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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに


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34/57

♰34 魔素耐性の植物の『創造』

   ●♰●♰●



 原因を突き止めても、取り除くことは思いつかない。

 瘴気は『浄化』が出来る。でも、魔素は無理だ。

 方法がない。魔力と違って、魔素の感知が出来ないくらいだもの。


「魔素を取り除く方法だと……?」


 リスタも頭を悩ませて、眉間を親指でこねた。


「魔力だって取り除けませんので、どうしましょうか……」


 腕を組んで考え込む大公爵。


「でも、魔力は消費出来るものでしょ? 魔法を使えば、魔力は減る」

「そうですが、空中の魔素を減らすとなると、魔法を使うだけでは無理でしょう」

「変身は? 魔力を魔素に変換して、それで魔素が変身部位を補うでしょうけど、それは消費とはならないの?」

「「……」」


 私の質問に答えがわからない二人は、沈黙して考え込んだ。


「おーい、お手伝いしてほしいことがあるんだけど、いいかなー? 手伝ってくれたら、美味しい物あげるよ?」


 これは試した方が早いと思い、水遊びする獣っ子達に呼びかけた。

 美味しい物に釣られた彼らは、バシャバシャと水飛沫を上げて駆け寄る。


「なになに?」

「なにすればいいの?」

「美味しい物って何? お肉?」

「手伝ってくれる子は、ここに一列で並ぼうか」


 はしゃぐ獣っ子達は、言われた通り、地面の上に肩を並べて座り込んだ。

 びしょびしょのままだと見ていれば、急に不安げな表情になる獣っ子達。

 怒られるとでも思ったのだろう。水浴びは綺麗にするためだったから。

 大丈夫だと、笑みを見せて『清浄』で、泥を取り除いてやる。


「じゃあ、お手伝いをしてもらおうか。簡単だよ。獣化と獣人化をして見せて。変身、出来るかな?」


「かんたーん!」と、声を上げるのは半分。

「うまくできないかも……」と眉を下げるのは、すでに顔が獣の子ども。


「練習でもいいよ。じゃあ、先ずは、皆で獣化して? せーの、はい!」


 パンと手を叩くと「えいっ!」と各々で獣化する。超大型犬サイズのもふもふな獣が並ぶ。


「じゃあ、次は獣人化だよ。せーの、はい!」と、またパンと手を叩く。


 ポンッと、獣耳と尻尾をつけた子ども達となった。中には上手くいかない子もいるけれど。


「いいね。じゃあ、もっと変身しようか? せーの、はい」と、またパンと叩く。そのあとも、パンパンと手を叩いて変身を促した。

 一種の遊び感覚で、子ども達はキャッキャッと変身して見せる。


「これぐらいでいいかな。リスタ」

「お、おう」


 リスタに合図を送って、ダメ元で植物を生み出してもらう。にゅるっと伸びる芽が息吹く。


「「「ほー!」」」と子ども達は、見慣れない植物を目の前で見て、凝視した。


 私達も観察をしたが、植物は枯れる素振りを見せない。

 成功したようだ。変身で空気中の魔素は減らせた。瘴気も除外した空気と、ポーションで潤いを与えた土で、植物は保っている。

 ホッと顔を見合わせたあと、リスタは隔離の結界を張った。魔素が入らないためだ。


「なるほど……瘴気も植物を生ませない要因ではあったが、魔素が満ちているからこそ、魔界で植物は育たなかったのか」


 リスタは、しげしげと驚いていた。


「青天の霹靂の発見ですね……流石、ルビィ様」


 大公爵も、興奮で瞬きしつつ頷く。


「魔素に耐性ある植物を『創造』することが、目標にすればいいのかもね」


 それって可能かな。と、リスタに尋ねる前に、子ども達には褒美をあげないとね。

 『収納』からお菓子を取り出して、クッキーを一枚一枚、手に置いてあげた。


「甘いよ」

「あまいって何?」

「食べてみればわかるよ。甘くて美味しいから。これはお菓子でね、クッキーだよ」

「「「クッキー?」」」

「スンスン! ふわふわな匂い!」

「かじってみて?」


 ”甘い”も知らない子ども達に、一口、食べることを促す。

 かじりつくと、甘さに目を輝かせて「「「んー!!」」」と声を上げる。犬系の尻尾はブンブンと振り回されて、猫系の尻尾はビシバシと興奮で地面を叩く。


「甘い!? これ甘い!?」

「そうだよ、甘いクッキーだよ」

「クッキー! 甘い!」

「美味しい!」


 ふふっ、と笑ってしまう。

 あっという間に食べた子ども達は、一枚を食べ終えてしまい、うるうると物欲しそうに見上げてくる。


「今日は、お肉をいっぱい食べたでしょ? だから、次は半分こだけ。いいね? 夜になったら、またお肉だから、終わったあとに、またあげるよ」

「よ、夜もお肉、食べられるの……?」


 はわわっと、目を輝かす犬系の女の子。

 不憫だ……。圧倒的、食料不足で、三食食べられるかもわからない生活。

 ひもじいね、魔界っ子。過酷。


 でも心を鬼にして、一人、半分だけのクッキーを渡した。

 きっと胃袋も小さいだろうから、いきなり多くは食べさせない方がいいだろう。また夜ね。


「いつもは何食べてるの?」

「スープとか」


 調味料になる素材で、スープを……?


「魔獣の肉は不味い! ……夜は魔獣の肉?」


 魔獣肉が夜ご飯かと、ガビンとショックを受ける獣っ子達。


「ううん。地上の魔物肉だよ。さっきの味は気に入った? もっと他のも試す?」

「「「もっと!?」」」


 他の『美味しい』を味わえると聞いて、目を輝かせる獣っ子達。いい子ね。


「濃厚な魔素量では、植物には毒となる、か。ルビィの言った通り、魔力もとい魔素に耐性ある植物の『創造』だな。そう何度も魔素消費するために、大人数で変身させるわけにもいかん」

「魔法耐性が高い植物って、そもそも『創造』は出来る?」

「んー。魔法耐性となると……火属性の耐性のものなら『創造』したことがあるが……。ここは無属性耐性を試行錯誤してみるか」

「属性指定が必要なら、確かに無属性がいいのかもしれないね。私も教えて」

「まぁ、待て。我が先に作れるか試す」


 リスタは悩んで、掌でもやもやと若緑色の光りを操って、試行錯誤を始めた。

 結構、手こずっているようだ。


「リスタ、根を詰めないでね。リスタも、大丈夫なの? 魔界の空気は」

「問題はないぞ。瘴気が鬱陶しいだけで、魔素なら精霊だろうが人間だろうが、有害にはならん」

「いつまでもいられるの?」

「いたくはないがな。少し一人にしてくれ、集中する」

「わかった」


 魔界の空気で有害なのは、瘴気だけ。長時間いても、精霊のリスタに害はないらしい。


「大公爵。『覚醒』で『特殊条件』ってクリアした?」

「『覚醒』の『特殊条件』ですか? いえ、自分は普通の条件をクリアしただけです。ルビィ様、何か『特殊条件』をクリアなさったのですか? それは、特別な報酬などが付与されるものですか?」


 大公爵と二人きりになったので、ちょうどいいと聞きたかったことを尋ねる。

 同じ『祝福(ギフト)』持ちだったので、こういう質問が出来るのは、大公爵だけだ。


「うん。報酬で獲得した」

「その『特殊条件』次第で、新しい強化能力を獲得出来るのでしょうか。……ああ、精霊の加護が、その条件クリアに?」


 大公爵の目が、試行錯誤している精霊王に留まる。その通りだと、頷く。


「その獲得能力は、『覚醒』後に使用可能ですか? それともすぐに使用可能に?」

「うん、もう使用可能。リスタに教えてもらおうと思ったけど」


 今は、新植物の『創造』集中だものね。


「それはいいですね」

「?」

「『覚醒』後に、また強化されるでしょうから」

「そういうもの?」

「ええ。『覚醒』すると、全ての能力が強化しますからね」


 得た能力が、またパワーアップか。


「赤いお姉さん……」と、そこで犬系の女の子が声をかけてきた。はい、赤いお姉さんですよ。



「ルビィ様とお呼びなさい。この方には名がありますよ」


 ドーンッと威張り散らす大公爵。大人気ない。



「名持ちの……!」と慄く獣っ子達。


 気付かなかったのか。呼称だとでも思ったのかな。


「名前、名乗っていいの?」

「あっ……」


 追われの身なのに、と思って尋ねたら、失言だと気付いた大公爵。


「ん? 名乗ったっけ? 第十三王に」

「双子が言いふらしていそうですね」

「ああね……」

「「呼んだ?」」


 ひょっこりと戻ってきた双子吸血鬼が、何食わぬ顔を出してきた。


「十三王に、私の名前を話した?」

「ルビィの名前? さぁ?」

「三王のアンヌリリスの前では、ルビィの名前呼んだけどな」

「でも名前を知ったところで、見つかるわけでもないっしょ。第十三王国なら、捜索のために名前を出すかもしれないけど、第三王国の手の者が捜索には来れないだろ。ぶっちゃけ、あの騎士団召喚ってギリギリアウトじゃねーの? バレたらさ」


 ニヤニヤと笑う元ジェスは、仕えていた第三王国が戦争状態になりかねないことを嘲笑う。


「捜索か。大公爵が先に捜索するって言い出したけれど、本来なら追跡者には誰が差し向けられたの?」

「捜索ですか……。私も一緒となると、下手な追手は送り出さないでしょうね。となると、姉弟の魔族が一番考えられます。ほら、『闇喰らい』を喰らった配下がいると話しましたでしょう? その魔族にございます。大喰らいですよ」

「姉弟なんだ? 『闇喰らい』を喰らったなら、闇魔法の使い手なんだね」

「残念ながら、いつも食べている様子しか見ていないので、強さを正確には知りません……」


「役立たずだ」と、元ディスが指差すから、ブチッと青筋を立てる大公爵。


「あなた方はどうなんですか? モノクルの大公爵も『闇喰らい』は? 正確に強さをご存じで?」

「ああ。お前より強いぜ?」

「ほほほーう? 面白い」


 ゴゴゴッ! 一触即発の威圧感。


 その威圧に、獣っ子達はおずおずと後ずさる。

 そういえば、私に用事があったと思い出して、私の方から歩み寄った。


「さっき呼んだよね? なぁに?」


 しゃがんで首を傾げて問う。

 しかし、双子吸血鬼がジトリと見下すので、獣っ子達は小刻みに震えた。

 なので、ギロッと私の方で睨み返す。しれっと顔を背ける双子吸血鬼。


「……あそぼって」と、ぼそりと黒豹の片目の男の子が呟く。


「遊びたいの? いいけど、私が決めてもいい?」


 とりあえず、承諾すると目を輝かせた。


「遊びながら強くなろうか」


 その提案には、輝かせた目を丸めてキョトンとする。



 

明日、ラスト更新。

2024/01/20

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