思惑 3
なんとなくだが、ここじゃダメだ、
そうだな、その為に有るんだったな…
【深淵】の中に有る最奥の特別な場所…【煉獄】…
【呪】によって死んだ者が、穢れ多き者が行き着く先…
超強力穢れ洗浄の専門店…
俺は【深淵】から【煉獄】への直通ルートに入る。
相変わらず…殺風景だ。そして、
「やあ…深淵の主よ、久しいな?」
俺に声を掛けたのは、ヨミの弟くん、サノーだった。
お?おお、そっちは相変わらずって感じ?
「ああ…そうだな…で、今日はどうされた?」
そういえば…ヒルメの討伐の顛末やら、こいつに教えて良いもんか、話す前に一回、ヨミにも聞いておかんとな。
「ん?…ああ、なんかすげえ【呪】を入手しちまってさ、流石に持て余したんで、ここに処分しに来たんだよ…」
【煉獄】のその出口?…大きな…まるで底なし沼みたいな感じの、大きな穴が開いてる…
俺はそこに、例の玉手箱を放り込んだ。
玉手箱には、何か得体の知れない気配がどこからか出て来てまとわりつき…
ゆっくりと光の粒を放出し始める…どうやらこれで正解だった様だ。
サノー…実はアンタとも色々と話しが有るんだが…
生憎、今無茶苦茶忙しいんだよ。で、近い内にまた来るからさ…そん時ゆっくり話すよ。
「ほお、それは楽しみだ。なにせここは…まあ知っておるだろうが、退屈以外は何も無いのでね…」
ああ確かに、ご愁傷さまだな…じゃあまた来るから!
そう言って、さっさと【煉獄】を去った。さっさと…さった…え?
い、いや…何でもないよ?気の所為だよ?コホン…
急ぎマーオちゃんの元へと舞い戻る。好事、魔多しって言うしな。
戻った。問題無い様…ん?
…なんだ?
え?ウソ…
まさかまさか…だった。
逃亡をかまされた、あのクソヤローが…
まさか茂みに隠れてこっちの様子を伺ってやがった。
こいつまだなんか企んでやがったのか?マジすげえな?いい根性してやがる…
正直、わが目を疑ったぞ?
たまたま偶然だった。
マーオちゃんのとこに戻る前に、
ちょっとお花を摘んでおこうかな?と思って、近くの茂みに出てみたらだ…
なんと目の前に、あのレホーが居やがった。
もうその瞬間に条件反射だった。一気にフルスロットルで、
それこそ瞬時に【深淵】に、速攻で全身を叩き込んだった。
恐らく、二秒も掛かってない…
一言の声も出せず…その暇さえも与えずに、光の粒にしてやった…成敗!!そして天誅だ!
クソが、テメエは絶対に許さん。セーオリッツやマハナの…
そして、俺の仇だ、ボケっ!…
ハッ…い、イカン…つい興奮してしまった…
ん~~っと?こりゃ、やっちまったな…
やってしまってから言うのもあれだが…
あれはゴミクソだが、一応、ヨミの分体だった…
その分体を、本人の許可無く?
勢いで消去しちゃったけど…
やっぱちゃんと、ヨミに返すべきだったかな?
まあ…もう無理なんだけど…
事故だ…
これは出会い頭事故だった…そう、悲しい事故だよ?これは仕方がないって、これは…
だって…車は急に止まれんしな…
そっか、事故なら仕方がないな…事故なら…知らんけど…
これはもう、墓場まで持っていこう…
何も無かった…そう、何も無かったんだ。
落ち着け…何食わぬ顔だ…
ふーーー、ただいま。
な、何も無かったよ?マジで…
いや、違う…そうじゃない…
なあヨミ、あの穢れは【煉獄】に放り込んできたよ。
で、会ったよ弟くんに。
…弟くんには、ヒルメ討伐とか、アーマ軍壊滅とか…全部話しても良いもんか?
「うーーーん、今のサノーがどうなって居るのかさえ判れば、我にも答えようも有るのだが…」
なる程…お前の中のサノーと、俺が有ったサノー…同じとは限らんもんな…
で…この後は?
「え?…ああ、もうマーオの中の力は全て吸収したし、後はそう…分体を吸収するよ…あ?…そうか呪言だったね。消して良かったんだよね?」
えーっと…まあ…呪言なんざ無い方が絶対に良いから、そこは消しちゃって良いんだけどさ…そうじゃない…その後だよ?
「ああ…」
…
…暫しの沈黙があった。
「そうだね…当然ヒルメの成長を目の前で監視しなきゃ…だね。もう同じ過ちは繰り返させ無い。
でも、まずは生き残りを全て、当然アーマもズク族もみんな集めて、一旦綺麗にまとめて、完全に統一するよ。それで、改めて神族を再興するべき…なんだよね…」
そうだな…まあ…そもそも、そうゆう話だったな…
「へえ〜…こんな我との別れでも、君は悲しんでくれるのかい?」
いーえ?!ぜーんぜんっ、平気ですけど?全く平気なんですけど??
「アーハッハッハ…そうかそうか、まあ…その方が君らしいよ…でも、今一度、島に帰ろうとは思っているよ。
老師をはじめ、皆にはホントに世話になったからね。ちゃんと別れも言いたいし、
最後に老師と…いや、剣王とは、決着をつけないといけないしね…勿論、将棋だけど…ね?…」
そうか…まあ、今後はまともな神族にして貰わないと、みんなが困るからな…そりゃ当然、ヨミの仕事だよな。
「あとさ…ここは…本拠地はもう、流石に誰かさんのお陰で、すっかり再建不可能な位に破壊されちゃったからね…」
え?…誰だよ、そんな酷いやつとか居るのか?
まさか…ヨミが俺に鏡を向けやがった…こいつだよって指差しながら…
あ?誰だよこのイケメンは?
…ムカつくんでボケで返してやった…
最後に、二人で肩を組んで大笑いした。
そうか…ヨミはヨミの道に帰るんだな…
結構寂しい感じだったが、絶対に寂しいなんて言わないよ。
会おうと思えば、いつでも会えるしな。
…そ、
出会いの数だけ、別れも有るんだ。
別れたぶん、きっとまた素敵な出会いが有るんだよ…
知ってる。
葬儀の仕事のたんびに、残った遺族にそう言ってるの…俺だったし…
最初からずっと…散々疑って来たし、ましてや最後の最後まで疑って…
流石にちょっと申し訳無いなと…
だがしかし。
なにより今日はマーオちゃんのお祝いだ。
当初の、心がざわつく感じは、いつの間にかもう、すっかり無くなっていた。レホーがいたからだったのかも知れん…
いや…レホーなんか居なかったな…お、俺は見てないぞ?
おっとそうそう、ブランコも忘れず回収しとかなきゃな…イソイソ…
さて、じゃあ帰ろうか。みんな待ってるしな。




