traintrend
「いやーヘッドの頭は羽を休めるのに丁度良いわ」
ギャグは冗談めかして言うと
「じゃあちょっと行って来るわ」
と便器の中に飛び込んで行った。
「お二人さん落ち着いて…」
「へぇ、この子が幹かぁ…思ったより不細工だな」
セットは溜め息をつきながら私の肩を抱く。
「これから一緒に旅をする仲間だ。幹、彼は案内役のマクロ」
マクロは立ち上がると、私の顔をジロリと眺め、こう呟いた。
「お前は自分の影に囚われちまっているな。そう言えば自分の荷物はどうしたんだ?」
私はハッと気付く。
私の学生鞄が無いんだけど、どこに置いてきたのだろうか?
ヘッドは遮る様にひょこっと顔を出す。
「あれ?」
ヘッドはピタリと止まり、ジャケットのポケットを探ると、ピンクゴールド色の欠片を取り出した。
「これ、セットに渡すの忘れちゃったーまぁ良っか。幹、これ預かっておいて」
「いやいやセット、それはこの子の持ち物じゃない。お前の手から直接、クラゲさんに渡すべきだろう」
と、セットは私の手を引きながら答えた。
男の人に余り触れて事の無い私は何だか照れてしまう。
先頭を行くセットさんは案内役だと云うのに、後ろを振り向きもしない。
ギャグは考える。虫である自分と比べて、人間たちはどのような目線で物事を見ているのだろうか。
そりゃあ俺は虫だから仕事はしなくて良いし、水道を使って自由に水族館やお菓子屋さんを行き来出来る。
あいつらはそんな俺を黙認しているが、多分本当は羨ましいのだろう。