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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

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怒髪衝天のリベンジャー:バーンアウト

情報を纏め、精査することはゲームの攻略において非常に重要な行動だ。というわけで俺と同じタイプのゲーマーであるらしいシルヴィア・ゴールドバーグ氏と俺の共通点、そして差異を纏めてみよう。
まずは根本的なプレイスタイル……これは俺も向こうも同じだ、精神的なテンションが技量に反映されるテンションファイター、そしてさらに言えば大抵の攻撃は直感的に対処できるタイプだ。カッツォやペンシルゴンが理詰めで進むところをとりあえず突っ走ってなんとかなる、いやなんとかしてしまうゲーマー……大抵謎解き要素で蹴つまずくまでがお約束だ。
先ほどのガトリングも、信じがたいが「弾速と銃口の角度、発射の音からおおよその着弾時間、位置を予想して突っ切る」を素でやっているらしい。おそらく元々のゲーマーとしてのスペックが高いのもあるがそれ以前にこのゲームについての造詣の深さがあの曲芸のタネだ。

よほどの技術革新が起きない限り、基本的にゲームに使用される技術というものはそう何度も変わったりはしない。そして同じ会社のナンバリングタイトルであればグラフィックやシステム周りが変わろうとも根本的なプログラムや、変更する必要のない諸々はそのまま流用されることが多い。
俺みたいにクソゲーを渡り歩くゲーマーとは違い、このゲーム一本に心血を注いできた俺の上位互換であるならば、そこらへんの慣れ(・・)はコンピュータによって最適化されたAIにも匹敵すると考えていい。世の中には人力でツールアシステッドなスーパープレイをやらかす人種が存在するのだからな。

そしてなによりも、奴自身がカースドプリズンの性能を完全に把握してやがる……っ!

「消防車を取り込んだのはミスチョイスだったね、ミーティアス相手にただでさえ鈍足な足なのにその上行動範囲まで狭めちゃうんだもの」

「どの口が言いやがる……」

後半明らかに誘導されていた。ペンシルゴンにしてやられた時ように気付いたらドツボにはまっていたパターンではなく、選択肢が狭められて選ばざるをえない、そういう動き方をさせられた。気づけば動きを制限させられる外装を選ばされ、サンドバッグが確定した。
というかこの消防車外装、消火栓にホースを接続しないとメインウェポン使えないとか産廃すぎるだろ! 一応梯子を打撃武器として使うことはできるが大ぶりな武器が奴相手にどれほど有効か、だなんて馬の耳に爆音で念仏叩き込んだ方がまだ有効だ……少なくとも馬の聴覚に攻撃はできる。

ここから勝ちを拾うのは困難だろう……いやだが時間稼ぎとしては上等ではないだろうか、体感だが五分以上は粘ったはず。そもそも最低限のノルマはペンシルゴンが稼ぎ出してくれたので俺は余興も余興、カッツォvsシルヴィア・ゴールドバーグの前座でしかない。ああそう考えると途端にモチベーションが下がり始めて……


「はぁ、カースドプリズンで挑んでくるから何かサプライズでもあるのかと思ったけど……ただの時間稼ぎか」

「む」

蹴られる。

「あれだけ時間が経ってケイが来ないなんて流石におかしいでしょ、なんの理由かは知らないけど貴方達の狙いはケイが来るまでの時間稼ぎ」

「むむ」

壁に叩きつけられたところを、首筋に回し蹴りが叩き込まれる。

「つまり貴方がカースドプリズンを選んだのもただの時間稼ぎのためのパフォーマンス、そうでしょ?」

「むむむむむむ」

「ふぅ……ま、いい試合にしましょ?」

俺が怯みモーションで動けなくなったところで、ミーティアスは跳躍。宙を蹴って宙返りと共に飛び蹴りが放たれる。恐らく着弾の瞬間に浮かべた表情は、俺にしか見えなかっただろう。

そう、その表情には見覚えがある。ゲーム内で長時間作業が確定した時の俺の顔とそっくりだ。

なるほど確かに、対戦相手が勝つ気0で時間稼ぎの舐めプをかましてきて不快な思いをするのは当然だ。それに対して舐めプをする側である俺が何を言ってもその言葉に力はない。なるほど確かに、それが一般的な「正しい」だ。
なるほど、なるほど、なるほど…………だとすればこの俺の頭の中でカチッと切り替わったなんらかのスイッチは、カフェインと一緒に全身を駆け巡るマグマに豆板醤でもぶち込んだかのような感情は、やけにスッキリハッキリした頭の中に浮かぶ簡素な指令はなんなんだろうな?

わざわざ遠出してまで出張って、一夜漬けでゲームシステムやらなんやらを猛勉強して、頭のおかしいサイズのパフェを食う羽目になって、ウェザエモン並の人外相手に接待バトルする羽目になって、外道の同類として全世界に晒されて、そもそも現在進行形でミーティアスにボコられてる姿が全世界に晒されて………それだけの苦を背負って向けられた表情は「うんざり」と「がっかり」?

なるほど、なるほど、なるほど、なるほど、なるほど………はははっ


ラウンド2。

「ぶちのめす!!」

時間稼ぎ? カッツォの到着? 接待? 知るか! 何もかもがどうでもいいわ! 凡庸的宿(ユニーク自発で)命魚類(きないバカッツォ)への考慮なぞドブにでも捨てておけ!!
おうおう確かにそっちが正論だろうさシルヴィア・ゴールドバーグ、だがな……自覚してるのと他人に言われるのは別問題なんだよ! んなこと俺が一番よくわかってるわ! 何がゴールドバーグだ何が全米一だ! その称号、金メッキみてーに引っぺがしてやるぁ!!
なんだろう、ひどく視界がクリアだ。十数時間寝て朝日を受けて起床した朝みたいな爽快感、ただし俺の中にはただ一つのオーダーだけが爛々と輝いている。すなわち「あのヒーローかぶれをぎゃふんと言わせろ」と。

「そうだよなぁ、お前(・・)の設定的にあんなシケた面で勝たれるのが一番腹たつよなぁ……!」

ロールプレイ、という点では先ほどのラウンドは無様というしかなかった。シルヴィア・ゴールドバーグへの対応でカースドプリズンというキャラの真似などやってる暇がなかったのだ。だが今俺の心は奴への、ヒーロー(ミーティアス)への怒り、恨み、微妙に違うな……ああそうだ、これはアレだ。イベント戦闘でレベル的には格下に強制的に負けさせられた時のような、ラスボス戦をノーダメクリアしたのにイベントムービー中ではズタボロに消耗しているのを見るかのような、そういう理不尽への反抗だ。ともかくそういったドロッとしたもので動いている。

「上等だ、上等じゃねーか、ああそうだとも!」

見つけた。奴の速さに対抗するにはこちらも最低限の装いというものがある。消防車とかクソだよクソ、なぜ自分から首輪とリードをつけなきゃならんのだアホか。

「ハロー白バイ隊員ズ、ちょっと傷心の俺にバイクを寄付してくれないか。拒否権はない」

吠え面かかせてやる。













機材のトラブル、大接戦、実況解説がやけに長々と語る、そういった積み重ねによって随分と戻るのが遅れてしまった。表彰式を抜け出し、「魚臣 慧」がこの場にいると色々まずいから、と渡されたヘルメットを「魚臣さんこっちの方が向いてませんか?」と抜かした強襲中隊(アサルトカンパニー)のマネージャーの顔に投げつけて慧は走る。
驚いた顔でこちらを見る裏方スタッフをかき分け、何故か何人かのスタッフに「お尻大丈夫ですか?」と謎の心配をされつつも、慧はステージの上に……ようやく戻ってきた己のホームである爆薬分隊が座っている座席の、最後の一席へと着席する。

「………?」

歓声を受けるとは思っていないが、少なくともなんらかのアクションが自分へ向けられると思っていた慧は観客の、スターレインの、実況解説の……この場にいるほとんどの目線が自身に向けられていないことに気づいた。

「重役出勤もここまで来れば感心するねぇ」

「……正直すまんかった、今サン……顔隠し(ノーフェイス)の手番か?」

「もう少し早く来てれば平和的だったかもねぇ……」

何故か乾いた笑いを浮かべるペンシルゴン、もとい名前隠し(ノーネーム)に慧は首をかしげる。
きっとその理由は画面の先にある。スターレインの面子から恐らくサンラクvsシルヴィアの対戦の光景が表示されているその先に。だと言うのになんだろう、先ほどからスピーカーを割らんばかりに響く高笑いは。ギャリギャリとアスファルトを擦るタイヤの音は。
あの頭のネジが爆散したかのような高笑いには心当たりがある。やることなすことが突飛な友人が、もうどうにでもなぁれと吹っ切れた時の笑い声にひどく似ているような、というかそれそのものであるような……

「いやまぁ、舐めプしてたこっちサイドにも非があるんだけどさ……」

「あー、なんとなく察したけど要約お願い」

「諸々あって、キレた」

「ちょっと要約しすぎかなぁ」

不敗のチャンピオンに、激情のチャレンジャーが高笑う。
傷心(沸騰する血液と逆ギレによる呪詛を撒き散らし、カフェインにひどく汚染されている)



ライオットブラッド・トゥナイト
米国にて今夏発売、ライオットブラッドはついに眠りの神ヒュプノスを打倒した───! 一本開ければ二徹に耐えきると称される最新モデルにして新たなる怪物の目覚めを彷彿とさせる一品。完全に合法であるはずなのに何故か日本では未だ発売されていない、不思議なこともあるものですね。破城槌を抱えたスーツ姿の男が目印。

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