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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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29/57

♰29 『降伏』と『逃亡』と『勝利』

   ●♰●♰●



 そこで千年狼が、紅茶とクッキーを並べてくれた。


「んー! 私が好きな領地名産のクッキーだ! ありがとう、狼さん」

「喜んでいただけて何よりです」


 ホッホッと笑う千年狼さん。

 私が名産にした砂糖で作ったクッキーである。うまうま。


「んで、この狼さんは、『氷結の森』という場所でマンモス型の魔物と戦っているところを割って入って、私が獲物を横取りしたの。怪我してたから、狼さんにはポーションはあげたけど」

「マンモス型の魔物って、無駄に長寿なバリバリな肉食じゃん」

「絶対オレの首切った剣、そいつの象牙で作ったっしょ」


 バレたか。肯定も否定もしないけどね。


「肉が美味しかった」

「ホッホッ、美味でしたな」

「え? マジで? マンモスって美味いの?」

「知らなかったー」

「お前達は、氷弱いじゃん。そもそも肉食べるの?」

「クッキー食べる悪魔が言う?」

「血が滴るヤツ、好き」


 相性悪い魔物の肉だから食べなかったのだろう。

 というか、一応食べるのか、肉。吸血鬼は。

 私に出されたクッキーだって、食べてるし。狼さんが射殺さんばかりの目で見ているよ。

 一応、大公爵にも食べるかと差し出すと「餌付け、喜んで」と受け取った。

 餌付けとは、人聞き悪い。


「狼さんは、私が魔王の怒りを買ってると知ってて手を貸してくれるの?」と話を戻す。


「改めて、自己紹介させていただきましょう。私めは『千年狼』へと進化した『白狼族』の長老でございます。かつての友と名付け合った名があり、『ロン』と申します」


【千年狼 男】 【ロン】 【白狼族 長老】


 真っ白な髪と、整えられた長い白い髭。高身長でスッと伸びた背筋の老執事。


「長老……群れの中で大層な存在じゃない?」

「ええ、老いぼれの知恵を授け、鍛え上げる指導者でございます。先日の魔物討伐には苦戦を強いられ、若者を庇った負傷にて、我が身も滅びの時かと思ったのですが、以前見かけたあなた様が助けに入ってくださりました」

「いや、だから、私も獲物として仕留めたかっただけだよ? なんなら、ロンさん達も仕留めようかと考えたよ?」


 そんな善行をしたわけじゃないと言うも、千年狼のロンはゆるりと首を横に振る。


「私めは傷付いたあなたを救わなかったというのに。そうはなさらず、結果、我々は救われました。私めは死を覚悟しました。(つがい)に先立たれ、死を待つだけの老いぼれの命が拾われたのです」


 番、と口にした時、悲しげに目を伏せた。

 狼は、番を一途に愛するんだっけ。


「何か恩返しが出来れば、と追ってきた次第。聞けば、魔王と敵対状態。この老いぼれ、全身全霊でお役に立てるように尽くしましょう」


 人手がいるでしょう? と目元を緩めて笑いかけるロンさん。朗らかだ。


「役に立たねーよ」

「盾にもなんねー」


 水を差す双子吸血鬼に、その眼差しは鋭くなって見下す。


「この害虫は役に立ちましょうか?」


 些か疑問だと軽蔑を込めて吐き捨てる。

 この双子吸血鬼は、誰とも険悪になりたいのかよ。


「おい、双子。お前達は自分の立場わかってんの? これ以上足引っ張るなら、首ちょんぎって、顔だけ女王に送りつけてやるわよ」


 こめかみを揉みながら言ってやると、大公爵が乗り気に目を輝かせた。

 まとまんねー。


「えー、戦力失うだけで、デメリット、デカくない?」

「何がデメリットだ。追い込まれて死にかけた挙句、名を捨てて。まさか、巻き添え狙って魔王を挑発でもしたか?」


 リスタが、厳しく指摘。

 巻き添え狙いは、酷い。


「んなわけねーじゃん。マジであの女王の”わらわの”発言がムカついた」

「どうせなら、ルビィに”私の”って言われたい」

「それいいな」


 勝手言うな。


「「言って♡」」

「言わん」


 ズバッと切って捨てる。どうせめげない。


「頼むよ、ルビィ。名前頂戴♡ ルビィにつくからさ」


 向かいのソファーに並んだ瓜二つの美形吸血鬼は、あざとく両手で頬杖をついて、上目遣い。さらには『魅了』をかけてくるので、瞬時に自動『無効化』をする。


「見事な裏切りを見たのに、そう簡単に名前をやるとでも?」


 背凭れに腕を置いて、足を組んだ。


「主従契約の名づけした方が、いいじゃん。さっきみたいには、こっちからは破棄出来ないよ」

「命令違反も出来ないしねー。オレらに愛を込めた名前で首輪つけて♡」

「気色悪いな。『魅了』かけてくんなよ」

「「辛辣」」


 ゲラゲラとする双子吸血鬼。


「でもぶっちゃけ必要だろ? オレらがさ」

「だいたい、ルビィの選択ってもう『降伏』と『逃亡』と『勝利』だろ?」


 ディスが笑うと、そのあとジェスが指を三本、折って見せた。


「『()()』なんてしても、許されねーだろーな。第十三王国のベルゼブブ王は、城を吹っ飛ばされて面目丸潰れ。公開処刑でもしないと体面保てねーじゃん」

「その点は第三王国のリリスアンヌ女王はまだ愛玩にしてくれるチャンスあり? でもベルゼブブ王が怒ってるなら、先ず無理だねー。敵には回したくないっしょ、第十三王国はただでさえ脳筋だし、さっき兵も削ったしな。やっぱり公開処刑一直線だ」


「『()()』だと、一体どこまで逃げられるのやら。ルビィは悪魔じゃん? いずれは魔界に戻る羽目になるだろ。ベルゼブブ王が攻める口実になるから、他の王国も歓迎するわけないしな」

「ルビィ、あとどれぐらい地上に居られるわけー? そんでどれぐらい魔界に詳しいの? 逃げ切れる?」


「『()()』」

「これおすすめ」

「ルビィが王様になればいいじゃん」

「王冠二つ、ぶんどっちゃえ」


 吸血鬼なのに、悪魔みたいな囁きをしてくる双子。


 確かに、その三択だ。今後の方針の選択は。


 降伏して死ぬか。逃げ切るか。殺される前に殺すか。



「「ルビィ、オレらの王様になって」」



 目を蠱惑に細めて、双子吸血鬼は甘くねだる。

 綺麗な赤い瞳だと思った。瞳孔がキャットアイで尖っている明るい血の色。



 【()()()()()()()()()】という文字のあと【無効化しました】の文字。


 その一瞬、何かを植え付けらえたような。惹かれる熱を感じた。



 これが『魅了』か。

 『魅了』が専売特許の吸血鬼らしく、とんでもない洗脳だ。


 ……よくも『魅了』をかけたな。

 不快だと、静かに双子を睨み下ろす。


【吸血鬼 男】 【ノーネーム(ディス)】【ノーネーム(ジェス)】


 金髪に緑色のメッシュの魅惑な美形が、瓜二つ。

 肩をわざと出すデザインのトップコートを着ている美丈夫。

 その二人を、睨んだ。


 私の反応に目を見開いた双子は、興奮で笑みを深めた。



「「……ゾクゾクするっ! ルビィ、最高!!」」



 大公爵のマゾ仲間かな……。

 大公爵を見てみれば、虫けらを見下す目だった。

 同族嫌悪かな……。


 逆を見てみれば、リスタも汚物を見るような嫌悪感丸出しの表情。


「このイカレた吸血鬼の言う通りというのは癪だが、方針は決めるにせよ、協力者はいる方がいいだろう」


 ふぅー、と一息ついて、リスタは私に顔を向けた。


「そして、こっちの悪魔は?」と、顎で大公爵を指し示して問う。


「第十三王国の大公爵のポジションにいるけど、第十三王の配下ではないって。名前も捨てて、名づけ所望」

「私はルビィ様の手足であり下僕であり奴隷である。私が一番にルビィ様の味方となった。つまり、私がルビィ様の一番だ!」


 ドーンと胸を張る大公爵に「なんの一番だよ」とツッコミ。

 下僕と奴隷の違いって何。いや、同意語なの?


【悪魔 男】 【ノーネーム(水銀)】 【大公爵】


 短い水色に艶めく白銀髪。青い青い冷めた瞳。

 冷え切った美貌の古風な貴公子。

 特殊な青い炎を出すし、変態的な熱意を持っている変態だ。


「この大公爵には、植物の件も込みで、どこかいい移住先を調べてもらっていたんだけど……。これでめでたく追われる身になった大公爵に一応聞くけど、どこかにいい場所ある?」

「……これでは他国に足を踏み入れても見つかるなり、追い出されるでしょう。余計な真似をしてくれたものです。私がルビィ様の捜索をしていることにしていたのに、これで時間稼ぎが台無しになりました」


 悔しそうに顔を歪ませて、大公爵はギッと双子吸血鬼を睨みつける。


「まぁすぎたことはいいじゃん」

「現実問題と向き合おうぜ」


 反省の色を見せない双子吸血鬼、ムカつく。

 お前らのせいだっつーの。



 


ちょっとの好意があるだけで『魅了』にかかるけど、『無効化』が早い。


まとまらぬ険悪逆ハーです。

面白かったら、いいね、よろしくお願いいたします!


2024/01/15

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