trainhand
青年は無視して、此方を向くと私の眼をジッと見てこう言い放った。
「おい。そこのお前。このままだと不味いぞ?」
「…はい?」
「人が良い気持ちで寝てたっつーのに叩き起こしやがって…」
マクロさんはすこぶる不機嫌な様子でセットを睨んでいる。
「あぁ!?人1人増えるだけでヘッドにどれだけの負担が掛かると思っているんだ」
「知らねぇよ。この前のリング事件の事故はお前が考えも無しに突っ走ったからだろう。おんなじ人に何回も何回も道聞かれて、俺は案内役を買って出たがな。それは皆のためだ」
「まぁまぁ、お二人さん」
テントウ虫がマクロさんの頭上に停まり、仲裁に入る。「ここにおられる新入り、衣芙子殿も困っておられるようだ。ここは1つ黄色の切符をノニに預けてみてはどうかな」
「じゃあ、ちょっくら行って来るわ」
ギャグは元気良く、便器の中に飛び込んで行った。
私は唖然とそれを見送る。
「だ、大丈夫なの!?今の虫!?水中動物じゃないんですけど!!」
ヘッドはジャケットを脱いでこう答える。「私も少し水泳して来ようかなー大丈夫だよ。ギャグの羽にはね。防水加工がしてあるからね」
ヘッドちゃんはツカツカと私に歩み寄ると、黄色の切符を目の高さに付き付けた。
「この切符はなぁ。自分が存在している場所、地面の裏側にもう1人の自分がいて、そいつとの架け橋になるアイテムだ。大切にしろよ」
「お前にはもう関係の無い事だからな」
と、車掌帽子を取りながらセットが呟く。
私に言っているのか、マクロさん言っているのか分からない口調だ。
ヘッドはジャケットを肩に担ぐと胸を張り、得意気に解説を始める。
「その自分と自分は足の裏で繋がっているの。そんで、その足の裏で繋がっている『世界』は『同じ』世界なの。でも、違うの」
何だかザックリと説明されてものすごく腑に落ちない気分だが、私は取り敢えずこう答える。
「私、そう言えば今日、電車に乗るとき、自分の荷物を座席上の荷物置き場に忘れたのだけど…知らない?」
ギャグは笑い転げている。
「えーっと。荷物担当はネットさんだからね。一緒に訪ねてみようか」
「…分かった…あなた達の事、とりあえず信用するわ」
私達はそう言うと、3両目の列車に移動することにした。




