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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

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深淵都市観光兎付き

時間は飛んでGGC二日目から二日後、ルルイアス滞在四日目。
一昨日の事は目の前の仕事が終わるまでは記憶ごと封印する、紐解くとしたらそれはクターニッドとの決着がついたら……であろう。

そんなわけで顔隠し(ノーフェイス)からサンラクへと戻った俺は深淵の反転都市に戻って、はいない。



「まさかこんな形で後遺症が出てしまうとはなぁ……」

プレイしているゲームの名は「VRチュートリアルアスレチック」、VRシステムに最初からダウンロードされている、仮想現実に参加するにあたってのチュートリアルソフトだ。
特に弾丸や魔法が飛び交うわけでも、極めてリアルなNPCがいるわけでもない。だがミニゲームとして存在する「仮想無重力」というものが個人的に結構役に立つのだ。

三次元的立体の迷宮の中で泳ぐように無重力下の身体を操りエリア内に存在する光る球体をタッチし、タッチした球の数がスコアとなるシンプルながら「仮想肉体の身のこなし」が高いレベルで要求されるこのゲームのマイベストスコアは六十五個。
そして今やった結果は……四十一個。

結論から言えば、今の俺は大絶賛進行形でスペックのズレに苦しんでいるのだった。







VRシステムに限った話ではないが、大は小を兼ねても小が大を兼ねるパターンは稀だ。
業務用、マッサージチェアと揶揄される椅子型VRシステムではあるが、やはりサイズと重量の肥大化というデメリットを背負うだけあってか、そのスペックはヘッドギア型よりも数段優れている。

椅子型を使用した事で恩恵を得たのであれば、その逆も然りである。つい一週間前までそれでやって来たというのに、今の俺はアクションのいちいちに後ろ髪を引っ張られるような違和感を感じている。

少なくともウェザエモンやリュカオーンと同等とされるユニークモンスターを相手に、こんな根本的な問題を抱えたまま戦うのは舐めプが過ぎる。
昨日からリハビリを続け、何とか勘を取り戻してきてはいるが……やっぱり実際にゲームして実戦の中で勘を取り戻す方が効率がいいかな。

「とりあえず他の奴らも色々調査はしてくれたらしい、が……」

俺がカボチャ頭の助っ人として戦っている間、他のEXシナリオ参加者達も合間を縫ってポツポツと探索を進めていたようだ。
夜間に出現する魚達は魔法や弓で撃墜が可能であり、食料問題は魚肉で解決可能らしい。それ多分昼には腐れつみれや人魚になってるやつだろうけど大丈夫か?

「四隅の塔に存在するボスはそれぞれが特定の攻撃を無効化する、か……」

ルストや秋津茜が突撃を敢行した結果、魔法を完全無効化するボスとその正反対の物理を完全無効化するボスが確認されたらしい。
残り二体は攻撃が当たったり無効化されたりと何の条件なのかは分からないそうだ。

「あのクリオネは魔法無効化か……となると完全物理の俺が出張るべきか?」

純魔であるモルドは論外、忘れがちだが割と魔法職である秋津茜も除外、レイ氏とはそもそも連絡がつかない。
遠距離職であるルストは剛弓だったかのみを使えばいけるかもしれないが、そもそも四日目の今日はルストは多分ログインしていない。

あのクリオネはわずかでも魔法が絡むと、その絶対防御性を発揮する。つまりエンチャントもアウト、スキルのみでの攻略もしくは確証はないが極大の魔法火力で消しとばす、が攻略法かな。
尤も、後者は荒唐無稽過ぎるので結論から言えば、魔法を一切使わない使えない脳筋特化の俺が適任というわけだ。

「さて……ログイン、するかぁ」

もしかしたらレイ氏とも合流できるかもしれないしな。














目を瞑り、目が醒める。考えてもみれば中々に奇妙な体験だ、果たして今の俺は眠っているのか起きているのか……なーんて小洒落たことを考えつつ、俺はルルイアスの家屋、硬いベッドの上で目を覚ます。

「脳が動いてる以上起きてる、だろうしなぁ」

「あーっ! サンラクサン起きたですわ!」

「おーエムル、なんかスゲー久しぶりに感じるな」

「サンラクサンはお寝坊さん過ぎですわ!!」

ぷんすかと俺の膝に飛び乗るエムルを頭に移動させつつ、ふと頭をよぎった何か違和感に眉を顰める。
手を握り開き、スクワット、宙返り、反復横跳びなどを行い違和感は軽減されていることを確認しつつ、やはり完全に本調子ではないなと苦笑する。

なんだったんだ、物凄く頭に引っかかる何かを感じた気がしたんだが。

「い、いきなり飛び跳ね回るのはやめて欲しいですわ……」

「ん? あーすまん、そういえばアラバとクソガキは?」

「魚臭い人は「俺の愛刀を探してくるぞ!」ってけっこー前から探索してますわ」

愛刀、ねぇ……出会った時からそんな事を言っていたが好感度か、はたまたEXシナリオに関わるフラグか、一度本腰入れて探してみるのも手かもしれないな。
ともかくアラバ自体の戦闘力は結構高いようであるし、流石にのたれ死んでいるとは思いたくない。あれ、じゃあクソガキはどこに?

「それでガキンチョは……そこですわ」

「俺が寝てたベッドじゃん」

「その下ですわ」

えぇ……と覗き込んでみれば、ベッドの下、陰の暗闇の中に怯えた瞳孔と目が合った。えぇ……

「ずーっとそこで震えっぱなしですわ。ヴォーパル魂が足りてないですわ!」

「いや、まぁ徹底的に家探しでもしなけりゃ見つからない場所かもしれんが……」

幾ら何でも怯え過ぎではなかろうか。いや、これがまともな反応なのかもしれないな。ユニークモンスターの縄張りでゾンビパニックさせられるんだ、普通は立て籠もる。
その点で言えば積極的に外に出るアラバがおかしいのかもしれないな。プレイヤー? そこにイベントフラグか最強武器があればブラックホールにだって飛び込むわ。

「そうさなぁ……よしエムル、アラバの愛刀とやらを探してやるか!」

「サンラクサンならてっきり「ふーしょー四枚抜きだー! ぐははははは!」くらい言うと思ってたですわ」

なんとなくムカついたので両頬をつまんで引っ張る、おーフニフニ伸びる。ケダーマモフモーフ。

「ひゃへれー、ひゃへるへふわー」

「蛮勇は用法用量を守らないとヴォーパル魂的には良くないんだぞー? 分かってるのかー?」

用法と用量を守ればそれはパラメータ以上の成果を齎してくれることもあるけどな、少なくとも先日の戦いでは無茶を通したからこそあそこまで戦えたんだ。

「んじゃ、ちょっと出かけてくるから戸締りちゃんとして引きこもってろよー」

「へひゅわー!」









ネフィリムホロウというゲームにおいて最強のプレイヤーであったルストは、そのまま最もやり込んでいるプレイヤーであったということであり、それについて行っていたモルドもまた同様だ。
それはつまり根本的な当人の性質が「ゲーム」に向いているということだ。

ゲーマーには大きく分けて二種類存在する、即ち物語を突き詰めるプレイヤーとシステムを突き詰めるプレイヤーだ。
前者はぶっちゃけゲームシステムとかはどうでもいい。シナリオとキャラクター、世界観にこそ重きを置く。ゲーム外でも二次創作を作ったり、データをリセットしてまた最初からストーリーを始める……そういうタイプ。
そして後者はゲームにおけるシステムやスコアにこそ重きを置くタイプだ。より高い火力を、より最高の構築を、キャラの顔や性格よりもそいつが持つパラメータこそが重要である……そういうタイプ。

別にどちらが間違っているとかそういう話ではない、どちらも正しいゲームの楽しみ方だ。フルプライスでソフトを購入しただけの価値を見出せたのであるなら楽しみ方に貴賎はない。だがどちらがより長くゲームそのものを続けるかと聞かれれば、それは後者だ。
どのアイテムがどのパラメータにどのように作用するのか? どのアクションにどのアクションを合わせることで更なる力を発揮するのか? そういった積み重ねを好むプレイヤーが攻略サイトを充実させていくのだ。

そして後者であるルストとモルドの二人は封将以外の雑魚Mobに関してもある程度のリサーチをしていたのだ。

「半魚人共は基本的に視覚と聴覚頼りで発見されてから十秒以内にエンカウントした半魚人を倒しきれば増援は湧かない」

更に確率は低いが時折元となった魚のアイテムが落ちる事があるらしい。魚単体でアイテム化するものは落ちないが、部位が個別のパーツでドロップするものはアイテムドロップが発生する、と。

「人魚の歌は聞く前に物理的に耳を塞げば無効化できる」

一度聞いてしまったならばデバフを受けることになるが、聞く前に物理的にシャットアウトすれば無効化が可能、と。そもそもこれに関して俺は……いや、恐らく俺と秋津茜は考慮の必要がないか。

「夜間は大型モンスターが湧くが、昼間は基本的に半魚人と人魚だけ……なるほどなるほど」

ボスが出てこないゾンビパニックって事ね、それならやりようはいくらでもある。アルクトゥス・レガレクスが出てきたのはエムルの魔法によるイレギュラーだから普通は起こりえない、ってことか。

「ヌルい、ヌルいなぁ……そうは思わないかエムル」

「クターニッドのお膝元で言う台詞じゃないと思いますわ……」

どうせ七日目には大家に殴り込みに行くんだ、それに比べりゃ大抵はヌルゲーよ。あーでもシャチはキツかった、あれだけゲームジャンルが違ってたからなぁ。

「さて……どこから探そう?」

「無策!? 無策ですわ!?」

「イキアタリバッターリ、と言う言葉があってだな。こう言う時は地面に立てた木の枝が倒れる方向に進むものだ」

枝がないので傑剣への憧刃(デュクスラム)を立てて……

「拠点にしてるおうちの方に倒れたですわ」

「戻って寝ろ、と言うことか……?」

ええい、倒れる方向なんて所詮は乱数なんだ。俺は乱数になんて屈しない! こうなりゃルルイアス全域をローラーしてでも……むっ

「………エムル、聞こえたか?」

「聞こえたですわ! 魚臭い人の声ですわ!」

「具体的になんて言ってるか分かる?」

「うーん、多分「見つけたぞぉぉぉ!」ですわ」

イベントが向こうからやってきたな。カモネギならぬ……サメ、イベ?
まぁいいさ、ゾンビパニックだけならリハビリには丁度いいだろう。

掲示板回とか、ガトリングドラム社とか、GH:C編……というかGGC編は色々と書きたいことがまだまだあるのですが、いい加減本筋に戻らないと何の小説書いてるのか書いてる本人が見失いかねないのでインベントリアかこの章が終わったら番外編書きます。

スチューデ君はいわゆる不定の狂気発症してます、つーかクターニッドのお膝元に迷い込んでピンピンしてるアラバやエムルがおかしいだけです。エムルに関しては感覚麻痺ってそうですが
+注意+
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