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王国破綻の始まり

 今日は私の王宮初出勤の日だ。

 だけど、お父様は最近帰って来られない。

 記念日にすら……。


「メリア、そのようなお顔はするものじゃないですよ。旦那様は今お忙しいのです」


 私が不安を抱いているのがお母様にはすぐに伝わったようだ。


「はい、わかっております。不満よりもお父様のお体が心配で……」


 たんたんと朝食を済ませ、私は部屋に戻る。

 

 セリアに王宮へ着ていく衣装に着替えさせてもらう。

 王宮へ着ていく衣装は制服のようなものだ。

 優雅さに機能性抜群の衣装だ。


「メリアお嬢様。初のお仕事ですわね」


「ええ、お父様がお忙しいようなので私がお助けしなければなりませんわ」


「メリア様がいらっしゃれば、ブルセージ様もご安心なさいますね」


 セリアのいつもの笑顔に癒され不安が和らいだ。


「いつもありがとう、セリア」



 着替えを終えて玄関口に行くと、馬車が待機していた。


『いってらっしゃいませ、メリアお嬢様』


 私はお母様と使用人たちに見送られて王宮へ向けて出発する。


 いつもは目に入る素敵な景色も今日は少しぼんやりとしていた。

 

 王宮の関係者専用の入口に着くと、ノエルの姿が見えた。

 どうやら私を待っていたようだ。


「ノエル、ごきげんよう。お待たせいたしましたわ」


「メリア様、ごきげんよう。いいえ、私も先ほど来たところですわ」


 私たちは優雅に挨拶を交わす。お互い緊張しながら王宮に入っていく。


「ごきげんよう。こちらが身分証でございます」


 私とノエルは身分証を警備兵に見せる。


「メリア・アルストール様、ノエル・グロッサム様。身分証のご提示ありがとうございます。お通りくださいませ」


 警備兵に見守られながら私たちは王宮内に入り、お父様のいる執務室へ向かう。


 執務室に着きノックをする。


「どうぞ」


 エルミーナ秘書官の声が聞こえた。


「失礼します」


「メリア、おはよう。メリアの顔が見れて嬉しいよ」


 執務室に入るなり、お父様が出迎えてくれた。

 お父様はかなり疲労が溜まっている様子だ。


「お父様、おはようございます。お体が心配ですわ」


 親子の抱擁を交わしながら、私は小さな声で『ヒール』と呟いた。

 お父様の疲労感がすーっと抜けたようだ。


「メリア、これは……」

「しぃー、ですわ」


 お父様と私以外は何が起きたのか気づいてもいないようだ。

 お父様も納得してくれた。


「ああ、家にもなかなか帰られなくてすまない。後ほど説明をするので、ノエル嬢とそこへかけていてくれ」


「わかりましたわ」


 私とノエルは応接用の椅子に座って待機する。

 待っているところに、エルミーナ秘書官がお茶を出してくれた。


「ありがとうございます」


「いいえ、自己紹介がまだでございましたね。私、秘書官のシフォン・エルミーナと申します。エルミーナとお呼びください」


 ——「エルミーナ」が名前じゃなかったんだ。「シフォン」の方が可愛いのに。


「はい、エルミーナ秘書官。よろしくお願いいたします」


「ノエル・グロッサムと申します。よろしくお願いいたしましゅ、す」


 ——ノエルは相変わらずね。そこが萌えるのですが。


 挨拶が終わると、エルミーナ秘書官が前の椅子に座る。

 私たちがお茶を飲んで会話をしているとお父様がエルミーナ秘書官の隣に腰掛けた。


「待たせしてすまない。これから話す事は口外禁止だ。それを踏まえて話をする。問題ないな?」


『はい』


 お父様は「よろしい」と頷く。


「結論から言う。王国が破綻する。あと1年もつかどうかの状況だ。数年前から王国の財政が悪化して、今年に入ってさらに傾いたのだ」


 衝撃的な事実をお父様から告げられて驚いた。

 ノエルは少し青ざめた表情をしていた。


「今までは、王宮勤めの見習いを全て受け入れていた。今はそれどころではないので、基本的に見習い採用を見送っている」


 王宮勤務を採用されたのは私たち6人だけのようだ。

 後の卒業生は王宮以外または職に着けていないという状況だ。


 お父様に私の悟ったかのような表情を見るとさらに話を進める。


「メリアの思っている通りだ。メリア、ノエル、あとの4人だけが即戦力として採用された。本来なら、見習いを数十人採用して教育してあげたいところなのだが……」


 お父様は悔しそうに膝の上の両手を強く握り締めるのが見えた。

 幸せな生活を脅かす原因を早く突き止めて王国を元に戻さなければ。


「王宮に来て早々で申し訳ないが、すぐにでも我々の手伝いをお願いする」


 呑気にお茶を飲んでいる暇などないわね。


「基本的に、エルミーナ秘書官に付いて仕事をしてくれ」


『かしこまりました!』


 もう、この時点で公的な場では上司と部下だ。

 公私は区別しないといけないわ。


「エルミーナ秘書官、3年分の帳簿を見せていただけますか?」


「帳簿を見てどうすのでしょうか?」


 お金の流れを見て原因を探るのだけど、理解されていないようだ。


「お金の流れを見て原因を絞り込むのですわ」


「メリア様、そのようなことがわかるのですか?」


「ええ、私にお任せくださいませ」


「は、はい。メリア様」


 エルミーナ秘書官に案内され、帳簿が保管されている書庫へ連れて行ってもらった。


「ここは、私だけで十分ですわ。ノエルは別のお仕事をしてくださいませ」


「は、はい。わかりました」


 エルミーナ秘書官とノエルは別の仕事をするために、書庫から出ていった。


 ここから私の本領発揮よ!

 私は10倍速で3年分の帳簿を読み始めていく……。


 帳簿といっても、結構ずさんね。


 ずっと帳簿を読んでいくと、気になるところで手が止まる。

 2年前と去年と同じような箇所を探して見比べる。


 まさかこれは?


 カラクリがわかりましたわ……。

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