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『悪魔転生』のちに『赤き悪魔女帝』  作者: 三月べに


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16/57

♰16 大公爵はマゾな異世界転生仲間。

   ●♰●♰●



 また宿で一休みをした私は、武器屋巡りをした。

 即席でもらえる一番頑丈な剣を買わせてもらう。

 オーダーメイドで作ってやるよ、と口説かれたので。


「んー。わかった。死んだらお金使えないしねぇ」

「物騒だな……ちゃんと作るから生きて受け取ってくれよ?」


 めっちゃ心配された。

 わかったよ、おっちゃん。傑作を取りに来るから作ってくれや。


 こういう武器のオーダーメイドも、冒険者登録のプレートが役に立つ。

 相応しい武器の提供かどうかも判断出来るし、購入履歴が残るからぶっちゃけ武器登録されたようなもの。死亡したことも、問い合わせが出来るしね。

 まぁ、私が魔界で死んだら知ることは出来ないが。生きて帰るって。


 他にも何か役に立つ道具を物色しようとは過ったが、正直、その辺の店で買えるような道具が魔界で通用するはずもない。買うだけ無駄なのである。

 ここがRPGの最初の村エリアなら、あっちはラスボスの本拠地エリアだ。焼け石に水である。薬はゴミ同然だ。

 とはいえ、ポーションは傷を塞いでくれるので、ダロンテから強奪したもので一先ず足りるだろう。

 毒も麻痺も、耐性は高めに上げているから、私にその効果を与えたら、地上の薬が解毒に成功するとは限らないもの。試すだけ時間ロスだ。


 手持ちで買えるような護符の類もまた同じだろう。


 なので、戦闘服用にあつらえたハイウエストの短パンとニーソとふくらはぎ丈のブーツ、ハイネックのシャツと短い丈のジャケットを着こんだ。


 腰におニューの剣を携えて、宿をあとにしてから、人気ない森から【魔界へ 帰還】した。




【魔界 第十三王国】 【廃墟の街】



 グレードアップした『索敵』で感知系のトラップがないことを確認しつつ、『魔力感知』で敵がいないか探る。

 ものけの空の廃墟の街だ。


 ……おかしいな。魔獣一匹いない。

 しかも、前回と違ってトラップの一つも仕掛けられていない。


 それとも、巧みに隠蔽されている? いや、でも……ここまで隠蔽するのは、見破れる特技(スキル)を持っている者ぐらいだ。巧みな『隠蔽』特技(スキル)を持つ者がいるのか? それとも杞憂? 考えすぎ?


 『飛翔』で移動することを躊躇って、適当な王国へ歩き出す。


 すると『魔力感知』に一つの気配が入ってきた。

 しかも、知っている相手だ。真っすぐにこちらに来るから、見据えて待った。


【悪魔 男】 【ノーネーム(水銀)】 【大公爵】


 目の前に降り立ったのは、水色に艶めく銀髪の美丈夫だ。大公爵の階級に相応しい貴族の身なり。

 ジョンと比べれば、ひと昔の貴族という古風な印象を抱くデザインだ。


「再会を、お待ちしておりました」


 胸に手を当てて軽くお辞儀をする大公爵。


「今度の追手はアンタ? 懲りないね、アンタの王サマ」


 いきなり階級が上から2番目の悪魔を差し向けるとは……よほど謁見の間を吹っ飛ばしたことを根に持っているようだ。

 追い込まれれば、爆破もするっしょ。ざまぁー。


「いえ? アレは私の王などではありません」


 にこやかに笑う大公爵。

 私が首を傾げていれば、片膝をついた。



「あなたに我が王となってほしいです。お名前をお聞かせください」


「…………」



 イケメンに跪かれたけれど、うそんくさすぎて胡乱気な目で見てしまう。


「信用できない。王を裏切るのか? 裏切り者をどう信じろと? 私のことも裏切りそうじゃないか」

「厳密には、私はあの王の配下ではないのです。先日も何度目かの勧誘をされて呼び出されていただけで居合わせたのです。見惚れていて手助けをしそびれてしまいましたが、あなたの味方です」


 ものすごく胡乱気にジト目で見てしまうのは、どうしてだろうか。


「信用出来る要素をお答えしましょうか?」


 何さ。


「同(・)郷(・)だ(・)か(・)ら(・)『祝福(ギフト)』を持っていると知っていますよ」


 ――――『異世界転生の祝福(ギフト)』が過ったが、私は反応をしないようにした。代わりに首を傾げる。


「ああ、正(・)確(・)に(・)同(・)郷(・)というのは確信できませんが……『鑑定眼』から始まり、『観察眼』を持っていて『種族』まで『隠蔽』していらっしゃる」


 ハッ! コイツ、高度な『鑑定眼』を持っている!?


「そこまで特技(スキル)を使いこなす魔物が、ポッと出てくるのは、異世界転生者と推測が出来ます。違いますか? ちなみに、私もかつて、自分の記憶を対価に、自分で名持ちになったことがありますよ」


 小首を傾げてゆったりと問いかける大公爵。眉をひそめた。


 かつては名持ちだった?

 私と同じではあるが、彼が実体験したと言う証拠もない。誰かの話を聞いただけという可能性も捨てきれず、まだ疑いの目を向ける。


「名前を破棄したってこと? 可能なの?」

「ええ、可能ですよ。まぁ代償にレベルはガクリと下がるんですがね。それも『祝福(ギフト)』が教えてくれるのでは? 『祝福(ギフト)』に『成長ポイント』は使いませんでした?」


 ……うーん。どうやら事実のようだ。『観察眼』もようやく【事実】だと表記した。少し警戒を緩む。


「何故、名前を放棄した?」


【名前の破棄。

 積み上げた強さの半分以上は失うリスキーな行為。ですが、主従契約も含めた名付けならば、破棄が可能な場合があります】


 主従関係による名付けならば、関係ごと破棄するために必要だとはわかるが。

 彼の場合は、違うだろう。なんせ、自分でつけた名前だ。縛りはない。


「単純な話……自棄を起こしただけです」

「……やけをおこした」


 やっぱり胡乱げに見てしまう。


「……自棄で強さが半減してしまうデメリットしかない名前放棄をしたと?」

「ええ、そうです。立て続けに上手くいかない不快なことが起きたために……つい、やりました」


 遠い目をくすんだ青空に向ける大公爵。


「失ったのは強さもですが、『祝福(ギフト)』もサポート機能まで失ったようで、『成長ポイント』の振り分けも、今ではもう出来ません」


 『祝福(ギフト)』さんに見放されとる。


「ということで、名前もありませんし、名前で縛るという方法がありますよ! 主従契約です。いかがですか?」

「何が”ということで”だ。押し売りすんな」


 パッと明る顔を向けたかと思えば、名付けを求めてきた。

 厚かましいことこの上ないな。


「だいたい、アンタは『大公爵』じゃない。強さがリセットしたのに、強い階級にいるくせに、また名前をつけて進化したいだけじゃないの? 階級がついているなら、実質、アンタはあの十三王の下についているってことでしょ」

「ああ、階級ですか。これはあれです。ゲームを進めまくったのに、セーブをし忘れてうっかり消してしまって、最後のセーブポイントから泣く泣くやり直しするように、ここまで来ました。階級も何故かそう表記されていますが、本当に忠誠を誓っていません」


 それはそれですごいな。

 てか、例えがすごい。私、記憶ないのに、経験があるように納得した。


「進化はするでしょうね。あなた様にお仕えすべく、相応しい強さに」


 無駄にキラキラするイケメンが胸を張っている。


「いや、その対価ってとんでもないんじゃないの? 私はアンタの進化に何をやることになるのさ? なんであれ、現時点で私が弱いなら無理じゃないの?」


 生命力だったかな、普通は。でも異世界転生者だとまた話は違ってくるのかもしれない。何かの対価を払ってやる筋はないだろ。


「現時点ではそうですけど……あなたは、まだ『覚醒』はしていないのでしょう?」

「『覚醒』?」


 何それ。


「『進化』の次の段階です。私も条件を満たすためにあらゆることを試しましたよ。なんせ『祝福(ギフト)』は、条件内容を伏せてしまってわかりませんでしたから」


 『進化』の次にまた進化があるということ? 強さがまた上がる?


 本当にそうなのかと『祝福(ギフト)』さんに意識を向ければ。



【覚醒。

 条件:?????? ?????? ??????】



 本当に出た。事実か。


「名づけが条件の場合もあるでしょう。お試しにどうぞ?」


  さぁさぁ、と嬉々として勧めてくる大公爵。


「アンタの条件はなんだったの?」

「『取り引き』を666件完遂することが一つ。他は名づけをしていただければ、お答えしましょう」


 げぇ。666件も『取り引き』って……。全然生易しい条件じゃないのね、『覚醒』は。


「ん? 666件……『大公爵』まで返り咲いた…………アンタ、転生して何年目?」

「何年? 魔界は年という概念が薄いものでしね、地上では……確か、最後に地上に出た時は、転生から300年は経ってましたね」


 げぇ。…………私もうっかり、1年やら10年やら、経ちそう…………。悪魔的感覚、怖い。


「とにかくだ。アンタにさらなる進化を与えるだの、主従関係を結ぶだの、どれを目的にしたって名づけをするにはそれ相応の対価がいるじゃないの? 転生者だしね。私は何かを支払ってまで、名づけをする気はない」

「そんな……! 他者なら転生者であっても、通常の名づけと同じかと。むしろ今の階級なら多少の進化で済み、コストがかからないはずです」

「なんでお得感まで出して必死なの?」


 またもや胡乱気。

 そうすれば、がばっと両膝をついて土下座ポーズになった。


「後生です! あなたの奴隷にしてください!」

「悪魔の後生は重すぎる! そして何故奴隷だ!」


 勢いに呑まれて、ツッコミが怒声になってしまう。

 最低300年は年上の彼の後生は、おっかない。


「一目見た瞬間、この方だと思いました! あんな野獣の脳筋王ではなく、あなた様こそが私の王だと! あなた様に仕えたい! こき使われたい! 配下にしてください! おそばにおいてください! 奴隷でもいいのでお願いいたします!」

「足を掴むな! トラウマだ!!」


 足首を掴まれて縋りつかれたので、思わず顎を蹴り上げてしまった。

 なんせ、前回、ここを掴まれて敵地に連れていかれたのだ。

 なんかごめん、と謝ろうとは思ったが。


「もっとお願いします!!」


 顎を押さえて目をキラキラさせて頬を紅潮させている変態がいたので、謝る気が失せた。


【マゾ】


 ……わかってるよ。


「踏まれても蹴られても、あなた様のお役に立って見せましょう!!」


【マゾヒスト】


 わかってるって。


「お役に立っても、踏んでも蹴っても結構ですよ!! 褒めながらしてください!!」


【被虐性淫乱症】


 その字面は、やめてくれぇええ!!



 異世界転生者仲間は、極度のマゾでした。



 


ついてくるイケメン魔物のその一です。

名前はまだない。

マジでない。考え中です。


2023/12/16●

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