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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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33/57

♰33 魔界で枯れる植物の原因解明。

   ●♰●♰●



 そういうことで、近場の岩場の窪みに水魔法を注いで、水浴び場を作成。

 キャッキャッするもふもふっ子を眺めつつ、ブーツを脱いで足だけ浸かる。

 念のため、年長者の少年であるチーターの子に、見守らせた。

 水遊びは、魔物の子でも危険だもの。……多分。


「やはり、魔界の空気や土では、普通の植物が育ちそうにないな」


 隣に座るリスタが、そばにある土を摘まんではそう告げた。

 試しに植物の芽を『創造』したのだけど、みるみる萎れては、枯れ果ててしまう。


「でも瘴気を浄化して試してくれるんでしょ?」

「ああ、まあな」

「この村でする?」

「いや、地上でも言ったが、むやみに植物を作って、他の魔物が食い荒らす理由を作ってはいかんだろ。ここで一本、成長させてみよう。ついでだ。我の加護を使う練習もするか?」

「うん、する」


 リスタも水に着けていた足を抜くと、浄化用の石を取り出す。ポン、と白い石が辺りを浄化した。

 子ども達はその光りに興味を抱き、近寄ってきたが、リスタに睨まれて身を縮める。

 精霊だもんね。子どもとは言え、魔物だもの。私の時も、警戒マックスだったしね。魔物と相容れないはずの精霊。なのに魔界で、魔界の植物を作ろうとしてくれている。

 変わり者って言われちゃうよ、リスタ。


「他の属性の魔法と同じだ。標準を合わせ、魔力を注ぎ、魔法を発動させる。意識するのは、我の力だ」


 リスタのご指導。丁寧だ。

 手を合わせて、植物を操る魔法、緑属性の波長を教えてくれた。


 スン、と鼻を鳴らして、瘴気を綺麗さっぱり浄化した空気を吸い込む。

 うん、まぁ変わった気はする。その中心に芽を生やした。

 が、しかし。順調に成長したそれを、一先ず手放すなり、しおしおと枯れてしまった。


「あれ? 枯れちゃったよ、リスタ」

「ん? おかしいな。瘴気は浄化済みなんだが……」


 怪訝に首を捻ったリスタも、芽を生やす。しかし、魔力を注ぐことをやめてしまえば、枯れ始めた。


「んん? なんだ?」


 はてなマークを出しまくりながら、土ごと芽を手に取るリスタ。


 後ろでは、子ども達が「あれ何かな?」「なんだろうね」「食べ物かな?」と、ソワソワと話している。


「なぁーんだ。瘴気さえ浄化すれば、精霊の力で魔界に緑が生えるかと思ったけど」

「精霊王も大したことねーな」


 なんて、見学していた双子吸血鬼は、ケラケラとリスタを嘲笑った。


「簡単じゃなかったね、やっぱり。浄化するだけじゃだめってことは、瘴気以外に何かあるってことだよね?」


 青筋立てているリスタに、声をかけてこっちに集中させる。


「土に水分は足りないが……かと言って、枯れ方が尋常ではないな。水不足が原因とは考えられん」

「土の栄養分の方は? ポーションで補ってみる?」

「栄養分だって、枯れる元凶とは言えん。これでは吸い取っているかのようだ」


 ジロジロと注視するリスタ。原因を解明しようと、土をいじり、葉をいじる。


【魔力感知】 【未確認の気配が接近中】


 村の住人はすでに敵ではないと認識したから、外部から近付いてくる気配を『魔力感知』が知らせてくれた。


「肉の焼ける匂いにつられた獣が来たようです。始末しに参ります」


 子ども達を見ていたロンがそう言い出す。


「いや、いい。ロン殿。客人の手を煩わせることはない」と、熊男な村長が断りを入れたが。


「ついでだ。他の村にも、顔を出してくる。いいですかな? ルビィ様」

「じゃあ、私達は待ってるよ。双子を連れてって。暇してるから」

「「ええー! ルビィといたい!」」

「サクッと狩って戻って来ればいいじゃん」


 私はリスタと植物作りをもう少し集中したい。大公爵も。

 双子吸血鬼は、しぶしぶとロンのあとに続いた。

 喧嘩しないといいけど。喧嘩するなら、名前をテキトーにつけてやるわ。


「大公爵。植物が一応生えている国とかを調べてくれたでしょ? その特徴を教えてくれる?」


「はい! ルビィ様!」と、キラキラと明るい顔をする大公爵は、胸に手を当てて生き生きと話し出した。


「第一王国の王城に庭園があることは有名な話ですが、次に有名なのは第七王国です。水が多く、そこに生えていることが多いです。特徴としては、半分の土地が砂漠ですが、川と湖が多いのです。水の魔物が生息していますが、その湖の中で水草も豊富なのだとか。木も茂みも生えています。あまり多いとは言えませんが」


 アラビアンな王国のようだ。とはいえ、あくまで他国よりも植物がマシにあるというだけという口ぶり。


「砂漠の地? うーん、元々そういう環境に慣れた植物だということかな? リスタ」

「その植物を実際に調べた方がいいかもしれんな」


 ということで、リスタと私は大公爵に注目。


「第七王国なら、あちらの方角にありますよ、精霊」


 冷たい空気を放って方角を指差す大公爵。取りに入ってくれないようだ。

 まぁ、大公爵も気軽には他国に足を踏み入れられない追われの身。

 かといって、精霊のリスタが魔界を移動していいかどうかと問われると返答に困るが。


「ルビィ、命じろ」

「でも、リスタ。植物だけじゃなく、環境の方も見た方がいいんじゃない? 育てるためにも環境のことも調べないと」

「うっ……なら一緒に行くか?」


 第七王国へ行く……?


「何故そうなるのですか?」


 意味わからないと目を見開いて食いつく大公爵は、私とリスタが行くことを反対したいらしい。


「他国に足を踏み入れて、また敵対する可能性があるのですから、それはお勧めしません」


 それな。


「しかし、おかしいな。瘴気を取り去っても、この枯れ方……。他に要因があるのか? 『鑑定』では出ないが」


 リスタは引っかかっているようだ。

 そうだね。意識を向けても【魔界の土】や【魔界の空気】と表記されるだけだし。

 しょうがないから、ポーションをかけて先ずは土を生き返らせた。

 ダメ元で『浄化』の石も埋めて、瘴気を徹底的に取り除いて、植物を生み出す。

 ちょっと成長させて、なるべく丈夫な状態にさせる。それでも萎れてしまうから、リスタは躍起になって原因解明に取り掛かった。


「魔界だから『浄化』が発揮していないんじゃない?」

「それはないぞ! 我の『浄化』を疑うな!」


 プンスカするリスタ。ごめんて。


「じゃあ、大公爵。その第七王国は? もう少し情報ないかな?」

「第七王国の特徴ですか……。やはり違いは”水”でしょうか。水自体が多いのもそうですが、水中に住まう魔物も多いです。逆に砂漠の中にも上にも、魔物もいますけれど、そこに植物はないでしょう」


 顎に手を添えて、大公爵は考えながら答える。


「代表的な魔物は?」

「水中だと鰐型の魔物や魚人型の魔物ですね。砂漠は、巨大ワーム型の魔物が危険視されています」

「魚人型? その魔物も、変身するの?」

「いいえ? 魚人は、デフォルトが変わりません。水を這い出ても、足は魚じゃなく、水かきとヒレがついているのですよ。地上でも動けます」


 デフォルトが変わらない、か。

 きゃーきゃー、と声がするから見てみれば、こちらを覗くことを飽きた子ども達が水遊びをしていた。

 何人か、獣化していた。大型犬がいたり、一回り小さな猫系の獣がいたり。ボンッと毛色と同じ色を撒き散らして、獣人化した女の子が、両手で水を飛ばした。


 それを見て、閃く。



「ねぇ。原因って、()()じゃない?」

「「え?」」



 私の顔を見て、目を丸くする二人。


「魔素が邪魔しているかも。魔界だし、魔素には満ちているでしょ? 第七王国には、魔素を放つような変身する魔物がいないから、魔素量が少ないのかも。逆にここでは、獣人化する魔物ばかりいるでしょ。魔素が多いのかも。多い魔力があっても、脆くなるでしょ、植物は。魔力と魔素も似たようなものだし、そのせいでは?」

「「……!!」」


 私の推測を聞いて、二人して豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔をしては、コクリと頷いた。


 原因、魔素でした。



 

あと二話。

2024/01/19

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