4 大丈夫じゃない大丈夫
第二山岳線はエルザブリュックの〈機関区〉に属する線路だ。
〈機関区〉とは、おおざっぱに言うと、都市が直接管理している路線のことだ。都市と他の場所を、おおむね鉱山や農園、それに他の都市などを結んでいる事が多い。第二山岳線が結んでいるのは、エルザブリュックと山奥の鉱山町〈フェルナ・ブルッハイ〉との間だ。
この地方は鉱山が多いが、土地は山がちで平野が少ない。せっかく鉱石を掘り出しても、積んでおける広い土地は少なく、金属に加工したくても、大きな精錬工場は建てにくい。
そこでエルザブリュックの出番となる。街は平野のど真ん中にあって、大きな河にも恵まれていた。広く平らな土地があれば、工場も鉱石置き場も確保できる。大きな河には港もあるから、鉱石を船で運ぶのにも便利だ。いつしかエルザブリュックは、この地方の鉱工業の中心になっていた。
そんなエルザブリュックにとって、鉱山町をつなぐ線路はまさしく生命線と言ってよい。フェルナ・ブルッハイとの間にも、第二山岳線を含めて四本の路線が通っている。
その中でも第二山岳線は足の遅い、重い貨物列車のために敷かれた線路だ。
さながら大蛇のように曲がりくねっていて、その総延長は八十キロメートルにもなる。カーブだらけなのは、線路の傾きを減らすためだ。フェルナ・ブルッハイは高い土地にある町なので、直線で線路を通すと、恐ろしいほど急な坂となる。右に左にと線路を傾けることで、坂を緩やかにして通りやすくしているわけだ。
白茶けた荒れ地を、二列のレールが何度も横切る景色は、子供の落書きのようにも見えそれでいて、そのスケールに圧倒される眺めでもある。
しかし残念なことに、今は夜だ。壮大な荒野の白い岩や砂も、もちろん鉄色のレールすら、夜の暗さに沈んでいる。
その真っ暗な中を、線路に合わせて向きを変えながら、黄色い光が猛スピードで走り抜けていく。リンテの愛車パオロ号の後照灯、後ろ向きに付いた電気ランプの光だ。
テア号とパオロ号、二台は連結して走っている。
二台以上の機関車が連結する走り方を、鉄道言葉では重連という。協力して重い荷物を運ぶ時などによく使われる走り方だ。重連にはピッタリと息が合ったチームワークが欠かせない。加減速やブレーキのタイミングが合わないと、協力どころか、かえって足を引っ張ってしまう。
さいわい、二人にそんな心配は無用だった。フランツもリンテも、お互い生まれた時からの付き合いだ。同じ師匠に弟子入りしたこともあって、操作のタイミングは常にピッタリと合っていた。
ただし、それは常に仲良しであるという事ではない。
『目が腐って、ボロって取れちゃいそうなんですけどぉ? ……っておい、ラッツ聞いてんの? おーい』
小さなスピーカーが不満そうにうめく。もう十分近くも、テア号の運転席にはリンテのぶすくれた声が流れ続けていた。
フランツはうんざりした表情で頭を振ると、やる気のない手つきでマイクを掴んだ。
「聞こえてるって……リン。頼むから、もうちょっと声落としてよ」
『……っんがぁぁっ! なにさ、あたしが回折鏡の見すぎで頭痛いってのに! ラッツはいいよね、前でさ、前見なくていいもんね!』
スピーカーがあまりの剣幕にガクガクと震える。
フランツはすっかりあきらめて、無言で耳を塞いだ。
本当は無線機を切りたい気持ちだったが、後が恐ろしいのでそれはできなかった。怒り心頭のリンテに噛みつかれるのは、例え抜きでごめんだ。
リンテがこうも怒っている理由は、主に二台の位置関係と走る方向にあった。
現在、テア号とパオロ号は、後ろに向かって走行中だ。連結の向きは機関庫を出てから変わっていないので、今はパオロ号が先を走る格好になっている。
機関車の動力は前進でも後進でも特に違いはない。だから後ろ向きであっても、速度や牽引力には、何の問題もないわけだ。
問題なのは、視界だ。
前にも言ったように運転席はとても狭い。シートを回転させたり、ふり返ったりするのはむずかしい。
こういう場合は、回折鏡という道具が使われる。回折鏡は鏡やプリズムを使って光を曲げる、一種の望遠鏡だ。これを使えば、機関車の各面に開いたのぞき窓からの視界を、運転席に座ったままで得る事ができる。死角の大きな機関車には必須の装備だ。
とはいっても……
『こっちは三十分も覗きっぱなしなんですけど!? 体は後ろで目だけ前とか、頭おかしくなるし! 車酔い確定だし!』
と、リンテが言うように、回折鏡に頼った運転はかなり辛いものだ。
特に後ろを見る場合は最悪だ。目と体では、カーブや加速の感じ方が正反対になる。車酔いなんて楽な方で、ひどい時には何日もフラフラになる事もある。
「……仕方ないよ。だってこんなに暗いんだから、石を踏んだら大変だよ」
少しでもリンテの機嫌を取るべく、フランツは努めてやわらかく答えた。
周囲が真っ暗闇なので、今は彼女の目だけが頼りだ。山を走る線路には、正直どこに石が転がっていても不思議はない。小石なら問題はないが、大きな岩にぶつかれば事故必至だ。
ただでさえ事故処理に向かっていて速度が落とせないのに、この上さらに事故を起こしたら目も当てられない。
さらに、二台が後ろ向きに走るのにも理由がある。第二山岳線の路線上には、向きを変えられる場所がないのだ。
転車台はともかくとして、三叉線路という、向きを変えるための簡単な線路すらない。路線が山奥で、平らな場所が確保できないためだ。むしろ有人信号所が多い分だけ、他よりマシですらあった。
つまり向きを変えられない以上は、最初から後ろ向きで走るしかない。
『だからってさぁ、ずっと見てなくてもいいじゃん。少しぐらいサボったって……』
「それで事故を起こして、僕とリンでみんなに頭下げるの? そりゃ、頭下げるくらいならいいけど、お金払えって言われたら手も足も出ないよ?」
『うむぐぅぅ……意地悪なラッツ! もう知らない!』
可愛い舌打ちを最後に、リンテの方からぶつんと無線が切られてしまった。
「しま……やっちゃったかなぁ」
顔に手を当ててフランツは呻った。
自分が理詰めでしゃべる人間であることを、フランツは自覚していた。そしてリンテがそれを嫌がる事も知っていた。彼としてはなだめたつもりだったが、結果的にリンテの機嫌を思いっきり損ねたらしい。
(とにかく、謝るべきだよね……)
リンテを呼び出そうと、フランツが無線機に触れる。
その直後、カタカタから、コトンゴトンへと、車輪が線路を噛む音が変わった。
「あ、いけない」
あわてて左側の窓にきゅっと体を寄せて、フランツは外の様子をうかがった。赤い光が後ろ、進行方向から現れたかと思うと、あっという間に前に向かって流れていく。
「信号機確認、二号付属信号所を通過」
付属信号所というのは、信号手がいない無人の信号のことだ。
第二山岳線には二号から六号まで、人のいる信号場が五つある。しかし総延長八十キロメートルの線路に五つでは少々不便なので、その間に無人信号があるわけだ。
信号の操作はそれぞれの有人信号場がやっている。二号付属なら、操作は二号信号場の受け持ちになる。
フランツは運転席の室内ランプを灯して、計画書の一枚にペンで書き込みを入れた。目をやれば、計器腕板の時計は七時五分を指している。
「うん……ペースもいいかな、管理局に連絡だ」
管理局、正式には〈氏族路線管理院地方局〉という長ったらしい名前を持つが、とにかく管理局への通過連絡は、機関士の必ずやるべき事の一つだ。
位置と時間をはっきりしておかないと、管理局がこちらを見失ってしまうからだ。
ちなみに、トゥルモというのは〈塔〉のことだ。正式な名前が長すぎるので、あだ名としてつけられたものだが、今では鉄道業界で広く使われている。なぜ塔かというと、どの駅でもたいてい、管理局は最も高い建物に陣取っているからだ。
つまり一種の皮肉であった。
ともかく、フランツは連絡のためにマイクに手を伸ばす。
すると突然、無線機が呼び出し音をツーツーと鳴らし始めた。
(まだしてないのに?)
フランツは何となくいやな予感をおぼえたが、とにかく呼び出しに応えて無線機を操作する。
『――631聞こえますか!? 631応答願います!』
間髪入れずに、なぜか必死な様子の声が飛び込んできた。よほど焦っているのか、若い女性と思われる管制官は、発信元の名前を言い忘れている。
フランツは急いでマイクを取った。
「こちら631、感明良好。そちらは?」
『あぁ、よかった…………あ、いえ失礼しました、こちらはEBK管理局です。631、現在位置を報告してください』
「現在、二号付属を通過した所です。管理局、何か問題でも?」
『了解631。緊急連絡です。注意して聞いてください』
管制官がいったん言葉を切った。
フランツがスピーカーの音量を引き上げると、管制官のうわずった声が再び運転席に響く。
『三号信号場が、貨車の強制停車に失敗しました。631繰り返します、貨車は停車していません。現在も第二山岳線、上り方面の線路を暴走しています』
「それは」フランツは思わず声をもらす「ちょっと、大変な……」
『貨車の詳しい場所は不明です。ですので…………あ、今入ってきました、ちょっとお待ちください』
ガサッと音がして、オペレータの声が途切れた。しかしマイクを切り忘れたらしく、スピーカーからは向こうの音が小さく聞こえてくる。
誰かの足音、書類を置くドサッという音、それに「ええっ?」とか「そんなの無茶です!」という何人かの声が聞こえてきた。
(これって、けっこうマズいんじゃないか?)
フランツはスピーカーの向こうに耳を傾けながら、電鍵を叩いてリンテを呼ぶ。
『……なに?』
不機嫌きわまりない様子のリンテ。後ろに聞こえるコツコツというのは、おそらく計器腕板か何かを指で叩いているのだろう。
「リン、さっきはごめん。でも、ちょっと管理局の様子が変なんだ。一緒に聞いてくれないか?」
一秒ほどリンテが黙る。やがて大きなため息と共に、無線機を操作するカチカチという音が聞こえた。
『…………わかった。合わせるからちょっと待って』
機関士らしく落ちついたリンテの声に、フランツはほっと胸をなで下ろした。
「うん。助かるよ」
彼がそう返した直後、管理局との無線が鳴る。
『こちらEBK管理局、631聞こえますか?』
「管理局、こちら631です。二号車からも無線をつなぎますが、よろしいですか?」
『はい大丈夫です。631、その、お待たせしてすみません……その、まことに申し訳ありませんが……』
なんとも歯切れの悪い管制官の声に、フランツは思わず眉根にシワを寄せた。
(何だろう? まさか路線からの退避命令とか?
「今日の仕事は無かった事にしてくれ」とか「悪いけど戻ってきてくれ」とか?
それなら別に問題ないんだけどな。だって仕方ないし。
まぁ、タダ働きになるのは嫌だけど)
ところが、やっと続いた管制官の言葉は、フランツの考えとはまったく正反対の内容を伝えてくる。
『631各車には……その……引き続いて、貨車の強制停止作業をお願いします。暴走中の貨車を発見し、機関車で止めてください』
「はい!?」と思わず叫んで、目を丸くするフランツ。
『あにそれ!?』と無線機越しの大声はリンテだ。
『本当に……申し訳ありません』と言う、若い管制官の声が苦しそうだ。
フランツはマイクを口に寄せる。
「ちょっと待ってください管理局! いきなり強制停車作業なんて納得できません! この先には……そう、二号信号場があるでしょう? 安全停車器とか、もしくは側線で止めるとか、そういう対策は無いんですか?」
『実はその……二号信号場の安全停車器は壊れていて使えない、と連絡があって……しかも側線には現在、待避した機関車がいて、無理やり側線側に入れる方法も難しいと……時間もありませんし……このまま第一線を支障させるわけには……』
『だからって……いくら何でも無茶じゃん!』
声を荒げるリンテに、管制官が泣きそうな声で答える。
『ですから、あの……実は管理局は反対したんです。……でも〈保安隊〉が、民間の事故には車両も人員も貸さないと……』
『保 安 隊!! またあいつら!?』
とうとう頭に来たのか、リンテがスピーカーを震わせて叫んだ。
「…………そういうことでしたか」
フランツはぐったりと頭を抱えて、ギリッと歯を噛む。
(いつもの事とはいえ、〈保安隊〉め……)
〈保安隊〉とは〈氏族鉄道保安部隊〉という、これまた長い名前を持つ組織の略称だ。
彼らは鉄道の、ひいては都市や市民の安全を守るための組織なのだが、とにかく仕事をしないことで有名だった。自分たちの本懐は武力による治安維持だと公言してはばからない、筋金入りの脳筋集団だ。
そんな保安隊に、フランツたちが苦い思いをさせられたのは一度や二度ではない。事故処理に役立つ装備をもっているのに、彼らは常に素知らぬ顔で協力を拒む。
『と、とにかく631、現時点をもって、そちらの計画書は白紙になります。ここからは処理が終わるまで、そちらを最優先で取り扱いますから、要望があれば何でも……といっても今から救援車両の増発は難しいですが……とにかく、できる範囲でお手伝いいたします』
無線に管制官が鼻をすする音が混じる。
フランツは重いため息を長く吐いて、静かに管制官に答えた。
「ありがとうございます…………二号車と相談をしたいので、しばらく無線を閉じます」
『は、はい……なるべく早くお願いします。631へ管理局、オーバー』
ブチッと音がして、管理局との連絡が切れた。
『…………ラッツ? 貨車を止めろって……どうする?』
心配そうに聞いてくるリンテに、フランツは静かに答える。
「……とにかく速度落とそう……それと、ちょっと待って……」
『うん』
リンの返事に合わせて、パオロ号から聞こえるモーター音が低くなる。フランツも動力梃子を引いて、テア号の速度を絞った。
(このまま逃げようか…………いや)
一瞬浮かんだ考えを、フランツは頭を振ってすぐに打ち消す。
彼はきびしい顔で、足下の書類入れから、黒表紙の分厚い本を取り出した。
〈路線詳細手引〉というこの本には、様々な線路についての詳しい情報が書かれている。主に線路の傾き、カーブの曲がり具合、信号所間の距離などだ。
フランツはすばやく、第二山岳線のページを開く。
(貨車を取り逃がしたのは三号信号所。そこから現在地まではおおよそ……二十キロメートルと少し。傾きは……三号から二号までが平均13/1000、二号から二号付属までが平均16/1000…………うわ、二号付属からは平均25/1000もあったのか。暗いから気がつかなかったけど、改めて見るとかなりの急傾斜だ)
フランツは路線の傾きと距離をすばやく頭に入れる。
次に、そこに貨車と自分たちを走らせてみた。動力のない貨車のスピードは、線路の傾きとおおよその重さから予想することができる。後は自分たちがどう動けば、貨車を止められるか……
「……これしかない」
考えをまとめて、フランツは本から顔を上げた。額の汗をぬぐって時計を見れば、管理局と話してからまだ数分と経っていない。
「リン、聞こえてる? よく聞いてほしいんだけど」
フランツはそわそわとページを叩きながら、リンテにゆっくりと説明する。
「いまから連結を外して、リンは先に行ってほしい。僕はリンとは別行動をする」
『別行動? どうするつもりなの?』
「貨車を……二人で挟み撃ちにするんだ。リンはそのまま、三号信号場まで最高速度で行くんだ。パオロは足が速いから、上手くいけば二十分しないで向こうに着くはずだよ。三号に着いたら、すぐに上り方面に入って、こっちに戻ってくるんだ」
『三号に着いたら、戻りに入る……ラッツは?』
「僕はこの次、二号信号場で折り返しに入る。
リンはたぶん、二号と三号の間で貨車とすれ違うはずだから、そのとき僕に教えてほしいんだ。すれ違った場所と時間がわかれば、貨車の速さがわかる。そうすれば、僕は貨車とぶつかる前に、速度を合わせる事ができる」
無線の向こうで、リンテがノドでうなるのが聞こえる。
理詰めのフランツと違って、彼女は感覚で理解する性格だ。フランツの言葉を理解しようと、頭でも抱えているのだろう。
しばらくして、リンテの声がかえってくる。
『……だいだい飲み込めた。けど挟み撃ちでしょ? あたしはどうしたらいいの?』
聞かれるのはわかっていた。
フランツはそっと爪を噛むと、ボロを出すまいと丁寧に言葉を選ぶ。
「リンは、折り返したら……貨車に後ろから連結して、制動をかけて。
……もし、ダメだったら、貨車の後ろについてくれればそれでいい。僕とリンとで、二号と二号付属の間で止められるはず、だよ」
『? ラッツどうしたの?』
「いや……大丈夫だよ」
フランツは早くも再びにじんだ額の汗を、手袋の端でそっとぬぐう。
彼が立てた作戦は、本当は挟み撃ちではない。頭の中で何度動かしてみても、真っ当な方法で貨車を止める事ができなかったからだ。
フランツは本当の作戦を胸の中に隠して、リンテには必要なだけの事しか話さなかった。
(リンを不安にさせるような事が山積みだもの。説明すれば、反対されるに決まっている)
『……』
納得してるのか、それともしていないのか。フランツの心配をよそに、リンテはまたノドを鳴らして考え込んでいる。
(……考える時間は、そんなに残ってないぞ)
フランツがそわそわと計器腕板へ目をやる。そこへ
『……ほんとーにそれで止まるの?』と、胡散臭そうなリンテの声が流れてきた。
「大丈夫! リン信じてよ。それで止まるさ」
フランツは努めて平静に、何気ない調子でそう返した。
『うん……わかった。じゃあ切り離そうよラッツ、時間もったいないし』
リンテがぴしっとした声で応じる。どうやら納得したようだ。
「よし、切り離すよ。連絡は、いつもの周波数でよろしく。それから作戦は、僕から管理局に伝えるから」
『うし、まかせたよ!』
リンテが言い終わるや、テア号とパオロ号を繋ぐ連結器が解除される鈍い音が響く。
シートの横から回折鏡を引っぱり出して、その双眼鏡にも似た覗き口を、フランツはサッと確認する。
遠ざかっていく若草色の機関車、パオロ号を確認してから、フランツは無線機を切り替えてぼそっとつぶやいた。
「……何かあっても、リンだけなら大丈夫」
連絡のためにマイクを取ろうとして、フランツはふと計器腕板の時計に目を留める。
(七時十二分。一時間前には、まだ機関庫にいたのか……)
短時間での事態の急変に、指先が痛くなるような緊張を感じる。
フランツは大きく息を吐いた。その肩に、誰かが手を置くような、重く柔らかい感触が伝わる。耳の奥で小さなささやきが聞こえる。
(……)
「テア……もしかして励ましてるの?」
今からやる事は、どうやら相棒に筒抜けのようだ。
フランツは計器腕板を優しくトントンと叩くと、本当の作戦を説明するために、重い気持ちで管理局を呼び出した。




