♰17 『魅了』されているようで正気。
●♰●♰●
なんで変なのに好かれたかな。
ダロンテにも誑かしてるとか言われてけれども……そんなつもり全然ないのに。
「先ず訊くけど……なんでここにいるの? 第十三王国の追手はどうした?」
こまかみを揉んで、色々厄介そうなのは置いといて、確認をしておく。
「私が興味深い悪魔だから追跡しておくと伝えておきました」
キラリ、笑顔で言い切る大公爵。
「実質、私の追手はいないと?」
「まぁ、あの王の虫の居所にもよりますが、当分は心配はないと思いますよ」
王の虫の居所ねぇ?
「短気そうだけど」
追手の追加しそう。
「否定は出来ませんね。しかし、お任せを。はぐらかして見せましょう」
意気揚々と王様相手にはぐらかすと宣言するのもどうかと思うけど。
「どうしたいのですか? 王の首を取るにしても、逃げ切るために力をつけるにしても、時間稼ぎは必要でしょう?」
物騒だな。首を取るとか。まぁ、その通りではある。
「他国に逃げ込める場所でもある? 私、謁見の間を吹っ飛ばしたけど」
大公爵の笑みが固まった。目が泳ぐ。
とんでもない喧嘩をふっかけた私をそう簡単に許すはずない。
うん。自業自得とはいえ、私がお城を大爆破したからね。泥塗られた短気な野蛮王が許す想像がつかぬ。
「でも、その事件は知られてはいません。そのまま隠し通せば、ポッと出の名持ちの新人悪魔に吹き飛ばされた面目丸潰れも知られることはないのだから」
ニッコニコな大公爵。……それな。
「このまま、面目を潰されないようにとことを荒げず、誘導してみせます」
ドヤ顔をする大公爵は、自信がおありらしい。
「悪魔の王の一人を欺けるってこと?」
「……僭越ながら、悪魔らしい小賢しさや悪知恵は足りません。元々『取り引き』を煩わしいと考える傾向にある悪魔が王の座にふんぞり返るので。中でも第十三王であるベルゼブブは、脳筋な野獣です」
「え? ベルゼブブって名前なの? 前世だと……蝿の王の悪魔の名前じゃなかった?」
「ええ。蝿のように煩わしいですが、戦闘時は筋肉ダルマになる脳筋です」
筋肉ダルマの脳筋、蝿の王ベルゼブブ。想像図がシュールだ。
「物凄くしつこそうな脳筋蝿に思えてきた……」
行き先が不安だ。
「他国に移るなら、どの国が無難?」
「……」
「……何故だんまり」
「名前をください」
「……」
「何故だんまり」
被虐性淫乱症患者にくれてやる名前がないんだよ……。主従関係も、結びとうないわ。
「保留で」
その後、有耶無耶にしとこ。
「じゃあ私は他国に行く選択を試すから」
他国に一度足を踏み入れれば【魔界へ 帰還】の際に選択肢が増える。
もう狙われる『第十三王国』に来ないで済むのだ。
「そちらは『第三王国』ですね。面食いの魔族の女王が君臨してます。あなたほど美しいとなると囚われるか、嫉妬で喧嘩を売られかねないかと」
向かおうとした先は、面食い女王が君臨しているらしい。
魔族とは、悪魔よりも格上の魔物で、現王の十三人の王の半分は魔族だという。
めんどくさそうだから、じゃあ、真逆に行こうと方向転換。
「そちらは『第十一王国』です。彼の場合は、悪どい悪魔王です。利用されたくなければ行かない方が賢明かと」
……悪魔に悪どいと言われるなんて、どんだけ悪どいんだ。
「逆に、どの国が無難なの?」
「名前をつけていただけるなら、対価として教えしましょう」
「は? 名前つけることが、住みやすい国を教えるだけの対価で済むの? そんな薄っぺらい名前が欲しいのか?」
「申し訳ありませんでした私が間違っておりました! 対価に住みやすい状況から環境まで手配いたしますので、名前をください! 授けてくださいませ!」
天秤が釣り合ってないだろ、と低めの声を出してしまったら、土下座でペコペコ謝られて、改めて頼み込まれた。
「じゃあ、ただ名前をつけるだけで終わりでい?」
「え? お仕えさせてください、我が王よ。私はあなたの僕。奴隷です! こき使ってください!!」
絶望した顔すんな。根本的にマゾ。頭痛い。
「アンタはなんなの? 元からその、性格なの? 尽くしたいなら、相手はごまんといるでしょ」
『取り引き』を生業にする悪魔だしね。
「何を言いますか! これほどまでに心を揺さぶったのは、あなた様だけです! なんですか、その美しさは! 可憐な美しい美少女でありながら、苛烈な強さを秘めた眼差しで射抜く宝玉のような存在! 小さな火が儚げに揺らめいて魅了するくせに、目に焼きつく烈火の如し!! いえ! あなた様の美しさを解明するなど烏滸がましいですね! 魅了されながら、語るだけに止めます……」
恍惚と見つめてくる彼が一応『魅了』がかかっていないかを確認してしまった。
残念なことに、彼はこれでも正気だ。どうしよう。正気だ。
「先に、あなた様の尊きお名前をお聞きかせください」
物凄く教えたくない、この気持ちはなんだろう。
「じゃあ、好きな花は?」
「花……? ですか? …………あなた様に見合う美しい花なんて、この世にあるのでしょうか?」
「三択やる。バラ、ガーベラ、キク。選べ」
「では、赤いバラで。あなた様の御髪のような麗しい花びらの」
「ない」
キッパリと会話を進めたあと、道端に座り込んで、土を掘り起こした。砂漠のようにサラサラしている。躊躇してしまうが、『収納』から取り出したバラの花を植木から移し替えた。
「本物のバラ? 魔界で育てるおつもりですか?」
ちょこんと隣に座って覗き込む大公爵。
「うん。私はこの街を緑に満ちた感じにしたかったんだ……その気分だったんだ」
「ではそうしましょう!」
私の気分に付き合うんだ…………お前の忠誠ってやつは。
「しかし……かの昔、第一王国が地上から丸ごと街を移した際の植物は……瞬時に死んだとかなんとか…………」
「…………」
バラは、しおれた。先に言ってほしかったよね。
まぁ、最初から実験のつもりで持ってきたもんね。でも瞬時に死ぬとは可哀想すぎる。
「何が原因かな? 魔界の瘴気?」
「それもあるかと。それに地上の植物では軟弱すぎるのでしょうね。魔界生まれの植物を開発するべきでは?」
「他にいないの? 魔界で植物を開発した魔物」
「いたら実在してますよ」
ケラケラするな。
「魔界の魔物は、強者は力を誇示して弱者を使い、弱者は付き従い、労働をするだけですからね。根本的に、開発、改良、住処の改善や王国の発展など向かないのですよ。地上から街を丸ごと持ってくるところが、魔物らしい証でしょうね」
それが魔物の性だと?
「じゃあ植物を植える気でいる私は、まだ人間臭いってこと?」
遠回しに笑われているのかと思ったが、そうでもないみたいだ。
「いいえ。己の欲望のままに動くのもまた、魔物らしいですよ。あなた様の望みはなんでも叶えましょう」
立ち上がった大公爵は、胸に手を当てて屈むように覗き込んで微笑んだ。
「あなた様のお名前は?」
「…………ルビィ」
名乗るなり、つらつらと甘美な響きだと褒め称えて称賛を語り出したので、美顔にグーパンチを決めた私は悪くない。悪くないんだからな。
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