石砕きの刃と共に 5
更に進むと、霧が出てきた。
「二リハさん。霧の森に入ったようです。ここにクラウドマンがいます」
「ええ、わかったわ」
よし、今日はここからが本番だ。
「それじゃあ、私達が前に出るわ。キュール達は下がって」
「はい」
ここは、キュール達も初めて入る場所だろうし、私達が前にいる方が絶対良い。
ひとまずひたすら前に進む。霧はうっすらとしているけど、やっぱり視界は悪いわね。
「あ、二リハさん。待ってください」
「何、キュール?」
「これ、たぶん霧下草です。霧の森に生えている植物。たしか売れるので、取ってもいいですか?」
「ええ、お願い。私じゃわからなかったから、それはキュールのものね」
「いえ、お金になったら半分は返します!」
「その気持ちだけで十分。使えるお金は多い方が良いわよ」
「にゃー!」
(二リハ、なにか来る!)
「キュー!」
(不思議な臭いのやつが来ます!)
「ピー!」
(え、私わからない。ここ、視界悪いし!)
「皆、気をつけて。どうやらなにか来るらしいわ」
私は皆の声を聞いてすぐ、剣を抜いて用心する。
「万が一の時は、あなた達だけでも逃げて」
「そんな、その時は俺たちも一緒に戦います!」
「私達が逃げられないって言ってるの。囮とかにはしたくないから、状況判断は素早くね!」
そう言ってると、私にも敵の姿が見えてきた。
見た目は白い大男。いや、そいつには目も耳も口もない。
白い動く人形。そんな感じだ。やっぱり雲でできているのかも。
「クラウドマンだ」
ランゾが言った。その直後モエル達が動く。
「にゃー!」
(火魔法!)
「ピー!」
(木魔法!)
まずはモエルとミドリのダブル魔法。
それを受けたクラウドマンは、両腕をクロスさせて耐えた。
その両腕は白い湯気を発して当たった部分が消える。いや、木魔法の鋭い枝は刺さったまま?
「キュー!」
(それー!)
すかさずシャインが飛び蹴りをくらわせた。
すると、シャインの足がクラウドマンの体に埋まり、抜けなくなった。
「きゅ、キュー!」
(あれ、こ、この!)
「シャイン!」
私は慌てて接近した。このままじゃ、シャインが危ない!
「パワーアップ、ゲイザースラッシュ!」
近づきざま攻撃。狙いは、胸!
クラウドマンは私と向き合い、両腕を伸ばしてきた。とっさに盾でかばい、片腕は避ける。もう片方の腕は、力を溜めていた剣で切り払う!
クラウドマンの片腕が飛ぶ。盾で防いだ方は真上へ伸ばされ、そこから途中で鋭く曲がって私に再び迫る。
私はその攻撃にも盾で対応しつつ、今度こそ剣で胸を攻撃した。
「パワースラッシュ!」
クラウドマンの弱点は知っている。体の中にあるという雲石だ。
逆を言うと雲石を壊さない限り、クラウドマンは動き続けるらしい。
その雲石の場所は、もうなんとなく察しがついている。
モエルとミドリが攻撃して、かばった、胸の中にきっと雲石がある!
私の二度目の攻撃は、またもクラウドマンの片腕を切り落とすだけに終わった。
よく見るとクラウドマンの両足が無くなり、その分背が低くなっている。
そして、クラウドマンの体、いや、ほぼ雲が、まるで押し寄せる波のように私を襲った。
「きゃー!」
足をとられて、転倒する。しまった、こんな攻撃もしてくるんだ。
ダメだ、雲の体に捕らえられた両足が動かない。シャインと一緒だ。これは、ひょっとしたらまずいかも。
「にゃー!」
(二リハ、危ない、火魔法!)
そこに、モエルが魔法と共に飛び込んできた。
モエルの火魔法が大きくクラウドマンに当たると、大きな湯気が立ち上る。
その時、クラウドマンの拘束がゆるんだ。
「今!」
「キュー!」
(助かった!)
私は立ち上がり、シャインは一旦距離をとる。
回復役のシャインは離れて正解。けれど前衛の私は、むしろ前へ進む。今が絶好のチャンスだ。
腕を斬られても全く動揺しなかったクラウドマン。だけど、今モエルの魔法をくらって、動きを止めている。
それはつまり、弱点の雲石にダメージが入ったってことよね!
立ち上る湯気の先を見通すように目を凝らすと、見つけた。クラウドマンの中にあった、拳サイズの薄紫色の石!
ここだ!
「パワースラッシュ!」
私の剣が、雲石にヒビを入れる!
すると、クラウドマンの残っている体が大きく震え、わずかに霧散しだした。
よし、もう一息!
と思ったところで、まだクラウドマンの体に埋まっていた両足が再び引っ張られ、私は転倒してしまう。
あともう少しのところで、しぶとい!
そう思っていると、上からミドリが急接近してきた。
「ピー!」
(あそこを狙えばいいのね、木魔法!)
一瞬で生み出された尖った枝が、まっすぐ雲石に突き刺さる。
すると、クラウドマンは完全に動きを止めた。
雲の体が、少しずつ崩れていく。
倒したんだ。こちらにダメージはないけど、結構手ごわかった。
いや、やりづらかったかな。モエルの魔法のおかげで、大分助かった。
「ふう」
ひとまず一安心して、立ち上がった。
「思っていたより、やりづらい相手だったわ」
少なくとも、私だけの力ではやられていたかもしれない。
やっぱり4ランクのモンスターを一人で相手するのは、まだきついか。
「やった、か?」
「勝ちましたね、二リハさん!」
「二リハさん、大丈夫ですか!」
ランゾ、ポリシャ、キュールが近づいてくる。
「ええ、なんとかね」
私はクラウドマンの討伐証明部位である雲石を手に取った。
刺さっている枝を抜いて、よし、これで依頼は一応達成だ。
「モエル、ミドリ、ありがとう。おかげで助かったわ」
「にゃあ」
(まあな。とどめを譲ったのは、少し残念だが)
「ピー!」
(そんな小さい的を隠してるなんて、ずるいやつだったわ!)
「そうね」
クラウドマンの雲石を攻撃するのは難しかった。このいやらしさも強さの1つなのだろう。
「キュー」
(ごめんなさい。ボク、捕まってしまいました)
「なんとかなったんだから、いいわよシャイン。でも、今度からは気をつけてね。今回の敵は、相性が悪かったの」
「キュー」
(はい)
「とにかく、倒せて良かったわ」
キュール達の前ではちょっとカッコ悪かったかもしれないけど、クラウドマンがどう危険かというのも伝わったはず。
うん。そう思っておこう。そして次はたぶん、もっとスマートに勝ってみせる。




