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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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21/57

♰21 二度目の『悪魔召喚』と王女。

2024/01/01

新年あけましておめでとうございます!

今年も作品ともどもよろしくお願いいたします!

   ●♰●♰●




 その後も、リスタの元へまた足を運び、植物図鑑を持参して、プレゼンをする。


「これは?」

「無理だろ」

「くっ。でも庭師さんに聞いたら、いい具合に壁に張り付いてくれるツタだって」

「それだけではなく、全ての植物が魔界に適合しないと言う話だ」

「そう悲観するなよ、リスタ」

「哀れみの眼差しを向けて、茶番はやめろ」


 あんな植物がいい、こんな植物がいいと語り、どうすればそれらが魔界で育つかを話したが結論は出ない。

 『祝福(ギフト)』さんも案を出してくれるが、なんとも解決案に直結はしなかった。


 精霊王のリスタヴィンスは、存在だけは知られているが所在を把握されていないため、この大森林にいるとは人間達にも知られていない。

 『王』と名がつくほどに、精霊としては強者であり、その力は絶大。しかも植物を司る大精霊ときた。

 それでもすぐには案が出てこないのは、魔界がそれほど植物を育てるに適さないからだ。


 大木の枝から吊るした揺りかごのような蔦の椅子に座っているリスタに、私ももさもさの蔦のクッションに腰を掛けて、図鑑を広げて話していた。肩には妖精が座り、横にはもふもふの聖獣の子ども達が寄り添う。


「聖獣が悪魔に手なづけられておって」と、顎の下やお腹をこしょこしょされている聖獣を、呆れた目で見ていた。

 若干、羨ましそうなのは気のせいかな。



 すると、ある日のこと。



【『悪魔召喚』が可能です。応えますか?】


「おっと、ビックリした」


 いきなりの文に、ビクッと肩を震わせてしまった。


「どうした?」

「うん、初めて『悪魔召喚』されるみたい」

「は? 初めて?」


 素っ頓狂な声を出されてしまう。


「うん。半年前だったかな。その時に『悪魔召喚』時に生まれた悪魔なんだから、生まれて以来の初めてのお呼びだね!」

「は? おまっ……! それでよく地上に居られるな?」


 信じられないと、キョロキョロと上から下まで見られた。


「その生まれた時の人間との『取り引き』内容の都合で、まだ地上に居られるの。あ、行ってくるねー」

「お、おおう……」


 挙動不審だね、リスタ。


 私は、立ち上がって『悪魔召喚』に応えた。




   ●♰●♰●




 『悪魔召喚』の魔法陣、再び。

 召喚主は、ピンクブロンドの可憐な美少女だった。

 しかし、その場にはそぐわない。辺り一面、血の海。騎士の格好が殺し合った形で倒れている古びた館の玄関ホール。悲惨な館だ。

 そこで少女は、カタカタと青い顔で震えていたが、気丈を保とう表情を引き締めた。


「悪魔様! どうか! 我が願いを叶えてください! 国を! 我が国をお救いください!」


 ……可憐な少女に、国を救えと言われてしまったわ。

 よく見れば、線の細いティアラが頭の上についていた。


「お姫様?」と、しゃがんで覗き込む。

 見たところ、返り血は浴びているが、彼女自身に怪我はないな。話は聞けそう。


「は、はい。アトラ王国の王女、スティファと申します」

「ここはぁー、アトラ王国じゃないね?」


 現在地は、キンバリー伯爵領があるジェラルス王国内だ。

 『祝福(ギフト)』さんが表記するので、間違いない。


「はいっ……」と悔しそうに唇を噛むと王女は。


「アトラ王国の反乱軍の仕業で、公爵家に嫁ぐわたくしを殺めようとしたのです。嫁ぎ先から派遣された騎士の機転で、まだ免れてはおりますがっ……このままでは、アトラ王国の王女はこのジェラルス王国の不手際で死んだこととなってしまい、この王国と戦争にっ! アトラ王国に勝機はありません! 国が滅びます! どうか! どうかお助けください!」


 と、頭を下げた。


 要約すると、隣国に嫁ぐ王女様は、自国の反乱軍の企みに嵌り、暗殺されかけた。

 成功すれば、遅かれ早かれ、これを火種にされて戦争となるが、始めから軍事力の差は明白だから滅びる、と。

 現状、危機は脱していない。


「ゲホッ……対価なら、私の魂をやるっ。王女はだめだ。私がっ、私が承諾するから、私の魂を対価にしろっ」


 唯一の生き残りの騎士が口を開いた。

 精悍な顔立ちの若い男性だ。

 どうやら、賊に扮した敵を贄にして、準備自体は彼が行ったようだ。

 周囲に転がる20ほどいる虫の息の者や死体を贄にしたとは。名持ちの私を召喚出来たわけだ。


 そして、王女様に召喚させたが、対価は自分の魂。

 瀕死の自分では『悪魔召喚』の呪文を唱えきれないとでも思ったのか。途中で息絶えれば、姫も国も救えじまいだもんね。

 ちなみに、承諾なしには、魂って手に入れらないから、そう言われると王女の魂は取れなくなるわけだ。


「王女様、その歳で結婚なんて、政略結婚?」


 この世界観だとすると、政略結婚としては、大きく見積もっても、せいぜい18歳の王女を見てから、周囲に意識を向ける。

 『索敵』する限り、敵はいないな。


「え、い、いえ……あの方とは、幼馴染で……想い合っています」


 青ざめて震えた王女様の顔に赤みがさした。

 あらぁーそうなのー。恋愛婚なのかなー?

 微笑ましい、と頭を撫でたかったけど、まだ『取り引き』は成立していないので、魔法陣より外には手が出せなかった。


「んー? つまりはぁ……賊に扮した反乱軍を根絶やしにすればいいの?」

「これほどの供物で呼び寄せた悪魔なら、可能なはずだ!」

「例えばの話だけど。騎士さんの魂を対価にして、反乱軍を根絶やしにしたとする。そのあとは?」


「え?」と、目を見開く騎士さんに続ける。


「王女様は、どうするの? 他に、確実に味方だと信用出来る人が近くにいるの? また王女様に手を出す危険性はないと言い切れるの? 騎士さんの役目はここで命を捨てるのではなく、公爵家に無事届けることでしょ?」


 この場で敵を排除したところで、万事解決はしないだろう。

 追い詰められて視野が狭くなっていた騎士さんは、オロオロと頷く。

 彼の任務は、王女を無事送り届けることだ。


「で、では……スティファ王女様を、公爵邸へ」

「せっかく悪魔を呼び出したんだしぃ。スティファ王女の故郷の反乱軍なんてこの際、削いじゃった方がよくない? 王女様も他国に嫁ぐなら、祖国の不安要素は取り除きたいでしょ? 違う?」


 二人揃って、ポカンとした顔をする。


「つまり、だ。王女様の願いは『この件に関わっている反乱軍と協力者の根絶やしに手を貸すこと』であり、その対価は……『嫁いだ公爵家でご馳走を食べさせること』でどうだろう。高級料理、美味しそうだ。期間はその願いに釣り合う期間で。流石に規模はわからないから『反乱軍の壊滅』は大きな願いだから、これが妥当でしょ。どう?」


 別にキンバリー伯爵家から提供される料理に不満はないけど、グレードアップの料理だって食べたいじゃない? たまには高級カニを食べたい、みたいな。


「た、食べ物……? そ、そんな、対価で……いいのですか? 魂じゃあ……」

「いや、別にいいんだよ、こういう『取り引き』でも」


 ケラりと言い退ける。

 ジョンと同じ『取り引き』で、似た対価をもらう。対価を支払う間、私は地上に居られるという寸法。


「で、では、その『取り引き』をお願い致します!」

「『取り引き』成立ね」


 私の視界でも『取り引き』内容の文章が並び、【成立】の文字が表記された。

 魔法陣から出られた私は、ポーションを摘まんで、騎士さんの目の前でプラプラと揺らして見せる。


「じゃあ、騎士さんはどうする? このポーションが欲しいなら、何かを差し出す気はあるのかな?」

「っ! 傷が治れば、王女を無事に送り届けられる! 送り届けたのち、今度こそ魂をやる!」


 なんで魂を押し売りするかな。要らんよぉ。


「でも、ポーションってどこでも手に入るからね。ポーションの対価に『悪魔を召喚することにした経緯』を話してもらおうかな」

「え……? 話す……だけ?」

「うん。なんで騎士さんが『悪魔召喚』を選んで、王女にやらせたのか。そもそもなんで知っていたのか。聞きたくて」


 またもやポカンとされたが、それだけである。


「私は生まれたての悪魔だしね、こうして呼ばれるのは誕生時以来なんだ。私が呼ばれる条件とかのヒントがあれば知っておきたいから、私には価値ある情報だよ。どうする?」

「それで……傷が癒えるなら」

「ん。『取り引き』成立だ」


 握手で『取り引き』成立。ポンと、渡しておいた。


「これほどの供物を捧げたのに……生まれたて、なのか? 『悪魔召喚』を選んだのは、たまたま素材があったからだ。この館の地下に隠れたら使えそうだったので……。王女が召喚主になったのは、願いの質で召喚される悪魔が呼ばれると言う説を耳にしたことがあったからだ」

「へぇー」


 『悪魔召喚』の材料が揃っているとか、変な館だな。まぁ、悪魔オタクな変人もいるし、世の中いろんな奴がいるということで。


 ちょうど『索敵』にも引っかかったので、狩りに行った。

 捜索していたのか、数名の騎士を見つけ出す。館に転がる反乱軍の人間の特徴は把握。黒づくめだし、ここには他に人もいない。そのルートへ、どうやら追い込まれたのだろう。

 だから、そのうち、館に逃げ込んだ二人の元に、来る可能性もある。


「こんにちは」


 出会い頭に『魅了』をかけた。もうちょっとやそっとでは、かかった人間からは解けたりしない。

 左右で仲間が魔法で引き裂かれても、ポケーと突っ立っているくらいだ。


「そう言えば、人殺しも最初の『取り引き』以来ね」


 私は、ケロッと呟く。




   ○♰○♰○




 アトラ王国の反乱軍。王女の暗殺を目論んだ彼らの集合場。古びた狩人小屋の前で集っていた。

 目印の焚火が目立つほどに夜が暮れたのに、王女暗殺完遂の報告が来ないまま、仲間の大半が戻らない。

 苛立ちを込めて、一人で枝を焚火に放り込んだ。

 燃え盛る焚火の向こうに、少女が佇んていることに気付いて、驚く。


 夜の闇に溶け込みそうな黒のローブをまとう美少女。

 顔立ちは可憐な美少女のものだが、烈火な赤い髪と金色に艶めく赤い瞳は、焚火の明かりと同じく目に焼き付く。

 蠱惑に目を細めて、微笑む魅惑の美少女に、疑問を覚えるより先に、見惚れる一同。


 魅了されれば、最後。

 捕らわれると、気付くことすらない。


 一同の目は桃色の光りを宿し、ポーと呆けた。


「これで、この場にいるのは全員かしら?」


 コクリと、全員が頷く。


「じゃあ、リーダー格は?」

「オレです」

「そう。じゃあ、あなた以外は来て」


 くいっと人差し指を曲げて招いたあと、魅惑の美少女は慈悲深く微笑んだ。


「あなた達は殺し合ってちょうだい?」


 甘えた声で、悪魔は囁く。


 魅惑の悪魔に捕らわれたまま、殺し合い、息絶えた。




   ●♰●♰●




 暗殺主犯格が知っていることを洗いざらい、紙に自白を書いてもらい、使えそうな情報もいただいたあと、ザックリと心臓を本人が持っていた短剣を突き刺して息の根を止めた。


 以前は、衝撃や自害の命令でも解けていた『魅了』も、殺し合いの命令を下しても骨抜き状態になった連中は逆らうことなく、この場を血の海にした。最後の一人も、短剣を投げて、楽にしてやる。

 これで暗殺者は、一掃完了だ。


 その後、召喚主の元へ『転移』した。

 移動準備をしていた二人は、私の登場にびくりと身構えたが、私だと理解すると安堵する。


「終わったよー。これ、自国で使えそうな書類も持ってきたから、実家に送るなりして使えるだけ使えば?」


 仕入れた情報を、スティファ王女に手渡した。

 繋がりある貴族の羅列である。大方、この貴族は戦後に生き延びさせるという約束でもしているか、秘かに援助でもしているか。使い様によっては、揺さぶりも出来るだろうし、叩いて埃を出す相手と特定も出来る。

 今出来ることは、これくらいだろう。

 私が殺して回らなくてもいいはず。


 スティファ王女と騎士さんは、それを読んで、ただただ驚いた顔をした。


「な、何から何まで……ありがと、ございます」

「美味しい物、食べさせてね」


【観察眼:対価がそれで本当にいいのか!? という顔】


 二人揃って、疑いの目。

 …………確かに、国を救うにはどれくらいの美味しい食べ物が必要なんだろうね。

 でも他に要らないしねぇ。悪魔に対価を支払うからって、国から出させるわけにはいかないし。

 他に欲しいの、思いつかないもん。これが妥当なのである。


「誠にありがとうございます、悪魔殿」


 騎士さんは、胸に手を当てて頭を深々と下げた。


「あ、そうだった。私の名前は、ルビィ」

「「……!!」」


【観察眼:名持ちの魔物だったのか! という顔】


 言い忘れてたか。


「だから王女様、何か不測の事態に陥ったら『お出でください、ルビィ様♡』って呼んでね」

「は、はいっ。不測の事態……」

「魔の手が迫らないとは限らないからね。暗殺者の残りが来たら、呼んでくれれば仕留めるよ。『取り引き』は、そこまで含まれているからね。でも、そこは騎士さんが頑張るでしょ?」


 手を翳して、スティファ王女に『清浄』をかけて、綺麗にしておいた。

 それから、血濡れの騎士さんにも、同じく。


「はっ。この件が片付くまで、しっかりお守りいたします。ルビィ殿、誠に感謝しております。自分も名乗り遅れましたが、この度、公爵様に王女様の護衛の任を託された騎士、ライハルト・ディソルです」


 綺麗になった騎士さんは、頭を深く下げた。


【人間 男】 【ライハルト・ディソル】 【英雄 騎士】


「英雄?」と、思わずその文字を読み上げてしまった。


「ご存知でしたか?」


 いや知らんが……。有名なのかな?


「ディソル卿は、わたくしの婚姻相手のサフィーロ・ブルーライト様が、騎士団を率いて手柄を立てた去年のスタンピードの(いくさ)でも活躍をして、英雄と名高く、爵位も授かったのです」

「へぇ。それはすごいね。王女様の結婚相手も」


 その英雄騎士に任せることが出来るとは。


「その手柄で、公爵様は爵位を継がれて、めでたく結婚を約束していた王女様を迎え入れることになったのです」

「っ……」


 ポッと頬を絡める美少女は年相応の乙女に見えた。

 あらあらまぁー。

 そんな王女を暗殺なんて、なんとも無粋な連中だこと。


「若きブルーライト公爵様にも、しっかり守るように伝えてね」


 ひらひらーと、手を振って、反乱軍の者であろう、その辺で捕まえた馬に跨って、二人は分断されたであろう残りの一行との合流へ向かった。元々、王女様だけが隙を突かれてさらわれて、ライハルトが先陣切って追って取り返し、撒こうとしてこうなったわけだ。


 念のため、『姿暗まし』と『飛翔』を使って、合流までを見守ったが、無事仲間と合流した。


 もう大丈夫だ。『転移』で、キンバリー伯爵邸へ戻る。

 すでに、深夜だ。

 『清浄』で綺麗さっぱりとしてから、客室のベッドにダイブして、眠りに落ちた。




 

ルビィは親切な悪魔ですが、情け容赦ない時もある。

そんな『赤き大恩人』です。


また毎日更新出来るように書き溜め頑張りますね!

応援に、いいねくださいませ!

今年もよろしくお願いいたします!


2024/01/01

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