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へんな子たち  作者: 楠羽毛
台風の魔女
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台風の魔女(7月10日 吉田美緒) ④

 まぶたが開く。

 ざあざあと、雨戸あまどのあいたすきまから振り込む雨粒で、机が濡れている。ずれてしまった眼鏡をきゅっと戻して、立ち上がる。

 腕に力をこめて、雨戸あまどを閉める。ボンヤリしていた頭が、すっとめる。

 床も、濡れている。かろうじて、ベッドは無事。ちょっと眉をひそめて、それから、

「おかあさーん、タオル……、」

 ちいさな声でさけびながら、階下へ。


 べっしょりと濡れてしまった、古い落書きノートを、とじて。



 翌朝は、からりと晴れていた。

 美緒みおは、いつものように白いスニーカーをはいて、玄関をでた。夏の強い日差しが、首筋をさしてぎりぎりと痛む。嵐は、もうかけらも残っていない。

 いや。

 台風のあとの、独特の匂いだけが、あたりに満ちている。

「……おはよう!」

 ぽん、と肩を叩かれる。

 後ろから、ちょこまかとした早足で、背の低い、どこかで見たような顔の少女が、追いついてきている。

「ゆうべは、お楽しみでしたね?」

 追い越しざま、にんまりと笑いのこもった声で、そう言われて。

「え、」

 美緒みおが立ち止まって聞き返そうとしたときには、もう、十歩も先へ。


 赤い髪留かみどめのついた少女の後ろ姿を、ぼんやりと眺めるしかなかった。


(台風の魔女 了)

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