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抽選会

 太陽が昇り、窓から陽の光が差し込んでくる。

 夜が明けた。

 あー……、すっごく眠い。

 結局なかなか寝付けなかったからなぁ。

 俺が試合に出るわけじゃないのに、なんで緊張してるんだろう。

 ……まぁいっか。

 二度寝って気分じゃないし、もう起きよう。

 俺はフラフラとリビングへ向かった。

 まだ朝早い時間にも関わらず、リビングにはドラゴンの四人がいた。

 みんなちょっと眠そうな顔をしている。

 どうやら俺と同じみたいだ。

「おはよう、みんな。

 緊張してるみたいだね。

 俺も試合に出るわけじゃないのに緊張して眠れなかったよ、あはは」

「竜族を代表してやる以上負けられないっす……。

 そう思ったら、どんどん緊張してきたっすよ……。

 はは……、コンディション最悪っす。

 今日試合なくてよかったっすよ」

「竜族とか関係なくても、女神様のチームに敗北は許されないっすからね。

 無様な姿は見せられないっす!」

「私は……、両親が試合を見に来るって言ってるんです。

 うちの父は勝負事にとてもこだわる人でして、とてつもなく怖いんです……。

 もし父の目の前で負けたりしたらと思うと……、ガクブル」

 ロナの父親は、バハムートさんとこの有事の際の特攻隊長らしい。

 若いドラゴンたちからはすごく恐れられていると聞いたことがある。

「隊長が父ちゃんってのはホント同情するっす」

「ホントホント、俺なら耐えられないっすね」

「あーやだやだ……、見に来るの母さんだけならいいのに……」

 失敗が許されないどころか、活躍が義務付けられている授業参観みたいなものだろうか。

 大変だなぁ、ロナも。

「ボクもドキドキが止まらないのだ……。

 悪戯がバレて、父ちゃんに謝りに行く時よりも緊張するのだ……」

「ちょっとわかりにくいけど、すごく緊張してるってことはなんとなくわかったよ。

 今日は抽選会だけでほんと助かったね。

 この状態で試合ってなってたら、勝ち負けはともかく、楽しめないで終わっちゃうかもだからね」

「確かに、こんな状態じゃ楽しめないかもなのだ」

「まぁ、時間が経てば落ち着いてくると思うよ。

 美味しいご飯を食べて体を動かせば、きっと大丈夫!」

「そうなんすかね……」

「父さんが怪我して来れなくなりますように、父さんが怪我して来れなくなりますように、父さんが怪我して来れなくなりますように……」

 重症だなぁ……、とくにロナが……。

「あれ?おはよー。

 みんな起きるの早いねー」

 薫子さんが起きてきた。

 もうそんな時間か。

「おはよう薫子さん。

 ちょっと緊張しちゃって、早く目が覚めちゃったんだよ。

 意外なことに、この四人も」

「え?

 今日は抽選だけで試合ないのに?」

「うん、いよいよ始まるんだなーって思ったら、ちょっとね」

「そっかー。

 じゃあみんなで畑の世話でもしに行こうよ!

 じっとしてるより、何かしてるほうがいいよ!」

「確かにそうだね。

 みんな行こっか」

 俺たちは朝ごはんができるまで畑仕事をいていたが、ドラゴンの四人の緊張はほぐれなかった。

 もうしばらくはこの状態かなーって思ってたら、朝ごはんを食べると元気になった。

 うん……、そうだよね……。

 君たちはそういう連中だったよね……。

 ま、緊張がとれたのならいっか。

 食事をとって身支度を終え、俺たちはケモッセオに向かった。

 いつものように百段の背に乗って、少しの空の旅を楽しむ。

 今日はなんだか、ケモッセオに着くまでの時間が少し早く感じた。


「みなさん、お待ちしておりました」

 スタジアムの大会議室に着くと、大会の運営スタッフに迎えられた。

 運営スタッフは冒険者ギルドと商人ギルドから出向してもらう形で人をお借りした。

 どちらのギルドも普段からとても忙しそうなのに、けっこうな数の人手をお借りしてほんと申し訳ないです。

 後でお礼をさせてもらうので、大会期間中はよろしくお願いしますです。

「早速ですが、今日の流れをお伝えします」

 猫耳でインテリっぽい眼鏡をかけた利発そうなお姉さんが、俺たちの到着早々そう言った。

 このお姉さんの名前はエリーゼといって、商人ギルドマスターであるアキナさんの秘書をやっている人だ。

 この人なくして商人ギルドは成り立たないとまで言われている、非常に優秀な人だ。

「今日より黒猫杯が開催となりますが、開催のセレモニー等はいたしません。

 これはジズー様のご意向ですね。

 なので、お客様にお見せするようなものは何もございませんので、スタジアムは開放いたしません。

 次に抽選ですが、参加チームが子供の部十一チーム、大人の部六十一チームをスタジアムのピッチに集めて行います。

 組み合わせが決まりましたら、確定したトーナメント表を各チームに配布して本日は終わりとなります。

 大人の部は、明日以降順次街の中のグラウンドで試合を行っていきまして、ベスト十六からスタジアムで試合をします。

 子供の部は最初からスタジアムで試合を行います」

 エリーゼさんがパタンと手帳を閉じて一息つく。

「何かご質問などございますか?」

「いえ、大丈夫です。

 どうもありがとうございます」

「そうですか。

 では、抽選は十時からになります。

 十分前にはピッチにいるようにして下さい」

「わかりました」

「それでは失礼致します」

 エリーゼさんは軽く会釈をして部屋を出ていった。

「そうだ、みんな。

 すっごい今更なんだけどさ、キャプテンを決め忘れてたから今決めちゃおう」

「キャプテンって何すか?」

「あー、えーっとね、リーダーのようなもの?かな。

 チームの代表みたいなもんと思ってくれればいいと思う。

 とは言っても、実質すでに決まってるような気もするけどね」

「そうですね、フランさんがすでにキャプテンのような感じですよね」

 ロナの言葉にみんなが頷く。

「え、あっしなの?」

「え、自覚ないの?」

 さすが皇帝ベッケンバウアーの生まれ変わり(俺の勝手な妄想)、無意識にキャプテンシーを発揮してたのか。

「こういうのは無理やり押し付けるようなものじゃないから、嫌なら断ってくれていいよ。

 どうする?」

「まぁ、あっしでいいなら別にかまわないし」

 というわけで、フランが正式にキャプテンとなった。

「よし!

 じゃあ~……、抽選の時間まであと一時間もないから、ここで適当に待ってよっか」

「「「「はーい!」」」」

 というわけで、抽選まで会議室で適当に時間を潰した。


 午前九時四十五分。

 少し早いが俺たちはピッチに向かった。

 ピッチにはすでにたくさんの人がいた。

 運営スタッフの人が、チームごとに縦一列に並ぶように叫んでいる。

 しかし参加者の大半が冒険者で、冒険者は素直に人の言うことを聞く者は少ない。

 スタッフがどんなに声を張り上げても、ちっとも並ばない。

 しかしそんなこともあろうかと、運営側もちゃんと対策を打ってある。

 スタッフがドラゴンを呼んできた。

 って、あのドラゴン、バハムートさんじゃん!

「おい、お前たち。

 スタッフの方々が並ぶよう言っているのが聞こえんのか?」

 突如発せられる圧倒的威圧感に、ピッチは静まり返った。

 体が震え、腰を抜かし、立ってられない者が続出。

 みんななんとか一列に並んだ。

「なんで父ちゃんがいるのだ?」

 バハムルはバハムートさんが来てることを知らなかったようだ。

「バハムートさんは審判長なんだよ。

 みんなにルールを守らせるには絶対的な審判が必要だからね」

「そっか!

 父ちゃんに見てもらえるんだな!」

 バハムルは嬉しそうだ。

「マジか……、バハムート様まで来るなんて……」

 クリスとレオとロナの三人は表情が固い。

 バハムートさんの登場で、とても静かな抽選会が始まった。

 静かすぎて、歯がカチカチなってる音まで聞こえてくる。

 フランたち以外の参加者にとっては命がけの抽選会なのかもしれない。

 バハムートさん、すごく優しい人なんだけどなぁ。

 みんな指示にも素直に、しかも迅速に従うので、あっという間に抽選は終わった。

 組み合わせが決まり各チームトーナメント表を受け取ると、今日の抽選会は解散となった。

 第一回黒猫杯の抽選会は、盛り上がるどころか、お通夜のような静けさで終わったのだった。

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信長の秘書

別作品の投稿を始めました。
今は仕事が忙しくて書けてませんが、しばらくはストックを投稿していこうと思います。
よろしければ、そちらもお読み頂ければ幸いです。

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