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お父様が陰謀者の魔の手に!?

 帳簿がずさんだからこそ、隠蔽が可能だったのでしょうね。

 ずさんだけど律儀に履歴を残すという、間の抜けた首謀者様ですわね。

 

 私は疑いの箇所を別の紙に書き写した。

 証拠の帳簿を3冊持ち、私は執務室へ向かった。

 

 トントンとノックする。


「どうぞ」

「失礼します。メリアです」


 エルミーナ執務官とノエルが驚いた表情で私を見ている。

 何を驚いているのかしら?

 私は気にせずに執務室に入っていく。


「メリア様、そんなに分厚い資料を3冊も片手でお持ちになれるんですね」


 ——しまったぁ。やってしまいましたわ。


 帳簿1冊は分厚くてかなり重い。

 それを3冊も軽々持っていたら驚くのは当たり前だわ。

 私は「ゴリラお嬢様」に認定されてしまいますわ。とほほほ。


「私、毎日鍛えていますもの。このくらい当然ですわ。おほほほ」


 私は大袈裟に開き直って誤魔化す作戦に出た。

 「気にしないで」という意図が通じたらしく、温かな目で納得してくれた。


 それより、新事実をご報告しなければいけませんわ。


「執務官、王国の崩壊の原因がわかりました!」


「そんなに早くわかったのか?」


 驚くのも無理はない。

 速読を覚えていた私がさらにスキル「10倍」があるのですから。


「ええ、たまたま開いたところに不自然の箇所がありましたの。同じような箇所を3年分見比べてわかりましたわ」


「メリア様は、幸運の女神様に見守られていらっしゃるのですわね」


 ——ノエル、余分なことは言わなくてよろしいですわ。


 私は、テーブルに3冊の帳簿を怪しいページを開いて置いていった。


「こちら、ザンネーム王国との取引の内容をご覧ください。わかりますか?」


 お父様たちが、じーっと帳簿を見つめる。

 ノエルは早々に離脱した。


「うーん、隣国との取引の額が年々変化していますね。それ以外は……」


 エルミーナ秘書官、おしい。

 ただの額の変化ではないのですわ。


 お父様も腕を組んで考えているようだ。

 しばらくすると、ふっとお父様の顔色が変わった。


「そ、そうか。そういうことだったのか」

「おと、いえ、執務官。おわかりになられましたね。そうです。隣国との不当な取引が王国の経済破綻の原因だったのですわ」


 エルミーナ秘書官とノエルは、ぽかーんとした顔をして理解が追いつかないようだ。


「メリア様、もう少し詳しくお願いいたします」

「ええ、ノエル。わかりやすく説明いたしますね。作物を単価、銀貨10枚で輸出していたものが、年々7枚、5枚、3枚と減らされていたのです。逆に、輸入品はその逆になっています」


 エルミーナ秘書官は理解したようだ。

 ノエルは、簿記のお勉強をしましょうか……。


「しかも、それに合わせて使途不明金。すなわち何に使われたかわからないお金が増えていっています」

「なるほど。じわりじわりと王国のお金をむしり取っていたのか。なぜ気づけなかった……」


 お父様がもの凄く悔しそうな顔をして手のひらから血が出るくらい拳を握りしめていた。


「この取引は、隣国だけで出来ることではございません。王国側に内通者がいると思われます」


 内通者はなんとなく想像できるけど、証拠がない。

 そう簡単に口に出せないのが歯痒い。


 まさか帳簿から原因を突き止められるとは、内通者は思ってもいないでしょうね。


「内通者か……。誰がこのような陰謀を、何が目的なのだ。くそぅ……」


 お父様は疲れが溜まっているのか、冷静な判断ができなくなっている。 


 はっきり言わなければいけませんね。


「目的は、ザンネーム王国によるサイネリア王国の乗っ取りでございますわ」


 私の一言にみんなが驚愕した。


「王国が破綻したところに、ザンネーム王国が手を差し伸べて併合または第2王子が統治するという筋書きではないかと思われます」


 セシルとザンネーム王国の第2王子との婚約はこのためだと思う。

 セシルを不幸になんかさせませんわ。


「わかった。国王陛下に『ザンネーム王国との国交断絶』と『第1王女殿下の婚約破棄』の件を陳情してくる。メリア、本当にありがとう」


「執務官、お礼はまだ早いですわ。お金の流出を止めただけで、王国再建はこれからですわ」


 お父様は「ああ、わかった」と気合の入った表情を見せて執務室を出ていった。


「メリア様、ノエル様、本日の業務はこの辺にいたしましょう」


 気がついたらだいぶ日が暮れていた。

 エルミーナ執務官に促され、私とノエルは帰宅することになった。


「メリア様、大変なことになっているのですね」

「ええ、これから大変ですわよ。ノエルの力も頼りにしてますわよ」

「わ、私なんかがお役に立てるのでしょうか」

「ノエルのスキルが役に立つ時が来ましたわ。期待してますわよ」


 あっ、とノエルは理解したようだ。


 そう、ノエルの動物と話せるスキルを使って諜報活動をする。

 内通者の尻尾を掴んでみせますわ。

 


 私はお父様より早く帰宅した。

 しかし、お父様は夕食の時間になっても帰って来られない。


 ——心配ですわ……。


 夕食も終え、自室で読書を楽しんでいると、突然に屋敷中が騒がしくなった。

 

 あまり良くない感じがしたので、部屋を出て廊下の様子を伺う。

 

 ——医師が入ってきた? ……お父様!?


 私が付き添いながら、お父様が担架で寝室に運ばれていく。


「お父様、お父様。目をお覚ましください……」


 ——幸せが壊れていく。どうして?


 お父様に付き添っている医師の方が話しかけてきた。


「メリアお嬢様、落ち着いてお聞きください。ブルセージ様は毒をもられました。エルミーナ秘書官が見つけてすぐに解毒処置をいたしました。一命を取り止めることはできましたが、意識は戻りません」


 ——なんてこと、誰がお父様に毒を……。


「エルミーナ秘書官はどうなされましたの?」

「エルミーナ秘書官は、殺人未遂の容疑者として捉えられました」

「え、どうして?」

「わかりません。問答無用で連れていかれたと聞いております」


 おそらく、証拠隠滅や発覚を防ぐためにエルミーナ秘書官を罪人にして始末するつもりだわ。



 翌日、ノエルと一緒に執務室にきた。室内は荒らされていて、3冊の帳簿は盗まれていた。


「ひどい、どうしてこんなことになってるのでしょうか?」


 ノエルは昨晩の事件については知らないようだ。まだ知らない方がいい。


「ノエル、部屋の片付けをお願いしてもよろしいかしら」

「ええ、わかりましたわ。メリア様はどちらに?」

「私は、フィーリア騎士団長のところへ行ってきますわ」


 私は、ある目的のために騎士団の詰所に向かった……。

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