本気を出した
シリルが本気を出した。
アルベルクが来てから、とりあえずお茶がもういっぱい必要かなと思って持ってきた私は、みなぎるやる気という名の何かが放出されているのを目撃できそうなくらいに頑張っているシリルに遭遇した。
さっきまで水切れしてへにょんとなった草花のようにやる気のなかったシリル。
だが今はどうだろう。
次々とその書類が隣に流れるように進み、はっきり言って中身を読まずに判子を押しているのではないかと疑惑を持つレベルである。
普通ならばまじめにやっていないと思うところだけれど、このシリルなので私は、
「シリル様は凄いですね。でもなんでこんなにやる気を出したんでしょう。アルベルク様、何か魔法をお使いに?」
「まあな。一番、シリルにはよく効く魔法だ」
何やら楽しそうに笑うアルベルクを見つつ、シリルがやる気を出してくれるのならいいだろうと私は深く考えずにいた。
そこでバタンと部屋の扉が開かれて、
「アルベルク、何をもたもたしているの!」
勝手知ったるこの屋敷というかのようにやってきたカタリーナ。
本日は赤いドレスに黒のレースがアクセントの華やかなドレスを着ている。
だがやっぱりこの人は元の素材がいいのでドレスが添え物だなと私が思っていると、そんなカタリーナにアルベルクがタジタジしながら、
「カタリーナ、いや、今フルールにお茶をもらう所で」
「あら、いいわね。フルール、私にもお茶をもらえるかしら」
「はい、少々お待ちください」
そう答えて私は慌てて新しいカップとケーキを取りに行ったのだった。
フルールがいなくなったのを見計らってからアルベルクがカタリーナに切り出した。
「今度の別荘行きだが、フルールとシリルも連れて行っても構わないか?」
「いいわよ」
カタリーナは即答だった。
次になるほどとシリルの様子を見て頷き、
「どうりでシリルがやる気を出しているわけね」
「悪い? 僕とフルールは相変わらずな関係のままで恋人同士というこう、もっとイチャイチャな展開が全然ないんだ」
「あら、私もあるベルクト一緒にそんなふうな時間を全然過ごせて無いわ。この前のことも含めて」
「全く迷惑なことをしてくれたよ」
「ふふん、でもこれで私はアルベルクと二人で楽しむの。ああ、シリル達も招待するけれど……それはいつごろまでに終わりそう?」
「終わらせろと言ったら今日中に終わらせてみせる」
そんなことを血走った目で言い出したシリルに、カタリーナは微笑みながら、
「じゃあ出発は明日で構わないわね」
「カタリーナ、でもそうすると僕、限界近くまでいかないといけないんだけれど」
「別荘に行く間、フルールに膝枕してもらって眠れば?」
「それだ! そうしよう、頑張る!」
シリルがそう叫んだ更に書類の処理能力を加速させた。
そこでフルールが部屋に戻ってきたのでフルールにアルベルクが説明をして、そこでフルールがアルベルクとカタリーナに、
「では明日までに旅行の準備と、チビ竜達も連れて行っていいですか?」
「いいわよ」
カタリーナの一言でそれは決まったのだった。




