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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

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ただ一瞬にて気取るは灼光の限界

「えげつねぇ! えげつねぇぞこんちくしょう!」

「あーごめんねー負け犬の遠吠え語はちょっと知らないっていうかぁー? ちょっと何言ってるか分かんないでぇーす!!」

「鬼! 悪魔! 外道!」

NPCが数千人単位で死ぬような事しやがったぜこいつ! まぁ俺も俺で高級車を中心に3ダースほど車をスクラップにしたが、比べ物にならないワルですよこいつわ……

「なにしたのさ?」

「ビルでジェンガ」

「鬼かよ……」

段階的に崩壊していくビルを背景に高笑うペンシルゴン、大量のNPCに「助けてヒーロー!」と纏わり付かれたところを…………やり口がえげつなさ過ぎてヤバい。もっとシンプルに倒しにかかればよかったか。

「メグも含めて聞くけど、このゲームを触ってみた感想は?」

このゲームの触りの感想か、そうさな……

「対民衆シミュレーションゲーム(バトル要素あり)」

「箱庭タワーオフェンス、なおヴィラン限定」

「自由度がズバ抜けた広い視野での立ち回りが要求される……って私も捻った感想を言わないといけないの?」

「メグはメグのままでいいんだよ、あの二人はニューロンに消せないバグがくっついてるだけだから」

「そ、そう……今の私がいいんだ……」

「ねぇサンラクさんや、私達はこれに対してどう対応すればいいかな?」

「笑顔で中指立ててやればいいんじゃないか?」

なにこのある程度イベント進めた中盤くらいのギャルゲーみたいな光景、カッツォの野郎見せつけてるのか? 見せつけてるのか? ただ本人はそういう感じには見えませんね、つまりはそういうことかよ、カーッ、ぺっ!!

「なんで無言で罵倒の限りを尽くされてるのか分かんないけど……とりあえず本格的な対策は明日として……ヘイサンラク、ちょっと一試合やんない?」

「ん? 別にいいけど」

「ただし一つだけこっちから頼みがあってさ……使用キャラは「ミーティアス」にしてほしい」

「……シルヴィアなんとかさんのプレイ動画でも見てこようか?」

「いや、いい。どうせ前回よりも進化(・・)してるのがシルヴィア・ゴールドバーグってやつなんだから」









───ただし、本気で来てくれ

それがカッツォからのオーダーであった。
見ようによっては今にもフィーバーしだしそうな格好のヒーロー「ミーティアス」の姿で俺はビルの屋上から街並みが先程とはガラリと変わったケイオースシティを見下ろす。

「さて、バグが絡まない格ゲーで奴と戦うのはどんくらいぶりか……」

初見ゲームという点では俺が有利ではあるが、シャンフロ系列であることや前作をカッツォがやり込んでいたことを考えるとダイアグラムは6:4でこっち不利くらいか……?

「まぁいいさ、やる事は変わりない」

ミーティアスというキャラクターを一言で表すなら「xyz軸を全網羅した高機動アタッカー」だ。空中ジャンプ、壁走りに高速ダッシュの性能が凄まじく、ステップと直角カーブが苦手ではあるが、この広大なステージを走り回るという点では現状選べるキャラの中でも最高峰の機動力を持っている。
ただ素の火力が若干低いため、より多くの攻撃を当てなければならないキャラクターだ。

「確かカッツォの使用キャラは「アムドラヴァ」だったか……」

腕が溶岩になっているヒーローキャラであり、コンクリやら鉄筋を溶かして弾丸代わりに飛ばしてくる近距離ファイター。溶鉄弾は全体的に遅いので不意打ちか対処できない状態でなければ回避は容易い、だがそれを当てる動きをするのがカッツォ……魚臣 慧というプレイヤーだ。

「幸い機動力でミーティアスが負ける相手なんて五キャラもいないし、主導権はこっちが握れる……いや、それが狙いか」

同じプレイスタイルに同じキャラを使わせる、これが対シルヴィアなんたらを見据えたスパーリングだということは猿でも分かる。であれば機動力で勝るミーティアスへの対策は当然組まれていると考えていい。
ヒーローvsヒーローマッチである以上、カッツォガン無視で救援活動&NPCヴィラン退治に向かうのもアリだな、ルールとして設定されている以上それ自体は別に邪道でもなんでもないのだから。

「とはいえ、だ」

俺個人として、対カッツォ……いいや、モドルカッツォとの戦績の最新が敗北のまま、というのは宜しくないと思うわけで。
いくつかのビルへと飛び移りながら辺りを索敵し、摩天楼の乱立に囲まれるようにして存在する公園の中央に、電灯とは違う灼熱の輝きを見つける。

「もうゴングは鳴ってるんだ……先手必勝で叩き込む!」

ビルから跳躍し、空中ジャンプ。ミーティアスの特殊技「スターロード」の効果により五秒間空中を駆け抜ける(・・・・・)。本来であればここでゲージ技を切って奇襲を仕掛けたいところなのだがあいにくゲージはすっからかん、特撮ヒーローを彷彿とさせる通常の飛び蹴りで上から先制攻撃を仕掛ける。あー、これシャンフロに持ってけないかなぁ。

「シャラシャラうるさいからバレバレなんだよ!」

「承知の上……だっ!!」

とはいえこのミーティアスというキャラクター、常に光の粒子のようなエフェクトを纏っている上に、地面に足がついていない……つまり今のような状況だと勝手に効果音が鳴る。驚く程隠密に向いていないキャラだが、今俺が欲しいのは会心の手応えではなく、攻撃したという判定だ。

ある程度の高さから落ちた場合、このゲームではダメージ判定こそないが代わりに着地モーションを強制されてしまう。だが攻撃モーションであればその硬直は大幅に短縮される。
こちらの飛び蹴りに対してカッツォ……アムドラヴァの対応は腕による防御。ジュワ、と熱が物質を溶かす音と共に互いのHPが減少する。摩天楼の天辺からの蹴りは流石にガードで完全に無効化できるものではなく、防御を貫いた衝撃がアムドラヴァの体力を僅かにだが削り、そしてミーティアスもまたダメージを受ける。
確かアムドラヴァ最大の特徴は、腕部限定ではあるが触れた相手にダメージを与える「溶岩装甲」だ。棘の鎧を腕限定にしたかのようなそれは、腕を用いる攻撃と防御に追加ダメージを付与する。

「あの高さから的確にこっちに攻撃を当ててくるとはよくやるよ……!」

「分かりやすく目印があるからなぁっ!!」

アムドラヴァ相手に張り付いての近距離戦闘はミーティアスでは不利だ、こちらの攻撃を防がれればその分スリップダメージを受ける上に、機動力を自ら潰すような真似はすべきではない。
であれば最適解はヒットアンドアウェイ……蝶のように舞い、蜂のように刺すってやつだ。

バックステップで距離を取り、攻撃の隙を伺う。しまったな、アムドラヴァが溶鉄弾を発射可能状態、不可状態で見た目に変化があるのか検証を忘れていた。飛び道具の有無が不明瞭、というのは中々に不味いのだが……悩んでいても千日手だ、遠距離攻撃があるものと仮定してここは前へ突っ込む。

助走をつけて前へと進む、アムドラヴァは灼熱の塊と化した右腕をさながら砲塔の狙いを定めるようにこちらへと突きつける。溶鉄弾はやはりあったのか、と警戒レベルを引き上げつつも駆け抜ける足に減速の命令は出さない。
五歩を経て速力が増したダッシュ状態になったミーティアスは他キャラと比べても頭一つは抜けた速さを叩き出す。
互いの距離は五メートルを切った、弾丸は飛んで来ない。ブラフか? それとも飛び道具としてではなく至近距離で運用するつもりか?
三メートル、右腕を引っ込めた……ブラフか! 降ろされた溶岩の右腕はこちらの攻撃を迎撃する構えだ、狙いはパリィか?
二メートル、既にここは互いの射程圏内だ。とはいえあくまでもそれは手持ちの攻撃の中でもいくつかが届くだけであって牽制以上の成果は発揮できない。
一メートル……互いに届く(・・)
ミーティアスは設定上ジークンドーを会得しており、軽快なフットワークから怒涛の攻撃を放つ事ができる……サラリーマンなのに。であるからして技の殆どは近距離戦闘であり最速で攻撃を叩き込むのであるならば懐に潜り込み一発入れ……違う!!

「く、ぬ、ぉお……っ!?」

右手、フェイク、身体、陰、左手、左手、来る! 来る!!

もはや思考ですらない、視覚からぶつ切りで送られてきた情報のカケラを精査するよりも先に、全力で身体を捻りアムドラヴァの右半身側を抜けるように跳躍。
次の瞬間、右半身を前に出すように構えることで自身の身体で隠していた左手から散弾の如くマグマを撒き散らしながら溶けた鉄の塊が射出された。
ジリジリと肌を熱するダメージを伴う光源が身をかわした俺の右脇腹を掠めて後ろへと飛んでいく。直撃こそ避けたがこちらは出鼻を大きく挫かれてしまった……とでもいうと思ったか?

「そこから反応するのかよ……っ!?」

「自発的ならそれは回避って言うんだよ……!!」

想定外の緊急行動であっても身体の主導権はまだ俺が手綱を握っている。直撃を受けて吹っ飛ばされるのと、自分から転がるのでは動きは天と地ほどの差がある。
狙ったかどうかは定かではないが、アムドラヴァの溶鉄弾は俺の胸の中央を目掛けて発射された。それを回避するために俺もまた弾丸の如く身体を左回転で捩じらせていた。
動きを止めず、衰えさせることもなくさらに後押しするように力を込めれば天地の景色が逆転する。前後を軸に、左回転のロールを敢行した俺は視界の逆転が正常となった時点で地面を蹴るように着地、頭を一度振って平衡感覚を戻しつつノータイムで身を屈める。
そして今度は右足を円の中心点に、時計の針が動く軌道を真似るように左足から奴の体勢を崩さんとする足払いを放つ。狙うのは奴の膝裏、喰らえ爪先蹴り式膝カックン……!

「舐めんな!」

「うるせぇ倒れろ!」

この蹴りによる膝カックンは兎にも角にも始動から直撃までの速度が速い事と、蹴りそのものにダメージがあるという点において通常の膝カックン、つまり背後に回って自分の膝で相手の膝を押すそれよりも優っている。
だが回し蹴りに近い体勢で行う以上、「二」足歩行の生物である為に一本を支えとすれば攻撃に使えるのはもう一本以外には存在しない。
そのため片方の膝裏しか打ち据えることができないが元より苦しい姿勢からの反撃、会心の(クリティカル)ヒットは期待していない。

片足立ちの姿勢を強制されたアムドラヴァであるが、細マッチョなミーティアスと違い、ヘビー級ボクサーのような体型をしたアムドラヴァは片足のみで身体を支えてなおバランスを維持していた……中身(プレイヤー)のセンスによる所も大きいだろうが、やはり「アムドラヴァ」というキャラクター自身の体幹の信頼性が高い。
さぁどう攻略したものか、足を払ったはいいが追撃を仕掛けられるような余裕はない。ミーティアスの「コンボ」は相手を空中にかち上げなければ(・・・・・・・・)ならない以上この体勢からコンボへと繋げるのは困難、であれば一旦引いてから下から上への攻撃をメインに撹乱を……

「あー、ごめん。バトル中断で」

「んぁあ?」

車は急には止まれない。すでに身体は次の一手へと動き出しており、そんな急にノーコンテスト宣言されたところで止まることはできない。先ほどまで戦意を漲らせていたアムドラヴァ(カッツォ)の口からその言葉が飛び出してきた時、疑問や驚愕よりも先にすでに跳躍と共に蹴り足を唸らせていた俺はとりあえず技を放ち終わってからその言葉の意味を考えることにした。即ち……

「うぐぉ!?」

「不慮の事故だ、笑って許せ」

ハイキックが顎に命中して吹っ飛んでいくカッツォに俺は誠心誠意の謝罪の言葉を送るのだった。




「……で? いきなりノーコン宣言とか何考えてるんだ。お前から対戦希望してきたくせに」

「ごめんて、いやなんというかさ……仮想シルヴィア的な感じでミーティアスと戦ってみて確信したっていうか……多分アムドラヴァじゃ勝てないんだよね」

「そうか? 結構苦戦しそうな予感がしたけど」

両腕にトゲ付きのシールドを常に装備しているようなキャラだ、ボクシング的な感じで戦い続けていれば守勢でありながら相手のHPを削ることができるだろうし、その性質上殴るためには近づかなければならないミーティアス相手なら結構有利を取れると思うんだが。
そんな所感を煽りを交えつつ伝えると、プロゲーマー殿は実に良い笑顔で単純明快な「今の自分ではダメな理由」を説明してくださった。いいかカッツォ、拳に会話能力はないんだ……わかったらその拳を降ろして、オッケィ?

「まぁはっきり言うと……シルヴィア・ゴールドバーグって怪物は今のお前より速い」

「マジ?」

俺より速いとかもはやそれウェザエモン(公式TAS)レベルでは?
シャンフロ描写に戻りたい……でもこっちの描写も書きたい……でもそれ以上に設定考えていたい!! モンスターとかの!!! と思う今日この頃
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