魔衆たちが光輝の周りに居ようとする理由を知らない。

 大胆水着美女たちが勝手に退魔衆の傍にいることも知らない。


 そうしてプールサイドに来てしまった榊警部補は、その光景を見て立ちつくしたのである。

 警部補に気づいた光輝も硬直した。

(し、しまった!)


 榊警部補は、憤然とした顔で光輝に徳永からの伝言を渡した。

 そして、厳真やその周りの水着美女たちを睨み倒すと、また憤然とした足取りで帰って行った。


(ああ、やっちまった…… どうやってフォローしようか……)

 光輝は悩んだ。



 数日後の昼前、非番のはずの榊純子が研究所に現れた。

 受付でどの退魔衆たちが来ているかを確認する。

 今は全員光輝とまたプールサイドにいるそうだ。


 榊警部補は、いつもの怖い顔をいっそう怖くして、決然と自分の為に用意された滅多に使わない部屋に向かった……


 光輝はまた退魔衆たちとプールサイドにいる。

 厳真もいて、二人はその後の仕事について打ち合わせをしていた。

 まだ昼休み前なので大胆水着美女軍団はいない。


 厳真と向かい合って話を続ける光輝が硬直した。

 目は厳真を素通りして厳真の後ろを見ている。

 厳真が振り返ると、そこにはこれ以上は無いという超絶大胆水着をつけた榊純子が、顔を真っ赤にしながらも決然と近寄って来る姿があった。


 それはそれは見事なプロポーションである。

 体重移動も大きく、立派なおっぱいがゆさゆさ揺れている。

 厳真も硬直した。


 純ちゃんこと榊純子警部補は、日光浴用のプールサイドベッドを持つと、それを無言で厳真のすぐ隣に置いて、一瞬厳真を睨みつけるとやはり無言でそれに寝そべった。

 なんか文句でもあるのか、という顔だ。


 純子の位置は、プールサイドへの入り口と厳真を結ぶ線上である。

 あまりのことに光輝と厳真はいつまでも硬直を続けた。

 光輝は純子の見事な肢体を見ないよう、必死で努力していた。

 おしりなんかほとんど丸見えだ。


 純子が「んっ」と言ったので光輝がチラ見すると、なんと純子は背中に手を回して、水着の上の部分のヒモまでほどいてしまっている。

 もう上から見ると、ほとんどウエストに一本のヒモが巻かれているだけの裸である。


 光輝は反応しないよう、全身の自制心をかき集めて耐えた。

 もう一度でも見てしまったら自制心は崩壊しそうだ。



 まもなく昼休みになり、スタッフ大胆水着美女軍団がやってきた。

 そして厳真のすぐ隣に横たわる、榊純子警部補の超絶大胆な水着というか単なる素晴らしい裸を見て、彼女たちも硬直した。

 遠目には本当に裸に見える。


 純子は胸の大事なところだけ手で隠して上半身を起こした。

 乳蕓が少し見えた。

 光輝が前かがみになった。


 純子は美女軍団にも見えるよう厳真を見つめてにっこり微笑むと、顔を美女軍団に向けて鉄の女の顔で睨みつけた。


 もしも美女軍団が真兄ちゃんに近寄ってきたら、大きく口を開けて、「しゃーーーーっ!」と威嚇しそうな顔であった。


 鉄の女にフォローは不要だ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 瑞巌寺での法要がさらに増え、僧たちの疲労度がさらに高まると、光輝は日中のほとんどを瑞巌寺で過ごすようになった。

 奈緒も瑞祥おばあさん軍団を手伝いに来ている。


 若い僧侶たちはともかく、上級の僧侶たちは、退魔衆のように光輝の近くにいると疲労が回復することがわかったからである。

 特に座禅中は回復の度合いが大きいので、光輝は毎日修行場で座禅を組むことにしている。

 瑞厳寺に手伝いに来ていた僧侶たちはこれを大いに喜んで、光輝の人望はますます高まった。


 光輝の近くにいて疲労回復を図っていた退魔衆たちも、捜査協力当番を除いて瑞巌寺にいるようになったので、厳真や純子さんには少し気の毒だった。

 試しに奈緒が純子さんに、もしよろしければ非番のときには、たまに瑞巌寺に来てお手伝いして頂けませんでしょうか、と言ってみると、純子さんは非番の日は毎日瑞巌寺に来て手伝ってくれるようになった。


 光輝は奈緒を通じて、純子さんを退魔衆お世話担当に誘導したが、厳空や厳真は何も言わずにいた……



 厳空は退魔衆にもたまに休暇日を設け、その日は絶対に瑞巌寺にいてはいけないというルールも課した。

 休暇の日は厳空が決めたのだが、もちろん厳真の休暇日は榊警部補の非番の日に合わせている。

 その日は榊警部補は瑞巌寺に手伝いに来なかった。


 どうやら榊警部補は、仕事ばかりしていて溜まりまくっていた貯金で新車を買ったらしい。

 元捜査一課員は車の運転も上手く、A級ライセンスまで持っていた。




 そのうちに、権僧正未満の退魔衆の若手僧侶たちの十人全員が、おぼろげながらも光輝の後上方の光が見えるようになってきた。

 疲労回復には光輝の傍らにいるだけで充分だったが、霊力UPにはやはり座禅が有効だったようである。

 彼らも無事権僧正に昇格した。


 退魔衆予備軍団の若手僧侶たちの霊力もどんどんと上がって来ているそうである。

 何度も光輝と座禅を組み、日中は成仏の法要という修行に明け暮れているからなのだろう。


 彼らもその霊力の上昇に見合うように、僧階を上げてもらった。

 下級退魔衆として、新たに十人のメンバーも加わったため、退魔衆たちの休暇も増やせた。


 みな疲労困憊だったが表情は実に明るかった……



 そうこうしているうちに、霊たちから不満の声が出始めたのである。

 県内にはもうほとんど子供の霊がいなくなり、また検挙率も限界近くまで上がって来たので、妄執充足ポイントを溜めることが出来なくなってきているという。

 近県にはまだたくさんの子供の霊がいるが、なにしろ遠いので子供の霊を連れて帰ってくるのが大変なのだそうだ。


 瑞祥研究所は、こうした霊たちの不満の声に応えた。

 まず厳攪に依頼して、近県の瑞巌寺とおなじ宗派の寺でも子供霊供養の法要を始めてもらったのである。

 その寺の住職はむしろ喜んだが、光輝の修行会に参加できないのが残念だと言う。


 そこで祭主や法要参加メンバーを入れ替わり制にして、全員が均等に修行会に参加できるようにしたのである。

 瑞祥交通のバスが走りまわって僧侶たちを移動させた。


 捜査情報についても、近県の情報も歓迎して、県警本部から警察庁を通じて近県の県警に情報を下ろした。

 普通この手の情報は現場の警察官は嫌うものだったが、なにしろオレオレ詐欺発生率ゼロを達成した奇跡の情報原からの情報である。

 しかも実際の捜査情報は、質、量ともに目を瞠るものだったのだ。

 追加捜査の依頼も出来た。

 特に張り込み系の情報は素晴らしい。


 現場の警察官ほどすぐにこの新たな状況を歓迎するようになり、霊たちはあちこちに出稼ぎに行った。


 龍一所長は近県の何箇所かに建物を借りて、霊たちの溜まり場兼捜査情報収集所を作っている。

 上級退魔衆たちが交代で訪れて、元警察官の霊が捜査情報をまとめると、ゆっくりとだが近県の検挙率も上がって行った。


 子供霊の成仏数も八百柱を超えた。


 厳空の特殊苦行部隊は十八人に増えている……






(つづく)


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