表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/149

乱入者の正体


 突如ベトベムのギルドに現れた謎の男は、ソセジさんとエンカによって剣で攻撃された。だが、奴はまだ魔力を解放している。あの攻撃を受けても致命傷にならないのか!


「二人とも気を付けて! あいつはまだ動く!」


 私の声を聞いた二人は、すぐに後ろに下がった。その瞬間、奴の周囲に雷が放たれた。


「ふぃ……結構痛かったよ、さっきの攻撃。けど、私の命奪うまではいかないね」


「クッ! 結構力を込めて振るったのに!」


「奴はかなり強い。慎重に戦うぞ」


 ソセジさんの言葉を聞いたエンカは頷き、剣を構えた。だけど奴は二人の方を注目せず、私の方を見ていた。


「雑魚二人に用はないよ。私に致命傷を与えられない雑魚を相手に戦っても面白くない」


「なっ! ふざけるなよクソ野郎!」


 この言葉を聞いたエンカは怒り、奴に飛びかかろうとした。だが、ソセジさんがエンカを止めた。


「奴の挑発に乗るな。冷静を保て」


「だけどよー!」


「その状態で戦っても隙を突かれてやられるだけだ。悔しいが、ここは大人しく引くぞ」


 ソセジさんの言葉を聞き、エンカは悔しそうにうなずいた。その光景を見ていた奴はにやりと笑っていた。


「で、私と戦うつもりなの?」


 私がこう聞くと、奴は私の方を振り向いて答えた。


「その通り。君となら素晴らしい戦いができそうだ。ま、本当はここのギルドの連中を始末して会議の邪魔をしろってアソパさんから言われたんだけど……あ」


 奴の返事を聞き、私はにやりと笑った。アソパの情報を知っている奴がのこのことここに来るなんて好都合! 斬り倒して情報を聞き出してやる!


「さぁ、覚悟しなさい」


「うーん……仕方ない。こうなったらエクス・シルバハートを始末するしかないか」


 男はそう言うと、爪を構えて私の方を見た。


「私の名前はチョマベ。以後お見知りおきを」


「いちいち倒す相手の名前なんて覚えていられないわよ!」


 私は叫びながらチョマベに飛び蹴りを放った。奴は爪で私の蹴りを防御し、力を込めて爪を振るった。私は宙で一回転しながら床に着地し、剣を構えなおした。だが、奴はその隙に私に接近した。


「猿みたいに軽快な動きをしますねぇ!」


「誰が猿よ。あんたも同じような動きをしているじゃない」


 私は飛びかかって来た奴に向かって、剣を突き出した。奴は間一髪で突きの攻撃をかわし、私に向かって右手の爪を突き出した。奴の攻撃の狙いは私の頭。そう察した私は頭を動かして奴の攻撃をかわし、左手で風の塊を作って奴に押し当てた。


「そんな攻撃、意味があるのかい?」


 奴はへらへらと笑いながらこう言ったが、風の塊が奴に触れた瞬間に破裂し、強い衝撃波を放った。衝撃波を受けた奴は猛スピードで後ろに吹き飛び、壁に激突した。


「グアッハァッ!」


 壁に激突した際、奴は大きなダメージを負っただろう。口から痛そうな悲鳴が聞こえた。その後、奴はふらつきながらも床に着地し、私の方を睨んだ。


「いいねぇ……剣だけじゃなくて魔力も使えるんだね……これほどエクス・シルバハートが強いなんて思わなかったよ」


「暗殺未遂事件の後、いろいろと動いたからその時以上に強くなったみたい。観念しなさい。今のあんたじゃ私に敵わないわ」


 私は勝ち誇ったかのように奴にこう言った。だが、奴は魔力を解放して笑い出した。


「本気を出すしか手はないねぇ! 本気を出した私に敵う敵は存在しない。つまり、私が本気を出したら相手は死ぬってことだよ!」


「それじゃあ私が、あんたが本気を出して戦っても初めて死ななかった戦士になってやるわ。光栄に思いなさい」


 私がこう言うと、奴はドリルのように回転しながら私に突っ込んで来た。


「エクスさん! どうにかしないと深い傷を負いますよ!」


 後ろで戦いを見ていたティノちゃんが叫んだ。私は近くにいたエリート戦士の方を見て、頭を下げた。


「すみません。少し床が壊れますけど、勘弁してくださいね」


 私はそう言うと、素早く剣を振るって床を斬った。そして、床の斬った部分を剣で突き刺して持ち上げ、盾のようにした。


「なっ……何!」


 こんな滅茶苦茶な方法で攻撃を防ぐなんて、奴は考えていないだろう。予想通り、奴の爪は盾にした床に命中し、ドリルのように削りだした。ここのギルドの床はいい素材を使っているせいか、かなり固い。掃除でもすればつるつるして滑るだろう。だが、いい素材を使っているおかげで奴の攻撃を防ぐことができた。私の剣技と比べて、奴の技はあまり大したものじゃないようだ。


「グッ……クッソォ!」


 床が削れる音が聞こえなくなり、奴の悔しそうな声が聞こえた。様子を見ると、奴は床に食い込んだ爪を取り外すため、あれこれやっていた。奴は私が近くにいることを察し、両手に雷を発した。


「近付いてみろ。その瞬間お前を感電させるぞ!」


「その前にあんたの手を斬ればどうってことないわ」


 と言って、私は剣を振るって奴の両手を斬り落とした。これで奴は攻撃できなくなっただろう。奴は悲鳴を上げながら失った両手を見て、動揺していた。


「そんな……私の手が……こんなあっさりと……」


「あらまぁ。痛々しいわね。でも、あんたみたいな悪党がそんな顔をするの、面白いわね」


 私は笑顔でそう言うと、奴の両足を斬り飛ばした。手に続いて足を失った奴は、情けない声を上げながらその場に落ちた。ふぅ、これで戦いは終わった。




 その後、会議は一時中断することになった。ギルド内を見回したが、侵入してきたのはチョマベ一人だけだった。


「一人だけでこのギルドに乗り込むなんて、結構度胸がある人でしたね」


「奴のせいでこのギルドの戦士の一部が命を落としたわ。それに、アソパの部下と言っていた。幹部に近い奴だから、それなりに実力があったんでしょう」


「でも、エクスさんはあっという間に奴を倒しましたよ」


「私が奴より強くなっていたってこと。いつの間にか、レベルアップしていたみたいね」


「ゲームみたいに言わないでくださいよ」


 私とティノちゃんが話をしていると、ベトベムのギルドの重役が近付いた。


「騒動を収めてくれてありがとう。君がいなかったら、被害は広がっていた」


「お礼はいいです。先に、奴によって殺された人たちの埋葬や、傷付いた人の手当てを行ってください」


「今、係りの者がやっている」


 重役の人はそう言うと、深いため息を吐いた。そりゃそうだ。ギルドの中央と言われるベトベムのギルドに侵入者が入り、死傷者を出してしまったからだ。プライドも傷ついただろう。


「まさか、こんなあっさりとジャッジメントライトの戦士が侵入してくるなんて思ってもいなかった」


「裏切り者が手引きをした可能性もあります。もう一度、このギルドの全部の戦士の身元を洗った方がいいです」


「そうだな。時間がかかるが、確実に裏切り者をあぶりだすためには仕方ない。今すぐやろう」


 重役は立ち上がると、何かを思い出したかのように私とティノちゃんの方を振り向いた。


「確か、侵入者はアソパの部下と言っていたね」


「はい。今後の取り調べで、アソパに関する重要な情報を知ることができると思います」


「そうだな。エクス君、ティノ君。君たちの部屋を用意するように役員に伝えておく。今日はその部屋で休んでくれ」


「分かりました。お言葉に甘えます」


 重役はそう言うと、去って行った。


 しばらくして、私とティノちゃんは役員の人に案内された客用の部屋にいた。


「うわ……こりゃまたすごいな」


 思わず私は言葉を漏らした。普通のギルドの客用の部屋は質素なもので、ベッドや机、テレビが置かれている。それ以外にもシャワーとトイレもあるが狭い。だが、ベトベムのギルドの客用の部屋はとんでもなく豪華だった。部屋は広いしテレビもでかい。ベッドもダブルベッドじゃないかと思うくらいでかい。シャワールームを見た私はさらに驚いた。広い浴槽がある。


「うわぁ。これなら旅や戦いの疲れもあっという間に取れそうね」


「そうですねぇ。早く入りたいです」


 私とティノちゃんは目を輝かせながらこう言った。豪華な部屋で寝るのは初めてだ。とりあえず今日は休むとしよう。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想、質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ