思惑 2
いよいよ…遂にヨミがヒルメの力を吸収し始めた。
こないだ見た、皿の上の光の玉?…これがその?魔力らしいが…
それに手を翳し、ゆっくりと吸収し始めた。
なんでも、急にいっぺんに吸い込むと、ヨミの身体が耐えきれずに爆発するらしい…
やっべえな?…既にバリアも張っているが、更にもう一つ、上から追加しとこ。
光の玉の大きさは、運動会の大玉転がし?の大きさくらい…それをゆっくりと吸収し、そして光の玉がちょっとづつ小さくなっていってる。
子供達も、何が起きているのかは理解してはいないが、玉が小さくなっていく様子を、ただじっと見つめている…
多分、十五分くらいかな?
…それでようやく、光の玉が無くなった。
ヨミの身体なのだが…、クソ偉い神族って、見る者によって姿カタチ、見え方がそれぞれ違うんだが、いわば?その者が望むカタチ、思い描くカタチが反映されると…
何故かこの世で唯一?俺だけは、ただの黒っぽいモヤモヤに見えて居たんだが?
なんとなく…人のカタチに、ちゃんと顔っぽく見える様になってったな…
遂に俺にも顔も見える…?
へえ…俺にはこんな顔になるのか?って…いや…この顔さあ、もうヒルメじゃん?
おいっ!!緊張が走った…胸騒ぎの原因ってこれか?
ヨミ、お前…まさかヒルメに乗っ取られたんじゃ無いだろうな?
俺はすぐ様、【深淵】の黒い炎を腕に纏い、臨戦態勢になる。
「え?主にはそう見えるのかい?…」
…ん?俺…には?
どうやら…中身はヨミのまんまで…見た目はヒルメ…?
俺が余りにもヒルメを警戒し過ぎた所為なのか?結果…俺にはそう見えるらしい…
まあ…そもそも兄弟だしな。顔が似ていてもまあ、当然っちゃ当然か…
ちな?マーオちゃんもミーシャちゃんも、前とおんなじお顔だよって、そう言ってる…
チッ、ややこしいやっちゃな?まあ…ええけど。一旦、武装解除だ…
で…遂に本丸。マーオちゃんの番だ。
まるで難しい手術に向かう我が子を見守る父の気分だ…ドキドキが止まらねえ…
これを邪魔すれば即…
俺はミューと九郎にそれぞれ目で合図を送る…当然だと、向こうも合図して来る。阿吽の呼吸だよな。
ドキドキも最高潮だったが、同時に警戒レベルも最大で備える。
ベッドの様な台の上にマーオちゃんが寝かされる。そのすぐ横にはミーシャちゃんが、ちゃんと手を握ってあげてるのってのが、もう泣かせる…
ヨミを睨む…テメエ、失敗なんざ決して許さんからなと。
マーオちゃんの上半身のその上に、おどろおどろしい魔法陣が浮かんでる…どうやらこれこそが【呪】のようだな…
ヨミが手を翳し、その書き換えを始めた。言ってみればハッキングの様なものかな?
まあ…何にせよ、俺にはさっぱりなのは間違い無い。ヨミの邪魔だけはしないようにせねばな。
見てる限り特に、マーオちゃんが嫌がったり…痛そうな感じも苦しそうな感じも無いのが救いだが…
まさに一切、何も出来無いってのが、とにかくやたらと辛い…無意識に、全身に力が入っているのが判った…
その時、一番近くにいたズク族のオギっちが急に膝を落とした…
九郎が俺の肩を叩いて言った。
「気持ちは分かるが、少し落ち着いたらどうだ…」っと。
え?…アレ?
気づけば顔と胸の辺りを除く、俺のほぼ全身が、黒い炎に包まれていた…
「我等以外には、この炎は猛毒なのだ…」
慌てて炎を消して、オギっちにはスマン…っと謝った。
どうやら俺の炎に力を吸い取られたっぽい…
うーーーん、決して邪魔だけはしたくなかったのにな…無意識だったがやらかしてしまった、反省だ。
マーオちゃんの上に浮かんだ【呪】だが、
ずっと色や形を変えながら、まだ浮かんでいる。
まあまあ結構な時間…ヨミが光の玉を吸収するよりも、なんならその倍くらいの時間が経った時だった。
突然、【呪】が砕けた。すかさず良いが何かを前へと突きだした。護符?何かを包んだ、その紙を折った様な?香典袋や祝儀袋の中のやつ?
その紙に、壊れた【呪】が吸い込まれた。
良く見れば、ヨミのその紙を持つ手が、ドス黒く変色している…
「主よ、これを【深淵】で浄化して欲しい…」
もう見るからに猛毒…劇薬なのだろう事を、俺は速やかに理解し、間髪入れずに【深淵】にぶち込んだった。
その猛毒…【深淵】に入った途端に、光の粒になった…
そうか、これも元々は、人と魔族の命…だったもんな…
で?おいヨミよ、その手、大丈夫なのか?
「ああ、ちょっと痛いが、これくらいは問題無いさ、すぐに回復するよ。それよりも終わったよ、マーオの封印は解除した…」
おお!そうか、やってくれちゃったか?偉いぞヨミ!!
そして慌ててマーオちゃんを凝視した。
マーオちゃんも大丈夫?痛いとこない?
マーオちゃんはコクコクと頷く…
え?…声は?
俺はヨミを睨む…
「おいおい、ちょっと待ってよ…封印は解いたけど、彼女が急に習慣やクセで、ついそうなるって…流石に分かるでしょ?」
正論のクロスカウンターを、顔面に叩き込まれた気分…まさに強烈なお返しをされたぜ?…まあ確かに…そりゃそうだな。つい…
マーオちゃん、慌て無くて良いからね、ゆっくりとー、喋る練習をー、していこうねー♪
「う…ん…」
しゃ…喋った?
マ、マーオちゃんが、喋ったああああああ!うおおおおおおおおお…
俺は両手を高く、天に掲げて叫んだ…
まずはマーオちゃんとミーシャちゃんと熱い抱擁を交わし、
すかさずヨミにも、背中をバンバンとたたきながら、強めなハグしたった。
うおおおおおおおおお、やったぞおおおおおお!!!!エイドリアーーーーンッ!?この瞬間…
全米が泣いた!!
俺も泣いた!
ミーシャちゃんも泣いた。
ただ俺だけが、この静寂の中で唯一、強烈に浮いていたが…全く気にしねえよ?
それよりここが実家なら、今日は絶対に、A5ランク神戸牛のすき焼きだろうな…帰ったらパーティだな。
いやあ、こりゃめでたい。最高かよ?クックック…嬉しさが半端ないぞ?今日なら何でも許せそうだ…知らんけど…
ヨミにはもう一度感謝を伝える。ありがとうな、っと。
「ところで主…」
なんだ?何でも言い給え。君が望むなら、この世界の半分は消滅させようと思うが?
「ちょっと、何言ってるのか…」
クックック、まあ良いって事よ。で、何よ?言ってみ?
「さっきの【呪】…アレはまだ、【呪】の中では弱いヤツなんで、特に問題無いんだが…これを…」
ん?玉手箱か?って、きれいな箱を出してきたヨミ…
「ここにはヒルメの身体の一部…髪が入っているんだけど…その髪に、ヒルメの中に有った、強く穢れた濃い【呪】が付いてるんだ…」
お?おお…?ヤバそうだな?
「複数の【呪】が重なり合って、相当に危険なんだ。これも【深淵】で浄化出来ないかな?」
うーーーん?
さっきの【呪】はすぐに消えたが…
それって相当ヤバそうだよな…
俺は産廃処理業者では無いのだが?
だが、こんなヤバそうなモンを、そこらには置いておけんよな。
取り敢えず…【深淵】に入れて見た…
が?
なんだ?何も起きないな…
そもそも髪?なら、光の粒になりそうなもんだが…
ん?
ひょっとして…ひょっとするのか?




