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へんな子たち  作者: 楠羽毛
人魚族
37/103

人魚族(9月8日 伊藤明日香) ⑤

 理由も、正体もわからない。

 ただ、見つけてしまった。それだけだ。



 夜中──、


 こうこうと、街灯がいとうが路面をさして、スポットライトのように校門のまえを照らしている。

 りょうは、きょろきょろとあたりを見回しながら──、誰もいない道を、とぼとぼと歩いていた。センターに英字が入った白いTシャツに、膝までの茶色いステテコ。ほとんど寝たまま、という格好で。

 校門から少し離れた、塀のそばに、ひとかげ。背の低い、色白の少年。えりのあるシャツをはおって、ジーンズにスニーカー。シャツには皺ひとつなくて、まるで出掛けにアイロンをかけてきたような。

「なんで手ぶらなのさ!」

 色白の少年、──たかしは、右手にさげていた細い懐中電灯を見せびらかすように回して、唇をとがらせた。

「夜に抜け出してくるだけで大変だったんだからさ……、」

 りょうは眉をしかめて、もごもごと言い返した。まったく、良識というものがない。

「そんなの! 大発見なんだぞ。もし見つけたら……、」

 かちかち、と落ち着かなげに懐中電灯のスイッチをいじりながら、たかしは早口で言いつのる。少しずつ高くなる声で。

「もし、ったって──」

 ……いるわけないだろ、プールに巨大魚なんか。そう言いかけて、ぐいと近くなったたかしの顔に気圧されて黙る。

「見た奴がいるのさ! タカノリの友達だかなんだか──、」

「タカノリ? ずっと行方不明じゃんか。そんな前の話なの?」

「いや、また聞きだから……そいつが魚を見たのは最近らしいんだけど。でもね、なんとなく時期が符合するんだ。ちょうどタカノリが消えたころに、プールに水が張られて──」

「そんないい加減な話! だいたい、授業もあるし、水泳部だってずっと使ってるんだぞ」

 言いながら、なんとなく、あたりを見回す。たかしがふり回している懐中電灯の光が、あちこちに飛んでいる。さすがにこの時間、学校には誰もいないだろうが、近所の人に見とがめられたら面倒だ。

 ふと、一瞬だけ、光の筋がプールを横切る。


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