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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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31/57

♰31 『魔境』でお肉集めの作業ゲー。

   ●♰●♰●



【成長ポイント会得】


 目を覚ませば、その表記。いつもの睡眠報酬のポイントゲットか。

 そういえば『精霊の加護』って、成長ポイントを貢げるのだろうか?

 なんて意識を向ければ、『精霊の加護』の説明文は出るけれど、成長ポイントは振り分けられないらしい。表記されなかった。


「おはようございます、ルビィ様。昨夜ダロンテが、料理長の料理を届けてくれました。ビーフシチューです。温めますか?」


 いそいそと着替えていたら、扉越しに挨拶したロンがそう声をかけてくれたので、お願いする。


「問題児の双子は大人しくしてる?」

「はい。精霊王と大公爵の手前、大人しくしております」


 名を捨てた今では、完全に力の差は明白か。精霊王相手では不利すぎるものね。大人しくもなる。

 と、思ったのは甘かったらしい。部屋から出るなり、突撃を受けた。


「「ルビィおはよー!! 髪ブラシさせて!!」」


 容赦ないタックルを食らい、倒れかけたが、双子はしっかり抱き締めてくる。ちょうどいい位置にあるので、肘を脳天に叩き落としておいた。

 それでも離れなかった、クソが。

 悔しがっていた私の代わりに、リスタが蔦で縛り上げてくれた。


「おはよう、ルビィ」

「おはよう、リスタ。見張りを頼んでごめんね。森に戻らなくても大丈夫?」

「まだお前の安全な帰還場所も決まっていないだろう」


 呆れられたけど、ツンデレパパ、過保護化してるよ。



 ダイニングルームで煮込まれたビーフシチューを、朝から平らげる。


 双子吸血鬼は「「ホントに食べてるー」」と、しげしげ眺めてきた。


「美味しいよ?」とスプーンを差し出すと「「ルビィ……好き」」と顔赤らめたあと、どっちが先に食べるかを争い始めたので、放っておくことにした。


 食後の紅茶を啜っていると、大公爵がようやく顔を出す。


「大公爵、おはよう。どこ行ってたの?」

「おはようございます、ルビィ様。キンバリー伯爵邸で色々教わっておりました」


 キンバリー伯爵邸に戻っていた……?


「……迷惑かけてないよね?」

「はい、もちろんです。ルビィ様が懇意にするキンバリー伯爵の内情を把握し、現在の王国の情勢も大雑把ですが把握してきました」


 ドヤァとする大公爵。

 私はこの変態が変態さを披露していないか、ちょっと心配である。


「というか、聞いていなかったけど、大公爵はまだ地上に居られるの?」

「はい。魂のストックがありますので、ご心配には及びません」


 そうか。大公爵は、魂の消費で地上に居られるのね。


「双子は特に地上にいるための条件はないんだよね?」

「ないよー」

「悪魔だけだろ、縛りが面倒なの」


 そうだよね。


「じゃあ、問題ないなら、ロンの知る村に案内してもらおうか」

「それなのですが、ルビィ様。一つ提案があります」


 キョトリと、ロンを見上げる。

 白顎髭の老執事、めっちゃ似合うなぁ。


「村への賄賂に、魔物の肉を与えるのはどうでしょう? 私めが知る村や街は、どこも食料不足。口止めを兼ねて、食料となる魔物の肉を渡せば、追手が尋ねてきても知らぬ存ぜぬを貫いてくれることでしょう。それに、当分匿ってもらえるはずです」

「ああ、それもそうだね。そうなると、どこで調達しようか」

「ダロンテから聞いたところ、ルビィ様が冒険者として活躍した場所で手頃な場所がありました」

「手配がスムーズ! 有能執事だね!」


 多分執事の仕事じゃないけど。


「ありがとうございます。今後も精進いたします」


 誇らしげに胸を張った老執事。

 これで新人だぜ?

 なんか、ガビーンと大公爵がショック受けていた。


「双子も手伝ってくれる? 血抜きだけでいいから」

「え? オレらほどの高位の吸血鬼相手を血抜き要員に連れていく気?」

「働かないなら、名をテキトーにつけるわよ」

「それって手伝えば愛を込めた名をくれるってこと!? やるやるー!」


 飛び跳ねて立ち上がる双子吸血鬼。そんなに名前が欲しいのか。

 そこで焦りを見せるのは、顔色悪くした大公爵だ。


「ルビィ様、ノルマを教えてください。倍は、いえ十倍は仕留めてきます!」


 必死か。


「大公爵も、働くでしょ。ちゃんと考えるから」

「ルビィ様の初めての名づけの名誉をください」


 うるうるするな。


「そうだ、一応希望聞きたいんだけど。名づけの」と三人を見やる。

「希望って? 何それ」な元ディス。


「ほら。前の名前に寄せろだとか、長い方がいいとか。名づけは慎重にしないと」


 あえて大公爵を見ないで言っておく。


「えー? 愛がこもってればいいよ、別に」

「うん、ルビィの愛があればいいよ」


 うん。参考にもならない。


「ルビィ様が考えて、授けていただける名であれば、どんな短い響きであろうとも甘美でしょうし、長い響きだとしたら、この上ない喜び。一から考えてくれるのなら、それはなんと表現すべき幸福でしょうか」


 美形大公爵がキラキラしながら、何か言葉を並べ立てるけど、つまりは丸投げだな、これ。まぁいいや。

 ロンの提案通り、先ずは賄賂用の魔物の肉を集めるために『転移』した。

 リスタは、瘴気の浄化のための道具を集めておくと、一度別行動。

 レベルの高い魔物一同なので、地上の魔物なんて敵ではなく、家畜狩り同然。


「作業ゲーですね」

「そうだね」


 なんて、大公爵と頷き合う。


「ねぇ、マジでここって手強い魔物がいるとこ? 別にいなくね?」

「どこにいんの?」


 双子吸血鬼が文句を言う場所は、ジェラルス王国の東で最も強い魔物が生息する『魔境』と認定されている山だった。

 『魔境』とは他に比べて、魔界と繋がりやすく、魔物が増える傾向にあるそうで、腕に覚えがある冒険者も命の危険にさらされる場所だ。

 前にダロンテと他の冒険者パーティーと行ったけど、ダロンテに泣きべそかかれたくらいには、普通にハードルは高いエリアと言える。

 崖の下は、龍のような大蛇の魔物がまぐわっていたりするし、毒霧が漂っているし、植物は薬草も豊富だが、毒草も毒キノコもわんさか。大型の魔物の穴ぐらも多く、洞窟の奥底には武器を振るうハイオークやら、大熊な魔物だって出てくる。

 今回、出てきたのは、その大熊の魔物だったので、サクッと仕留めて、双子吸血鬼が血抜きをして、ロンと大公爵が捌いて『収納』してくれている。


 ずぼっと肉体から血液を、傷口から丸ごと吸い出したあと、それをカプセル錠剤並みに凝縮して『収納』する双子吸血鬼。


「血のストックはいっぱいあるの?」と、素朴な疑問をかけてみた。


「うん、いーぱいある」


 キョトンとしたけれど、興味を抱いたことをよく思ったのか、ご機嫌に答える元ディス。


「多い方が有利だしね。持久戦になれば、こっちのもん」と、元ジェスが言った。


「具体的にバトルとなったら、どれくらい持つストックがあるの?」


 死活問題だから流石に答えないかな、と思いつつ、気になって問う。


「「数年単位で持つ」」


 キリッと答える双子吸血鬼。

「ストック多いな」と、ツッコむ。


【契約精霊リスタヴィンスが転移してきます】


「あ、リスタが来る」


 精霊は、契約者の元に一直線で『転移』してこれるらしい。


「ルビィ。こちらの準備は終えた。肉はもういいか?」


 白い召喚陣の中から姿を現す麗しい御仁。


「うん、いいかな。ねぇねぇ、リスタ。ここでは畑って育つ?」

「ん? 種類にもよるが……まぁ土は悪くない。ただ食い荒らされるのがオチだろ」

「ルビィの植物作りへの執着なんなの?」

「食? 食の執着から来てる?」


 双子吸血鬼に呆れ顔されているのだが。


「いや、ただあの廃墟の街を緑に染めたかっただけだよ。始まりは」


「「緑」」と、何故か双子吸血鬼は、片割れの緑色のメッシュに目を向けた。


「でも考えれば、魔界に野菜ってないも同然じゃん? 飢えた魔物の子に、お肉だけじゃなくてお野菜も食べさせたいな」

「おお……! なんて思いやりに満ちたお方でしょう! 子ども達が喜びます!」


 感涙なロン。


「「誰一人として魔物の子どもに会ってないのに」」


 双子がツッコミを入れるように、まだ会ってすらいないので、私はただただ食べさせたいだけなのである。

 思いやりとかじゃなくて、貧相であろう子ども達の口にお野菜をぶっ込みたいだけ。


「お前はやたら面倒見がいいからな」

「そう?」

「そうだろ。妖精には手土産を欠かさないし、聖獣に肉を獲ってやって与えたことだってあるだろ」


 やれやれと肩を竦めるリスタが零すエピソードを聞いて「「ルビィ、餌付け趣味があるんだな。オレらに血を頂戴」」と言ってくる双子に「血のストックは十分でしょ」と切り返しておく。

 ふと、大公爵が静かだと思って見てみれば「ご褒美はいつでも受け取れます!」と涎を垂らしそうな緩んだ顔で胸に手を当てて待ち構えていた。

 何をもらえると思っているんだろうか。聞かないけど。


「植物が育たない魔界は、やはり肉料理しか存在しない?」


 魔界の料理知らないんだけど。


「そもそも料理って概念があまりないですね。岩塩はあるし、スパイスになる角もあって、味付けはレパートリーがありますが、やはり焼いて食べる肉が主流です。飢えていればなおのこと、生肉を食らうだけ」


 大公爵が教えてくれた。

 スパイスになる角って何。雷属性の魔物の角がピリピリするとか? ファンタジー。


「私めが案内する村が大半そうですね。魔獣の肉の味を誤魔化すために焼くことが定石。中には何とか家畜として肥やしている魔獣もいます」と教えてくれたのが、ロンだった。


「魔獣って家畜になるの?」

「ええ。野性よりは味はマシになります。しかし、それはリスクが高いのです。他の魔物や魔獣を引き付けることになります故。その村や街に、守護出来る強者がいなければ、壊滅するだけですので」

「なるほど……」


 世知辛い。魔界は、ハードだ。


「じゃあ、料理器具は?」

「フライパンや鍋ぐらいでしょうね。料理するおつもりで?」

「なー、ルビィの料理の腕前は気になるけど、さっさと行こうよ」

「貧相な村に、ゴー」


 双子吸血鬼が急かすので、地上でも植物を育てる話は、保留することにした。



 


逆ハーがわいわいしているから、ジャンルを『恋愛』にするか、いや、やっぱり『ファンタジー』のままだろ……と悩む。

『ファンタジー』のままにしておきましょうか。


2024/01/17

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