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VRMMO「Malice」―銀髪少女の悪意  作者: Hon_S
第三章:目覚め
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第34話:強さ

きる郎とフレイムがやろうとしていたこと。それは、俺に黒龍から得られる経験値を与えることだった。


システム上でグループとしてパーティを組むと、経験値がレベルに応じて振り分けられるが、今回俺たちはグループを組んでいない。


そうすると、倒したモンスターへ与えたダメージをもとに経験値が配分される。


今回、きる郎は黒龍の心臓を露出させるために『ルミナス・ブレード』で肉を抉り出したが、黒龍に与えるダメージとしては大したものではない。せいぜいHPの10%程度だろう。


残りの90%は、俺がクリティカルヒットで全て削ったことになり、経験値はほぼ俺に入ってきた。


70lv以上のキャラクターが30人以上で連合を組んでやっと倒すようなモンスターなのだ。24lvの俺がほぼ1人で倒したとなれば、41lvまで上昇してもおかしくはない。


持つべきものは廃人の友だな。


「これは、壮観だね。ジュン。いくつまで上がった?」

「41だ。まさかここまでとはね」


よし!とガッツポーズを決めるきる郎。フレイムもその横でにやりとしている。


さて、こうなってくると話は全く違ってくる。


3日後のコロッセウムまでにせいぜい50lvぐらいまで上がればいいと思っていたが、この調子であれば、あと2日で80lvは固いだろう。70,80lvになれば、使い物になるユニークスキルもそれぞれ手に入る。


ユウジとの決勝でも、本来の力を発揮するところまではいかずとも無様な戦いをさらすことはなくなった。なんなら、うまく試合が運べれば勝つことだってできるかもしれない。


しかし待て。今はコロッセウム3日前の水曜日夜10時だ。


彼らの協力があることを前提に80lvまでは固いといったが、さすがに彼らもリアルでの生活がある。平日の真昼間から一日中俺のレベル上げに狩りだすわけにはいかなかったな……。


平日の夜のこの時間なら大丈夫だろうか。お願いだけはしてみよう。


「みんな、ありがとう。おかげでこんなにレベルを上げることができたよ」

「ええよ。まだまだ狩るやろ?」

「ああ。ただ、明日以降に影響が出ない範囲でやろう」

「ま、俺は明日と金曜は休みとっとるけどな」


実は僕も、私もよ、実は私も、とメンバー全員が同じように続く。

何だこの偶然は。


「まぁ、コロッセウムの前だしね。今朝ジュンから連絡があった時に何があってもいいように休みを取っておいたんだよ」

「私も同じかな。女の勘ってやつね」


お前ら……なんて出来るやつなんだ。


「ということでや。今日からコロッセウム直前まで、ジュンには黒龍の谷のダンジョンの黒龍を隅々まで倒してもらうで。クリティカルヒットでな」

「ああ、まかせろ。限界までやろう!!」


----------


そこからは、久々に『まりす主義』の連中との狩りを楽しんだ。


さっきと同じ要領で、きる郎が黒龍の心臓を露出させ俺がクリティカルヒットで倒す。ほかのメンバーは、ほかのエリアから黒龍を見つけ、せっせと俺ときる郎のもとに連れてくる。


時にイリスが『クォーク・ブラスト』を食らって消失しそうになる場面もあったが、リエが『アブソリュート・プロテクション』でフォローをしていた。


しばらく協力して何かをするということからは離れていたが、やっぱりVRMMOの醍醐味は気の合う仲間との協力プレイだな。


そうしているうちに夜は更けて、朝になる。黒龍狩りに没頭していた俺たちは、時間の経過に全くもって気が付かなかった。


結果、俺のレベルは72レベルになっていた。


ユニークスキルとして、50レベルの時に大鎌でのダメージ20%増、60レベルの時に防御無視20%と、なかなかのスキルが手に入った。


そして、70レベルになって手に入ったのは、俺の代名詞とも言える技『プロムナード』だった。数百本もの大鎌を空中に召喚し、自在に操ることができる。


コロッセウムの準決勝では、召喚した大鎌を自分中心に球型に展開し、かまいたちのように周囲の全てを切り裂く大鎌の嵐を発生させる。


コロッセウムのようなバトルエリアが限られているマップでは、自分の周囲に展開した『プロムナード』の範囲を徐々に広げていくことで逃げようのない刃物の壁を押し付けることできる。


かつてこの技を躱したのは、きる郎とユウジだけだ。当然、この技だけでアイツに勝てるとは思っていないが、1つかつての強力な力が取り戻せた。それだけで自分にとっての自信になる。


さて、朝まで狩り続けたことで、流石にダンジョン内の黒龍も全て倒したようだ。


幸いなことに、レベル上げの結果70lvを超えることができたので、ダンジョンへの再入場の権利は得ることができている。黒龍の巣に飛びこんで大穴を掘ってここまでくるというトリッキーな手を使わなくても、大手を振ってボスを倒して再入場することができるということだ。


ギルドの連中には感謝だ。


「みんな、お疲れ。今回の周回では黒龍は全て倒しきったみたいだな」

「そうだね。あとはボスを残すのみだよ。ジュンも70になったし、普通にボス戦に参加できるね」

「まさかここまで早くレベルを戻すことができるなんて思わなかったよ。本当にみんなありがとう」


アンタがそんな素直に礼を言うなんて気持ち悪いわね。ま、ありがたく受け取っておくわ、とリエ。気持ち悪くて悪かったな。


「さて、ボスまで倒して、もう一周いこうか!!」


きる郎のかけ号に全員が呼応する。


「おう!やったるで」

「まぁ、久しぶりに5人でグループ組むのも悪くないわね」

「夜から朝までぶっ続け。久々すぎて頭がとろけそうです~」


表面上は何も共通点がないようで、足並みが揃うこの5人。現実世界で何やっているかなんて聞いたことはないが、素晴らしい友人はどこで知り合ったか、どのくらい一緒にいるのかなんて関係ないな、と思う。


<Malice Online>が続く限り、こいつらと一緒にこの世界を楽しんでいたい。


そして、この世界を守るため、俺は強くなる。


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