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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

旅する狼よ、大志を抱け

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100/235

人は不可能に夢を見る、いざ空を歩く時

皆々様の評価、感想、レビューのお陰で100話に到達することができました。
未だ誤字や設定の齟齬が少なくない頻度で発見される未熟者ではありますが、今後とも拙作をよろしくお願いいたします。
「待てコラァァァ!」

「ギィィィィッ!!」

目と目が合った瞬間、一方は一目散の闘争を選び、もう一方は一目散の逃走を選んだ。捕食者と被捕食者、襲うものと襲われるもの。
ただ一つ間違いがあるとすればそれは、生者を憎むアンデッドの、捕食者たるワイバーンが逃げる側で死者を恐れ、被捕食者たる人間と兎が追いかける側であるということだろう。

「飛んで逃げようってかしゃらくせぇ、エムル!」

「はいな! 【マジックチェーン】!」

エムルが魔法名を唱えた瞬間、俺の頭上に発生した魔法陣から魔力の鎖が射出される。それは一直線にアンデッドワイバーンへと殺到し、その翼へと絡みつく。

「煩わしさに立ち止まったのは悪手だったな……手じゃないから悪翼ってか?」

「【マジックエッジ】!」

魔力の刃が腐肉の首にこびりついた朽ちた鱗を削り飛ばす。魔力刃が穿った傷口に斬首剣が叩きつけられ、さらにダメ押しとばかりに補正の入った幸運の拳がアンデッドワイバーンの頬を打つ。
そこでようやく力尽きたか、アンデッドワイバーンはポリゴンとなって爆散した。全く、初見じゃ重宝した雑魚除けの呪いもレベリングとなれば一瞬で縛り要素にクラスチェンジだ。

「全く……鬼ごっこがしたいわけじゃないんだがな」

「アタシは楽チンですわー、でもサンラクサンぴょんぴょん跳ねるから当てにくいんですわ! もう少し安全運転ひてほしいですわ!」

「難しい相談だな、今の俺はまさに跳ね馬……鳥だけど」

そりゃあ俺の頭にしがみついてるわけだから、走る労力を省けてるからなこいつ。ついでに瘴気も俺によって弾かれてるからさぞや快適だろう。
とはいえ完全支援砲台と化した今のエムルはお荷物どころか、仮に今の十倍重かったとしても担ぐことを考慮する程度には有能だ。

まず今さっきアンデッドワイバーンに使用した【マジックチェーン】、同様の効果を持つ【マジックバインド】の上位魔法であるこの魔法は対象と使用者のレベル差が捕縛力に反映される。
つまり強ければ強い程拘束力が上がるということだ。
だがこの魔法の最大の利点は拘束できる事ではない、相手が「振りほどくモーション」を僅かでも行う事だ。
先程のアンデッドワイバーンであれば、羽に巻き付けたマジックチェーンを嫌って飛んで逃げる行動を中断してしまった。その隙に距離を詰めて一気にHP全損まで削りきることができた、隔絶したレベル差や一部モンスター相手であるとそもそも縛れないなどの制限はあるようだが、雑魚を逃さないという点においては非常に優秀な魔法だ。

正直懐は素寒貧一歩手前だったのだが、それをギリギリで支えてくれたのが例の女騎士フィギュアだ。
あれをピーツに見せたところ非常にレアな一品であったらしく、相当なお値段で買い取ってくれたのだ。その時に聞いたのだが、基本的に完全な人型、それも表情まで彫り込んであるような偶像は非常に価値が高いらしい。
ちなみに最も価値が高い偶像は七つの最強種を模したもの、らしい……というかユニークモンスターを模した偶像ってドロップするのか。

「あー、諸々終えたら絶対偶像集めやるぅー……」

「サンラクサン! デュラハンですわデュラハン!」

「おっ、経験値(レアエネミー)じゃん」

しかも今度はちゃんと首を持っているデュラハンだ。それってつまりあのデュラハンが普通にドジっ子であるという証明では……とホームランされて消えた彼の事を思い出しつつも、戦闘態勢に入る。

「エムル、オペレーション「英雄堕とし(ヒロイックフォール)」だ!」

「えっちょ、初耳ですわ!?」

「ははは! 今考えたからな!」

「ふびゃーっ!!」









説明しよう、オペレーション「英雄堕とし(ヒロイックフォール)」とは!

「手足をふん縛って袋叩きにする事でかつては名のある名将だったのだろうデュラハンを雑魚同然にぶち殺すという作戦です」

「死者の名誉を容赦なく踏み躙るサンラクサンは凄いっすわぁ……」

「覚えておけ、死者が貰って嬉しいのは結婚指輪でも二階級特進でもない。黙って眠らせてやる事、それが今を生きる俺たちが過去に生きた者達に出来る最大の手向けだ」

「サンラクサン……」

この台詞自体は俺も素直にカッコいいと思うが、これを言ったNPCの隣で衛生兵(プレイヤー)が生と死の境目を反復横跳びしてるんだからギャグなんだよなぁ。
クソゲーって二種類あるんだよ。要所要所に光るものがある惜しいクソゲーと、スタートボタンを押してから電源ボタンを切るまで地雷爆発の光しかない真性のクソゲー。
前者はなんというかちゃんといい所にも気づいているよ、という慈愛の感情と同時に、ライオンに狙われたヌーの子供を見るような台風で巣から落ちてしまったツバメの雛を見るような物悲しさを同時に感じてなんとも趣深い。
後者? 鼻で笑ってプレイできる程度には罪深いかな。
エムルがキラキラした目を向けてくることに罪悪感を感じるのは何故だろう。

「スイカ割りしようぜ!」

難易度は目隠し無し(ベリーイージー)、無論スイカ役はお前の首だぁ!
エムルの放ったマジックチェーンとそれにタイミングを合わせて放った無尽連斬によって、足を縺れさせ転倒した馬から転げ落ちた首はあるけど首なし騎士の腕を蹴り飛ばし、首をサッカーボールよろしく蹴り飛ばす。
エムルが胴体と馬へと攻撃を仕掛けて牽制している間に、デュラハンの頭部破壊作業に取り掛かる。首、というか頭部なのだが、生首と言うわけだし補正は入るだろうか。

「実験開始だオラァ!」

焔将軍の斬首剣を大上段に構えて振り下ろすオマージュ天晴再び。とはいえ今回はただ振り下ろすだけではない、ジャンプも絡めた跳躍大上段唐竹割りだ。
朽ちかけの兜に蘇った刃が叩きつけられ、衝撃が握りから俺の腕へと伝わる。まるで泥を詰めた水風船を叩いているような
液体と固体が不快な方面で絶妙なバランスを維持する感触に眉を顰めつつも、もう一度攻撃を行う。
今度はムーンジャンパーも絡めてさらに落下の威力を加算した一撃。次は例えるなら腐ったスイカ、ぐじゅりと肌が泡立つような感触ではあるが、確かに砕いた(・・・)手応え。

「うぇえ」

「ギィィィィィィィィィィィィィィイ!!!」

粉砕された頭部が断末魔を叫ぶ、無線接続された胴体が何もない虚空の首から上を掻き毟る、起き上がることを忘れたようにのたうち回るデュラハンに無慈悲に叩きつけられるマジックエッジ。エムルお前人のこと言えないな、大概お前もアレだぞ?
兜の隙間から流れ出る腐ったラズベリー色のポリゴンに、無駄なところまで凝るなよとゲンナリしつつも斬首剣を逆手に持ち替え、さながら聖剣を祭壇に突き立てるようにその切っ先でデュラハンの頭を串刺しにする。

「頭が無くても生きていけるからそう落ち込むなよ、どちらにせよここで俺の経験値になってもらうけどな」

地面から斬首剣を引き抜き、突き刺さったままのデュラハンの頭を振り払う。ベショリと地面に落ちた頭はポリゴンとなって霧散し、遺された胴体からも力が抜ける。
どうやら頭を破壊した事で即死判定が胴体部分に付与されたらしい。ポリゴンとなって消えていく胴体と首なし馬を眺めながら、あのドジっ子は実は凄かったのではとふと思う。
アメフト選手よろしく弱点(あたま)を抱えなければならないデュラハンにおいて、首そのものを紛失した喪失骸将(ジェネラルデュラハン)は……そう、言うなれば日光浴が趣味の吸血鬼、シルバーの十字架アクセサリーで着飾った吸血鬼、葡萄酒を一気飲みしながらガーリックトーストを食べる吸血鬼……やっぱ吸血鬼って明らかに弱点多くて可哀想だな。

「せめて安らかに眠れデュラハン……お前の頭パンクしたタイヤみたいにしちゃったけど」

なんとなく十字を切ってみたが、そう言えばこのゲームの世界観における宗教ってどう言うものなんだろうか。
少なくとも見たことはないが聖女ちゃんなんてNPCがいる以上、やはりそっち方面の設定も執念じみた作り込みなのだろう。明らかに破戒僧だが一応聖職者系の職業たるオイカッツォに今度聞いてみよう。
だがデュラハンよ、レアエネミーだけあってお前が齎した経験値は俺をさらなる高みに至らせた。

「レベル79……数値だけ見ればただの1レベル上がっただけに過ぎない」

だがこのゲームにおいて、経験がスキルに反映されるのはレベルが上がった瞬間だ。78が79になっただけ? いいや違う、この「1レベル」にはウェザエモン戦以降の戦いの経験……喪失骸将(ジェネラルデュラハン)の、歌う瘴骨魔(ハミング・リッチ)の、四つ腕ゴーレムとの戦いの中で鍛えられてきたスキルへの理解と目覚めが詰まっている。
そして雑誌やPV、様々な媒体からその存在を確信していた「目当てのスキル」の存在に、俺は仮面の下で口を下弦の弧に歪める。

「お前を待ってたぜ……二段ジャンプ(・・・・・・)!」










————————————
PN:サンラク
LV:79(5)
JOB:傭兵(二刀流使い)
62,000マーニ
HP(体力):40
MP(魔力):50
STM (スタミナ):100
STR(筋力):70
DEX(器用):70
AGI(敏捷):90
TEC(技量):65
VIT(耐久力):2
LUC(幸運):104
スキル
・無尽連斬→獣鏖無尽
・グローイング・ピアス
・インファイトLv.MAX
・ドリフトステップ
・セツナノミキリ
・ハンド・オブ・フォーチュンLv.MAX
・グレイトオブクライム
・クライマックス・ブーストLv.MAX
・六艘跳び→七艘跳び
・リコシェット・ステップLv.MAX
・ヘイト・トランプルLv.4
・ムーンジャンパー→スカイウォーカー
孤高の餓狼(トランジェント)
・オフロードLv.MAX
・致命刃術【水鏡の月】伍式
・イグニッションLv.MAX
・オーバーヒートLv.6
・ニトロゲインLv.MAX
・デュエルイズム
・衝拳打Lv.1
・テンカウンター
・パワースラッシュLv.1
・一振両断


装備
左右:焔将軍の斬首剣
頭:凝視の鳥面(VIT+1)
胴:リュカオーンの呪い
腰:無し
足:リュカオーンの呪い
アクセサリー:格納鍵インベントリア
————————————

100話目が汚いスイカ割りになるとは……(困惑)



100話目記念、ネタバレという名の設定吐き出したいコーナー
実は「現代」「神代」の前にもう一つ時代がある。
便宜上「始原」と呼称するその時代には文明が存在していなかった。存在していたのは知能のない微生物と、大陸になる前のもの(・・・・・・)だけ。
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