陽向とトキとミチル(2)
参道の端を歩く三人。足取りは軽くなっていた。三人の中では、随身門の出来事は、緊張と疲れから睡魔に襲われたということになっている。そのおかげなのか、気力、体力は朝以上に漲っていることを玉砂利の音が奏でていた。
拝殿へと繋がる参道を見渡すと、いたるところでユウナミの神の息吹を感じずにはいられなかった。
実菜穂がこの社で一番に感じたのは、鴇色という世界である。日が沈むあの一瞬に浮かび上がる色。夕暮れというもの悲しく寂しいイメージはない。むしろ、心が動く、ワクワクする気持ち。楽しかった一日であれば、それが明日も続く楽しみを待ち焦がれる気持ち。嫌なことがあった一日なら、それを洗い流し、これから何か楽しいことがあるように期待する気持ち。夕刻に感じるまだ何かが待っているという心躍るような気持ちである。それならば、ユウナミの神は、人に悲しみを与える神ではない。むしろ、次へと繋げる神なのだ。
(ユウナミの神、どのような神様なのだろう。慈愛の神……アサナミの神とは違う雰囲気。ユウナミの神のイメージ。ひょっとして私の想像以上にユウナミの神は)
実菜穂は足下の玉砂利を見ていた目を上げると、目に映った姿に思わず子供じみた高い声を響かせた。
「あーっ!」
実菜穂が声を上げたときには、既に陽向も真奈美もその現れているものを見ていた。実菜穂だけがワンテンポ遅れて気がついた格好である。なんとも、間が抜けているシーンだ。
「陽向さん、あれは?もしかして」
真奈美は目を大きくしながらも冷静に陽向に確認をすると、陽向もウンウンと頷いている。
「陽向ちゃん。あれは狛犬だよね」
実菜穂が「わぁ~」と言う表情で目の前に現れたものを見ていた。
それを見つめる実菜穂は興味深く優しい顔をしていた。
陽向も同じように優しく無邪気な表情で眺めている。その陽向の影は、本当に明るく子供のような目をしていた。透明でまだ何色にも染まらない瞳を鴇色の景色が染めていた。




