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脱出

 銃声にそれを防いだ甲高い音が被さった。鎖の枷に付いた跡が煙をあげるのを見、老人が顔を歪ませる。ヴェリタが反射神経のみで見切ったことが信じられないというように。

「やはりお前たちは異常だ。存在してはならない!!」

 声を荒げる姿をヴェリタは嘲笑った。

『何言ってんだ。クローン人間の研究を始めたのはあんただろ?』

「!」

『施設で見たぜ?あんたの肖像画。自分で作ったくせに、よくそんなこと言えるな!』

「黙れ!だから私は罪を償う為に処分しているのだ、貴様ら化け物をな!!」

 銃がおもむろにミランを狙った。

『何ッ!?』

 ―響く発砲音。

 一瞬遅れて、地に落ちる鎖の破片。

 ヴェリタ二人の機転により、ピンと張った鎖でミランに弾は届かなかった。だがしかし。

「今だ!」

 号令に倒れていた数人が立ち、二人を逆方向に投げ飛ばした。

『ぐっ!?』

 転がる二人は立ち上がりかけ、崩れ落ちる。もがく力も、何故かひどく弱い。

「ヴェリタッ?」

「お嬢さん、聞かなかったかい?クローンはある程度離れてしまえば魂がちぎれ、両方が死ぬ、ということを。」

 今度は老人が、彼らを嘲笑する。

「!ヴェリタ!!」

 ミランは駆け寄ろうとしたが、瞬間別の男に押さえつけられてしまった。敵わないとわかりきっていながら抵抗する彼女。


  ――不意に、ヴェリタが動かなくなる。


「ヴェリタあああぁぁああ!!」

 ミランが叫んだ。

「これで奴らを全て始末した。さてお嬢さん、君には一緒に来てもらおう。あいつらに思考を汚染されてしまっているようだからね。」

 涙が零れ始めたミランを、呆れた調子で言う老人。

「汚染って何!?あなたたちの方がおかしいよ!ヴェリタ自身は災厄に加担したわけじゃないでしょ、巻き込んだのはあなたなんでしょ!!」

「…痛い目に遭いたいか?」

 怒りが滲む顔で手を伸ばしてくる老人を無視して、顔を伏せる。

 風が、一際強く吹き抜けた。


「―何汚い手でミランに触ろうとしてんだ。」

 ヴェリタの声。老人は、状況を理解する前に蹴り飛ばされた。

「心配かけて悪かった。すぐ終わらせよう。」

 倒れていたはずの二人と立っていたはずの敵数人、立場は逆転していた。

「なぜ…なぜ生きている!?」

『オレたちは元々イレギュラーだったってことさ。』

 揃った動きで煙玉を投げ、その中に三人は消える。小さく舌打ちして、老人もまた、闇に消えた。


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