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巨人(9月10日 岡くるみ) ④
自室にもどって、ベッドに腰かける。心なしか、部屋まで小さくなったような気がする。もちろん、そんなわけはない。
ベッドサイドで充電しっぱなしのスマートフォンが目に入る。通知ランプが点滅している。のろのろと手にとって、ロック画面の通知をダブルタップする。姉に勝手に入れられた、アニメのキャラクターの壁紙が消えて、メッセンジャーアプリが起動する。
『おかあさん、ごめん!コバの数学、マジ無理!』
スマイルの絵文字と、『焦り顔』のスタンプ。未希からだ。
『おねがい、写させて!』
くるみはちょっと眉をしかめて、
『ごめんね、まだやってない』
──と、打ち込みかけて、手を止めた。
『いいよ。でもいま出かけてるの。あとで写真送る!』
それから、ため息ひとつ。深く。




