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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

旅する狼よ、大志を抱け

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勝てばよかろうなのだカウンター

五勝二分三敗、数値上は割と接戦ではあるが結果だけ見ればまぁ……完全勝利と言ってもいいだろう。
それは向こうも理解しているようで、ぷるぷると震えながら湧き上がる感情を抑えてる姿を見るのは実に心地が良い。

「はー勝利の美酒を2リットルペットボトルで飲んでる気分ですわー」

「ぐぬぬ……」

「ま、まぁまぁ……」

フィドラークラブに正々堂々の概念は存在しない。逃げもするし隠れもする、不意打ち足止め一撃必殺……その性質は真正面から戦うタイプの構築相手なら極めて高い戦果を叩き出す。
逆に言えば距離を離されればただの蟹なのだが、それならそれで隠れんぼからの暗殺を敢行するだけだ……あっ、センサーガン積みはやめて! バレる!

「捕まったら即死とかクソゲーすぎる……」

「ははは、本当のクソゲーなら空間固定AMR連射バグで遠距離構築以外に存在権が許されないから」

「空間……何?」

「君らが知らなくていい世界だよ……」

何せバグが酷すぎてサービス終了した、今は跡地(オフライン)に過去の惨状を想起することしかできないクソゲーというものは星の数ほど……いや、そこまでは多くないがマンボウが一度に産卵する数くらいには存在する。
空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲームだってこの世には存在していたのだ、超遠距離から対物ライフルでクイックドローの早撃ち対決をするって斬新すぎて面白かったんだがな。
諸行無常(因果応報)を感じずにはいられないな、デバッガーは居眠りでもしてたのか。

「十戦もすれば十分だろう」

「悔しいけど、緋翼連理が負けたことは認める。でも次は勝つ、明日にでも……」

「あーどうだろう、明日にはメインのゲームに戻ってるかもだし」

「再戦を……なんて?」

絶対王者たる緋翼連理に対して勝ち越し、なおかつ「隠密、奇襲、決着」という操り手(パイロット)としてある程度のスキルを持つプレイヤーであれば、真似をするのにそう大した苦ではない「望潮型双脚構築」の誕生。
それを真似するのか、メタとしての「キングスギャンビット型」をパクるのか、はたまたキングスギャンビットメタを構築するのか……にわかに活発化したプレイヤー達を尻目に、ルストは俺が口にした言葉に硬直する。

「つまり……………もう来ない、と?」

「どうだろう、たまには来るかもしれないけど今回このゲームを再開したのは気分転換の面が大きいし……まぁやるとしても月一くら」

「それは、良くない。とても、良くない」

「うおっ!?」

「ちょ、ちょっとルスト!」

ガバリと小柄なアバターのどこにそんな力があるのか、俺のアバターの胸倉を掴んで引き寄せるルスト。
モルドが慌ててルストを俺から引き剥がそうとするが、ルストは構うことなく俺へと言葉を紡ぐ。

「サンラク、貴方が来ただけでネフホロは、こんなにも活発になった。きっと、これからも貴方がいてくれたら、ネフホロはもっと楽しくなる…………だから、ネフホロを続けるべ……続けて、欲しい」

即興で説得の言葉を考えているためか、たどたどしい感じではあるが、ルストの目は大真面目だ。そして意外な事にそれを止めようとしているモルドもまた、こちらに対して期待するような目を向けている。
とはいえ正直継続してこのゲームをやる程のモチベーションは無い。面白いゲームだとは思うし、実際楽しいとは思うが「毎日やりたい楽しいゲーム」
と「たまにやるくらいが楽しいゲーム」はやはり違うのだ。

「とはいえなぁ、元々シャンフロでロボを見つけたのに乗れない憂さ晴らしだし……」

「……シャンフロで、ロボ? 今ロボと言った?」

「へ?」

先程よりも力を増した胸倉を掴むルストの手。その目は「ネフィリム・ホロウを愛するプレイヤー」としてではなく、別の輝きで爛々としている。
これは……そう、シャングリラ・フロンティアのプレイヤーとしての輝きだ。それに気づくと同時、俺は自身の迂闊を呪う。

「い、いや今のは無しにして欲しいというか忘れて欲しいというか……」

「私もシャングリラ・フロンティアはプレイしていた(・・)。でも、いつまで経ってもロボの手がかりすらないので引退した……」

「は、ははは、それは災難な事で……」

「ので、今の言葉には非常に興味がある……!」

さて、厄介な事になったぞ。ぶっちゃければ俺はルストの要望のいずれにも応える義務も義理もない。
とはいえそれを一切の波風立てずに断ることが出来るかと聞かれればペンシルゴンのように口車がニトロでブーストする話術を持たない俺ではちと荷が重い。
ゲーム次第じゃPKだって普通にやってのける俺ではあるが、このゲームでそういうギスギスするような事はあまりしたくない。時間にして一日にも満たない交流ではあるが、性格の良し悪しではなく性質の良し悪しとしてこのゲームの住人はいい奴が多い。
クソゲーではないにしろ継続的にプレイしたい気持ちがないわけでもないが、やはり今一番ガチでやり込んでいるシャンフロに専念したい気持ちもあるわけで。
結果としてさぁどうはぐらかそうと考えていた俺だったが次の瞬間、ルストが投下した核爆弾クラスの発言に思考の全てが吹き飛ばされる事になる。

「もしこれからもネフホロを続けてくれるなら……ついでにシャンフロでのロボについて教えてくれるなら……」

その言葉をまさかシャンフロですらないロボゲーで聞く事になるとは、未来予測レベルで悪巧みするペンシルゴンですら思いもしないだろう。




「ユニークモンスター「深淵のクターニッド」、それに繋がるユニークシナリオを教えてあげても、いい」

シャンフロにおける七枚のジョーカー、一枚消えて残り六枚。
その内の一枚を俺が握っているわけだが、にわかに三枚目のジョーカーの存在が俺の前に現れたのだ。













「……で、なんでこうなったんだ」

あれから翌日、いま私はフィールド名「爆心地(グラウンド・ゼロ)」に来ています。
一番最初のネフィリムが落ちて来た都市の跡地で、俺はフィドラークラブに乗り込みながらそう呟いた。
いや、その理由は重々承知しているがそれでも呟かずにはいられない。



───明日の朝、また私と勝負して欲しい、私が勝ったらネフホロを続けて。

ついでにもし自分に勝てたらユニークモンスターの情報を開示する、なんて言われれば断るわけにはいかない。
想定外も想定外、まさかこんな場所でユニークモンスターの名前が出てくるとは思わなかった。
「深淵のクターニッド」、確かその名前は既に知られているものではあったはずだ。なにか名状しがたい狂気を感じる名前ではあるが、ユニークモンスターである以上、挑むにせよ発見するにせよユニークシナリオEXのフラグを立てない事には始まらない。
正直信ぴょう性の観点から言えば疑わしさは拭えてはいないのだが、わざわざ深淵のクターニッドを名指しで指定する理由がわからないし、元々暗闇でコンタクトレンズを探すようなものだったのだから知る価値はある。

「新機体で来るみたいなこと言ってたが、とりあえずどういう構築なのかを確認して……」

次の瞬間、フィドラークラブの右腕に衝撃が走り、肩の球体関節ごと抉り貫かれた右腕が吹き飛ばされた。
咄嗟に光学迷彩とジャミングセンサーを発動、周囲を索敵しながら瓦礫を盾にその場を離れ……

「うのぉお!?」

さらに降り注ぐ弾丸。左噴脚に弾丸が直撃し、ガタ落ちした機動力を浮脚に切り換えて再び逃げる。
だがどこに隠れても姿を消しても弾丸は的確に俺を狙い撃つ。そしてビルを隙間を縫うように飛んで来た弾丸が頭部の半分を消しとばした時点で、俺は確信する。

「あ、あんの野郎…………なりふり構わずガンメタ決めやがった!!」

センサーガン積み遠距離狙撃機体、キングスギャンビットのそれとほぼ同等の構築にしたのだろうルストの新機体の姿が一瞬だけ視界に入り、胴体を射抜かれたことでフィドラークラブは爆散した……いやもう一度言います、あの野郎!!!


どこかでルストに鼻で笑われたような気がした。
後出しジャンケンでドヤ顔を決めたやつは、後出しジャンケンでドヤ顔を決め返されても文句は言えないのです……

本格的にクソゲーのプレイ描写したいけど大切な何かを失いそうで怖い
+注意+
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