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台風の魔女(7月10日 吉田美緒) ③
飛ぶ。
飛ぶ。
飛ぶ!
(ひさしぶり!)
風の精霊が、声をかけてくる。ボンヤリした記憶が、少しずつよみがえってくる。これが初めてではない。そんなふうに、思う。
空を蹴る。さらに高く跳ぶ。星が真下に見える。上には闇。
風と、雷鳴と、嵐!
肺に、空気にまぎれていなづまのかけらが入って来る。
ばちばちと、静電気がはじけて、皮膚にへばりつく。
まわりは、精霊だらけ。
氷の精が、かすかな雹のつぶになって浮いている。
暖気と、低気圧の精が、ぐるぐると回転しながら頬をかすめていく。
街が見える。
学校。住宅地。海岸ぞいの国道。
人が歩くのが、みえる。こんな台風の日なのに。
とん、と風を蹴る。
しゅん、と首をのばして、耳元でささやく。「あぶないですよ!」びくんと震えるのを見て、くすくすと笑う。
また、飛ぶ。
学校をめがけて、ふわりと降りる。誰もいない校庭。まっくら。いや、職員室にはまだ、あかりがついている。
ぼつんと、地面になにかがにじむ。
雨だ。雨粒がからだをすり抜けて、落ちていく。風にあおられて斜めに、吹き付けるように、地面ではじけて波紋を。すぐに水たまりができて、その上を跳ねるように雨粒が、落ちて、また落ちて、嵐のなかを滑っていく。
雨──、




