思惑 1
昨日、この部屋までの案内役だったオギが、俺達を呼びに来た。
「おはようございます、朝食をご用意しております」…と。
さて?
果たしてそれを、食って良いもんなのかと、思案はするものの…
毒のマイスター、うちのミュー先生なら、味見…いや毒見ができるんだよな…
まあ…ホントに善意なら無駄には出来ん。子供達の教育上、良くない気がする…
一応ちびっ子らを抱えて、食堂へと移動した。
用意されて居たのは、野菜っポイ何か?が入ったスープのようだ。
ミューの出した糸をそれぞれの器に突っ込んで、再び回収、分析。
改めてミューの確認と結果発表待つ。
ん?…問題無い?そうか。
だがな?
舐めて貰っては困るよね?フッフッフ…ここが、俺が出来る男ってやつなのさ?
良いか?ミステリー作品なら…食事そのものでは無く、器の口をつける部分や、スプーンに毒を塗ってるって、そんなパティーンも有るのだよ。そう、一度油断させてからの…ってヤツ?
そこらもミュー先生にご確認頂き、OKを頂いた。うーーーん考えすぎかな?
で、「いっただっきますっ!」皆で声を合わせ、スープを飲んだが…
…薄味すぎた。
…あれ、白湯かな?
思わずそう、言いそうになった。
慌てて、カレーパウダーを追加した。
物資が貧乏しいのか、或いは、そもそもそう言う食生活、食習慣なのか?
塩分も控えめ…超健康的でヘルシーでは有るのだろうが、これはちょっと違うよなと。
追加したカレーパウダーの、その絶大な効果で、どうにか事なきを得た俺達だった。
マーオちゃんもミーシャちゃんも満足顔だ。
ホントに良かった…俺が出来る男で…
オギっちに、このあとのスケジュールを確認してみた。
「お、オギっち?わ、私めの事でしょうか?」
もう既に、ヨミはなんかの準備に入ってるらしく…
その時が来るまで、ここでこのまま待機だそうだ。
取り敢えず、マーオちゃんとミーシャちゃん相手に、オセロを嗜む。
勿論、接待オセロだ。フッフッフ、そう、俺は出来る男だからな…
うわああ、またひっくり返えったよお…うえええん、
ええ?そ、そんな手があ??
大きめのリアクションで対応していく。
そう、俺は…(以下略)
接待四試合目で、遂にお呼びがかかった。
ふーーー、覚悟はできてるものの、やはり緊張しやがるな。
一応、危険に備えたいからと、
先に二人には断わってから、やはり抱き抱えて廊下を移動する。当然、深淵の輪舞曲も忘れ無い。
全集中…皆殺しの呼吸…壱の型…
…えーっと…
……
あ、ダメだ…浮かばない、その後が出てこねえよ…まあ…良いけど。
俺達は大きな部屋に案内された。
俺の前にミュー、俺の後ろに九郎…
大統領を守るSPの様に、要人警護のつもりで廊下を進んだ。
大きな部屋には、ヨミだけがいた。
他のやつは?俺の問にヨミが答えた。
「いや主よ、昨日よりずっと警戒しているよね?
昨夜も相当警戒してたでしょ?君さあ、全部顔に出てるからね?
もう先に話しがしたくて人払いしたから。結界も張ったから、聞かれる心配も無いよ…」
え?…うそ?か、顔に?
出来る…男なのに…?
「あーっはっはっは、大丈夫だよ…忘れた?ほら、このミューの蛇口を?」
そうだ、確かにそれを付けてたっけ?…うわ…完…璧に忘れてたわー…
「だからね、我はそもそも君ら相手に、敵対なんか出来やしないんだよ?…」
ま、まあ…そうなんだろうがな?とにかく、ずっと嫌な気配が有るんだよ…
「ほお…なる程、それで、我は君の警戒対象なのかい?」
うーーーん、妙にざわつくこの感じが、俺には境界線経由で分かるんだがな…
それがどうもさ…お前クラスの神族っぽいんだよ?
「ええっ!?…あらら…」
で、ヒルメは動けず、サノーは【煉獄】…つまり…
「つまりなる程…つまり、それだと答えは我だね?」
俺はヨミを睨む…
一応…言っておくぞ?
俺はな…お前がなんかおかしな動きをした瞬間…お前は勿論、ここにいる連中も全て、根こそぎまとめて殲滅する気だぞ…と。
出来ればお前を、俺の手で殺させてくれるなよ…それが一番望ましいんだがな…
だが最悪の場合、お前らに遠慮なんかしないぜ?ここは問答無用、即、で行くからな…
「なる程。そりゃ人払いしてて良かったよ。ここの連中が聞けば、当然大騒ぎだよ?
実はね、我の他にも強い力の神族が、ここには居るんだ…」
ほおー?ならソイツさあ…もう今、殺っちゃって良いよね?
「いやいや、ちょっと待ってよ。物騒だね?
まだそうと決まった訳じゃないでしょうに?
実はね…我も色々と気になることが有ってね。だからここの人払いをしておいたんだ…」
俺は俺の事情や思惑を、ヨミはヨミで事情や思惑を、それぞれ話した。
まず…そのもう一柱の神ってのは、逃走中だったヨミの分体の一つだった。
なんでも逃走に際して、ひたすら逃げまくるヤツ、
そして、俺を殺し、いや結果未遂だったが、
逆にボコって、滅茶苦茶シバいたった、あのレホー、あのクソヤロー…
上手に立ち回るような基本プログラム…だったのだが、まさか暴走しちゃったヤツ…
そして、ヒルメに泣きつく様な、いのちだいじに プログラムだったやつ…つまりこいつが居るんだと。
何故ソイツを、まずはさっさと吸収しねえんだよ?って聞いてみた。
吸収した場合、一応、ヨミの本体が優先で支配出来るのだが、
力が拮抗している場合には最悪、向こうの意思に強く影響される恐れが有ると…
なんせ今…スッカラカンだから…と。
更に万が一、向こう側が強ければ、逆に支配されかねない。
現にあのレホーは、それを狙っていたのだし。
「君がここに居れさえすれば、分体を抑えるのなんて容易でしょ?
なので、まずはマーオの方の封印を解き、我の力をある程度回復させてから吸収と、そう考えて居たんだが…」
ふーん。なる程。筋は通ってんな。
俺も落ち着かんからさあ、取り敢えずソイツ…ミューの魔法で自由を奪って良いよな?
糸でもグルグルに縛っとこう。
あと、確認なんだが?
「ん?…なんだい?」
ヒルメってさ、ホントに大丈夫なのか?拐って来といてなんだけど、
弱すぎるってか、呆気なさ過ぎてさ、どうも嘘くさいんだよ。
「いやいや主よ…我等神族にとって、【深淵】は猛毒なんだ。君と有った時にも言ってたと思うけどもさ、【深淵】の前では、全ては無力なんだよ…神族だってそれは例外じゃあ無いんだ…そもそもヒルメってさ、戦闘はしない…いや出来無いタイプだからね…だからさ、我、サクッて終わるって、そう言ってたでしょ?」
お?おう…
なんだ…?これが俺の違和感…胸騒ぎの答えなのか?
まあ…分体とは言え、仮にも創造神だもんな…一応は…強者認定されるのかな?…
まだスッキリしたとは言えないのだが、
…とは言えだ。そもそも俺に敵など居ない。
そうセルフで鼓舞し、自分を信じるのだ…
たかが分体如きに、遅れは取らんよ?なにせ俺は…(以下略)
だから?
「…え?」
マーオちゃん回復プログラムってヤツを、俺にわかりやすく説明しやがれ…下さい。
「え?あ、そう、そうだね…」
「そうだね…わかりやすく…うーーーん、それが難しいって、まさに矛盾してるよね?」
いや…知らんけど…?
「ま、まあ…とにかくヒルメの力のうち、【呪】に汚染されてない部分を取り出して有るんだけど、それを…うーーーんそうだなあ…うーんと、我が吸収出来るカタチに、加工?矯正する専用の器?まずはそこに収めたんだよ…」
ヨミ曰く…
その器によって、ヒルメの魔力の波長を、ヨミの波長に変えているのだと…
そもそも正反対の属性では有るものの?
元々は同じ神から生まれた同じ血筋…血統の兄弟なので?
【深淵】を宵闇にはほぼ変換出来なかったのだが、
ヒルメの【太陽】の力は、元々は近い波長から派生している為に、
おおよその力は回収出来るらしく…
で?…
まず…ヨミがその力を吸収すると。
元々マーオちゃんの封印は、そのヒルメ対策だったもので、ヒルメ無き今…
その封印の【呪】…その効果が薄らいでいるか、もしくは無効化されているような?
ひとまずそんな状況で、
ヨミの元々の能力と、ヒルメから奪った創造の力で、本来…決められた日にしか外せないマーオちゃんの封印を、その約定を、創造の力で無理矢理書き換えるのだと。
マーオちゃんに掛けられた【呪】だが…
その【呪】は、マーオちゃん本人にでは無く、マーオちゃんの施した封印に対して掛けて有るので、
基本、書き換えたところで、マーオちゃんの身体には、なんら影響は無いはずだと。
そして、マーオちゃんに元々備わっている、生まれつき持って生まれた…ギフト?
それが、呪言って云う、なんかある種の、弱い呪い属性の能力なんだそうだが、
例えば、そんなつもりなんて一切無くても、死ね!…って言葉を言って、それを受けた相手が死にたくなる…場合によっては死ぬ?…らしい。
そんなヤバいもん持っていても?
危険こそあれ、気付かずに周りを傷つける恐れしか無いらしいんで、
俺か、もしくはマーオちゃん本人が望むなら、いっそ無くしてしまおう…っと。寧ろ普通で良いだろうっと…確かに。
マーオちゃんに封印されたヨミの力は、そもそもヨミの波長のママらしく、これはさっさと吸収するんだと。
で、ヒルメの力とマーオちゃんの力とを吸収して、
更にそれから、ようやく分体の力を吸収するんだと。
本人曰く、本来の力にほぼ立ち帰れるらしいのだが…
それでも、そもそも【深淵】には全く無力だから、
絶対に君らと事を構えるなんて、そんな馬鹿な真似なんてしやしないからね…っと。
なによりも、我は君の相棒だからね…フフフ…
この創造神、ツク=ヨミの名にかけて誓うよ。君とは仲良くし続けたいんだとね。
うーーーん…そこまで言われるとな…
一応は流石に、こいつを信じたいんよなと。
甘いのかな…俺?




