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へんな子たち  作者: 楠羽毛
台風の魔女
21/103

台風の魔女(7月10日 吉田美緒) ③

 飛ぶ。

 飛ぶ。

 飛ぶ!


(ひさしぶり!)


 風の精霊が、声をかけてくる。ボンヤリした記憶が、少しずつよみがえってくる。これが初めてではない。そんなふうに、思う。

 空を蹴る。さらに高く跳ぶ。星が真下に見える。上には闇。

 風と、雷鳴らいめいと、嵐!

 肺に、空気にまぎれていなづまのかけらが入って来る。

 ばちばちと、静電気がはじけて、皮膚にへばりつく。


 まわりは、精霊だらけ。


 氷の精が、かすかなひょうのつぶになって浮いている。

 暖気と、低気圧の精が、ぐるぐると回転しながら頬をかすめていく。

 街が見える。

 学校。住宅地。海岸ぞいの国道。

 人が歩くのが、みえる。こんな台風の日なのに。


 とん、と風を蹴る。


 しゅん、と首をのばして、耳元でささやく。「あぶないですよ!」びくんと震えるのを見て、くすくすと笑う。

 また、飛ぶ。


 学校をめがけて、ふわりと降りる。誰もいない校庭。まっくら。いや、職員室にはまだ、あかりがついている。

 ぼつんと、地面になにかがにじむ。

 雨だ。雨粒がからだをすり抜けて、落ちていく。風にあおられて斜めに、吹き付けるように、地面ではじけて波紋はもんを。すぐに水たまりができて、その上を跳ねるように雨粒が、落ちて、また落ちて、嵐のなかを滑っていく。


 雨──、

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