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イッカーとタッコー 4

 町の様子は一通り見たし、そろそろ依頼を見てみる。

 いえ、その前に次行く場所への確認ね。

 このカルミヤは領地と領地の境界に近くて、数日歩けば越えられる。その次に行く町と、現れるモンスターを事前に調べておかないとね。

 このカルミヤはまだホクア領。ここから南東に行けば、マルト領に行ける。

 そのマルト領を通り過ぎれば、故郷がある領地ね。

 そこの最初の町は、どうやらボウンというらしい。その周辺で出てくるモンスターは、体に鉄の部分を持つ、アイアンタートルに、粘土みたいな体を持つマッドスライム。

 どちらかというと、倒しづらいモンスターがいるらしい。しかも素材も重くて持ち運びにくそう。今はテムがいてくれるから運ぶのは苦にならないだろうけど、大抵の冒険者はやりにくそうだ。

 とにかく、ボウンという町の名前を憶えておこう。そこまで行く護衛依頼があれば、今受けてもいい。すぐにランクを上げたい気持ちもあるけど、防具屋の話ではママイッカーがここでは討伐の主流らしいから、ちょっと私達ではやりづらいかもしれない。

 まあ、どんなモンスターも倒せるようになれれば安心できるから、挑んでもいいんだけど。今のところ気持ち的には、気が進まない。ママイッカーはイッカーの親玉らしいから、あまり強そうという印象も無いし。できれば別のモンスターを狙いたいんだけど。

 そう思いつつギルドの依頼を見てみたら、見事に今4ランクの依頼はママイッカーの討伐しかなかった。ちなみに5ランクの依頼はママタッコーの討伐。

 護衛依頼は無かった。これはもう、ママイッカーを倒しに行くしかないか。

 一応ママイッカーの情報を詳しく調べておく。

 ママイッカーは巨大なイッカーで、顔の上部分が若干紫色になっているらしい。水魔法を使えて、十本ある足は伸びる。

 更にママイッカーの近くには、チチイッカー、ロイヤルイッカーがいて、複数のモンスターを相手取ることになるらしい。

 思ったより厄介そうね。でも、それも加味して4ランク程度の強さなのかしら?

 おまけに、ママイッカーは川の中からあまり出ないので、戦ったり素材を取る場合には川の中に入らなければいけないとのこと。やっぱり、水対策は必須か。防具屋の言う通り、挑むなら水除けの靴くらいは無いといけないわけね。

 ついでにママタッコーも調べてみたけど、こっちもママイッカーと大して違わないらしい。違うのは、ママイッカーより固くて力が強いということ。一度でも足に捕まったらまずそれで終わりらしい。接近戦は要注意ってことね。ちなみにこっちは5ランクらしい。でも出現場所は同じ川の中。運が悪いと出会うかもしれないわね。

 よし。情報収集終わり。

 うーん、それじゃあ、ママイッカーを倒しに行ってみよう。

 ちょっと悩んだけど、やっぱりどんなモンスターも倒してこそだと思うし、ここでママイッカーを倒せれば安定して5ランクになれるかもしれない。

 5ランクになれたら、次はママタッコーにも挑んでみるかな。


 結局水除けの靴を買った。

 えらく高かったけど、仕方ない。その分ママイッカーを倒して稼ごう。

 保存食とかは、まだ結構残ってる。料理もできるわね。食材が駄目になる前に使い切ってしまいたい。お昼もごはんを食べてみるかな。あ、シャスデリみたいに携帯コンロを買わないと。

 準備が整ったら、銭湯に入って明日に備える。英気を養ってから出発だ。

「モエル、皆。明日は強敵と戦うつもりだから、全力で頼むわよ」

「にゃあ!」

(へん、そんなの俺が倒してやるぜ!)

「キュー!」

(怪我をした時は任せてください!)

「ピー!」

(ここのモンスターは美味しいから、たくさん倒すわ!)

「ギャウ!」

(強いやつか。俺達なら余裕だな!)

 皆もやる気十分だ。よし、それじゃあ、ママイッカーを倒しに行こう。


 早朝。町を出て北へ向かう。

 モンスター討伐に行く時の、いつも通りの空気。これも久しぶりね。

「ミドリ、周囲の警戒お願い」

「ピー!」

(任せて!)

 ミドリが飛び、私はそれを目で追いつつ歩く。

 今回もモンスターを倒して、無事に戻ってこよう。


 イッカーや、たまにスライムを倒しつつ進む。

 のんびりお昼ご飯も食べながら歩き通すと、進む先に旅の宿が見えてきた。

 そして肝心の川は、まだ見えてこない。

「宿、ね」

「にゃあ?」

(敵はー?)

「キュー?」

(今日はここで寝るんですか?)

「ピー?」

(ベッドは?)

「ギャウ?」

(強いやつはいなかったよな?)

「あー、ごめんなさい。皆。今日はひとまず、ここで寝ましょう」

 ちょっと予定と違ったけど、まあいいとしよう。

 まさか、川までこんなに遠いだなんて。


 旅の宿には、既に数人、いや、十数人の冒険者がいた。

 彼らとは一瞥しただけで、まず宿の主人にお金を渡す。

「一泊泊まります。明日、帰りにまた泊まるかもしれません」

「わかった。テイムモンスター連れか、珍しいな。ええと、こういう時は、たしか普通に1人分の10シクルだったか」

「はい。それで、私達川を目指しているんですけど、明日には着きますか?」

「ああ、着くよ。あと一、二時間といったところだ。ここに泊まって、川でモンスターを倒して、またここで眠る。そんな感じだね」

「あ、やっぱりそうですか」

「あんた、ママイッカーは初めてか」

「はい」

「なら、悪いことは言わない。今回は様子見だけにしておきな」

「それは、どういうことですか」

「あいつらいるだろう。先にここにいたやつら。あいつらもママイッカーを狙ってるんだがな。どうやら今日中には倒せなかったらしい」

「え?」

「ママイッカー討伐はそれくらい大変だってことだ。3、4パーティが手を組んで、一日で討伐しきれない。それくらい強いし、それに配下もいる。テイムモンスターを多くつれているみたいだが、その程度の戦力じゃ手に負えないよ」

「そんなに強いんですか」

 そこまで言われると、流石にママイッカーの評価を上げざるを得ない。

 てっきり4ランクだから、そんなに強くないと思ってたんだけど。

 これは思ったよりも大変かもしれない。でも、一度戦ってみないことには始まらないわよね。皆も戦意をみなぎらせてやって来たし。

 でも、ママイッカーには十分注意するとしよう。


 ひとまず調理場を借りて料理する。

 シャスデリのために買った野菜をできるだけ消費しなくては。

 宿の主人にもごはんを振る舞った。ただ、私は料理人というわけではないので、ごはん代は取らなかった。まだ人からお金を取れるような腕前じゃないだろうし。

 あと、一応先にいた冒険者達にもいるかどうか聞いておいた。

 すると、1パーティはいらない、もう1パーティはいる、それを聞いてもう1パーティもいると答えられ、私はその分料理を頑張った。

 そしてお金を受け取らないかわりに、どうにか言葉でだけでもママイッカーのイメージを聞かせてもらう。

「俺達はまだママイッカーまでは行ってないけど、ロイヤルイッカーは倒して終えて、チチイッカーに大きな一撃を与えることには成功したぜ」

「ロイヤルイッカーとチチイッカーって、強いの?」

「ロイヤルイッカーは3ランク、チチイッカーは4ランクだ。そら強いぜ。水魔法も使うしな」

「へえ」

「けどこいつらしか川の外には出ないからな。明日チチイッカーを倒したら、後はどうママイッカーを倒すかだ」

「どう倒すの?」

「一応風魔法でママイッカーを近くまで吹き飛ばしてみる。運がよければ地上で囲んで倒せるさ」

「なるほどね」

「それよりあんたは、その頭数でママイッカーを狙うんじゃないだろうな。数の差で負けちまうぞ」

「やっぱり、そんなに厳しい?」

「ああ。ママイッカーも川から水魔法をひっきりなしにとばしてくるからな。まとまった人数がいないと勝負に持ち込めない」

「そう、わかったわ。それじゃあ、今回は危なくない程度に見てくる」

「あんたなあ。まあ、いいや。死ぬなよ」

「ええ」

「お前、1つ言っておくことがある」

 私の料理を断った冒険者の一人が話しかけてきた。

「今ママイッカーは俺達が狩っている。それを横取りしようとは思うな」

「ええ、わかってるわ」

「万が一川でお前の姿を見かけたら、こちらは容赦なく攻撃する。くれぐれも妙な気は起こすなよ」

「わかった。ご忠告ありがとう」

「ふん」

 ちょっと感じが悪かったけど、あっちも命がけで依頼をこなしているのだ。気持ちはわからなくもない。

 聞きたいことだけ聞いたら、話を終わりにして、皆とまとまって寝る。

「おやすみ、皆」

「にゃあ」

(うん)

「キュー」

(おやすみなさいです)

「ピー」

(おやすみ)

「ギャウ!」

(寝るぜ!)




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