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へんな子たち  作者: 楠羽毛
人魚族
34/103

人魚族(9月8日 伊藤明日香) ②

「……うみねこ、」

「え?」

「いや、なんだろう……猫?」

「なあにが! ……ァ、」

 少女は汗ばんだりょうの肩にぐっと手をあてて、……背伸びをした。

「きこえた?」

「ぜんぜん!……ねえ、」

 そういって、少女が、ぴっと指をさした先……、


 プールサイドに、だれかの顔がみえる。

 塀とフェンスにさえぎられて、見上げても首筋から上しか目に入らない。水着ではないようだ。白いえりが見える。たぶん、少女とおなじ、夏の制服。

「あれ、……」

伊藤いとうさん、」

 ふいと、滑り出すように、りょうの口から。

「はぁん?」

 すっとんきょうな声をあげて、少女がもう一段、背伸びをする。ぐぐっとりょうの肩に体重をかけて、首をのばす。……と、「あッ、」声をあげて、がたっと崩れる。

 ぺたんと、暑いアスファルトに二人して尻もちをつく。少女はすぐ立ちあがって、ぽんぽんとスカートの後ろをはたいた。

「……目が、あっちゃった」

 なんでもないようにそう言って、座ったままのりょうに手をさしだす。りょうも、すぐ立ちあがる。別に、腰がぬけたわけではない。

 ただ、


(……目が、)


 まあるく、黒目のやけに大きい、まるでまぶたが無いような。

 あんな、目だっただろうか。……伊藤いとうさんは。

「ね、……あんまり、近づかないほうが、いいよ」

「え? どうして」

「べつに!」

 少女は目をそらしてそう言って、それから、

「行こ、」

 と、早足で歩きだした。

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