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ギルドに侵入した者との激闘


 エクスが俺を手にした。俺の切れ味を頼るほど、ドロブと言う奴は強敵なのだろう。奴はギルドの戦士を何人か殺した。それでも、エクスと戦う余裕がある。まだ、魔力と体力を温存しているのだろう。


(エクス、奴の技に気を付けろ)


(攻撃を受けた戦士の死体を見て、どんな技か判断しました。あいつが使う鉄砲水は本物の銃と同じくらいの威力があります。殺された戦士たちも、それを受けて命を落としたと思われます)


 流石エクス。死体の様子を見てどういった技で致命傷となったのか判断している。だが、これで分かったのは奴の技の内容。奴を倒すきっかけにもならない。そう思っていると、ドロブがエクスに向かって剣を振り下ろした。


(行きますよ、ヴァーギンさん!)


(ああ! 存分に俺を使え!)


 俺はエクスに自分を使えと、自分を頼れと伝えた。それが伝わり、エクスは渾身の力を込めて奴の剣の刃を破壊した。


「おやおや。すごい切れ味の剣を持っているんですね。それがツデクを倒した時の本気の力なんですね」


「そうよ。文句ある? あんたもツデクと同じように斬り倒してやるわよ」


 エクスがこう言うと、ドロブは小さく笑って後ろに下がった。


「それは勘弁。私の目的は任務に失敗した奴らの後始末。君と戦うのは目的ではないのでな」


「逃げるつもり? ジャッジメントライトの戦士ってかなり臆病ね。憎き怨敵が近くにいるのに、敵わないから逃げるだなんて」


「勝てない敵を相手に戦うな。これ、私が自分自身に言い聞かせている言葉なんでね」


 そう言って奴は周囲に待っている水を一つにまとめ、廊下の壁を壊した。あいつ、あそこから逃げるつもりか!


「それではごきげんよう。本当は君を殺したいんだけど、状況が悪いのでね」


「状況も何も関係ないわ。あんたはここでぶっ倒す!」


 エクスは全身に魔力を解放し、運動神経を上げて猛スピードでドロブに突進した。エクスの動きをあいつは見切れなかったのか、突進を受けた際かなり動揺していた。あの速さを見切ることができなかったようだ。


「グッハァッ!」


 突進を受けた奴はダメージを受けたようだ。エクスはそのまま奴を穴が開いた壁に押し、そのまま外へ飛び出した。


(外で戦うつもりか?)


(そのつもりです。周りに被害が及ばないように素早く終わらせるつもりです)


(そうか。こいつはギルドの戦士を倒せるほどの実力者だ。気を付けろよ)


(はい!)


 エクスが返事をした直後、エクスとドロブは地面に激突した。だが、エクスはドロブをクッションにして激突のダメージを抑えていた。


「ガッ……ガハァッ! ゲホォッ!」


 落下時の衝撃が相当きつかったようだ。ドロブは苦しそうに何度も咳き込んでいた。だが、まだ魔力を感じる。それどころか、魔力が徐々に強くなっている。逃げるつもりだったが、エクスを倒す気になったのだろう。




 ドロブをクッションにして落下のダメージを抑えることはできた。これで奴に大きなダメージを与えることはできたけど、魔力が強くなっている。この傷を受けて戦うつもりなの?


(エクス、こいつはまだお前と戦うつもりだぞ)


(分かっています。魔力が徐々に上がって来ています。落下時、何本か骨が折れたと思うんですけど)


(お前に対する怒りで痛みを感じないのだろう。だが、手負いとはいえ気を付けろ。怒りで我を忘れた敵は何をするか分からない)


(はい)


 私がヴァーギンさんに返事をした直後、騒動を聞きつけたエンカたちギルドの戦士が駆け付けた。


「おい! ギルド内に侵入した奴がいたって聞いたけど、そいつがそうか?」


 エンカの声を聞き、私はそうよと答えたが、その答えを聞いてすぐにギルドの戦士たちが一斉にドロブに攻撃を仕掛けた。


「この野郎! よくも俺たちの仲間を殺しやがったな!」


「あの世で俺たちの仲間に懺悔しろ!」


「クソ野郎! くたばっちまえ!」


 仲間を殺された怒りで、戦士たちは暴走している。私は大声で彼らに止まるように伝えたが、その言葉は伝わらなかった。魔力を強く開放したドロブは、とどめを刺そうとした戦士たちに向かって水で作ったチャクラムを放った。この攻撃を受けた戦士は体の一部を落としながら、その場に倒れた。


「あ……ああ……」


 エンカは仲間が殺される光景を見て、その場に座り込んで動揺し始めた。他の戦士たちもそうだ。後ろに下がりつつ、逃げ始めた。


「ふぅ、酷いことをしますね」


 魔力を解放したドロブは、立ち上がりながらこう言った。私はすぐにエンカに逃げてと言ったが、エンカは立ち上がることができず、ひたすら動揺していた。私はドロブの視線がエンカの方を向いていることを察知し、急いでドロブに攻撃を仕掛けた。奴は私の攻撃をバリアで防ぎ、笑みを見せた。


「おやおや、慌てていますね」


「この……腐れ外道!」


 私は力を込めてヴァーギンさんを振り下ろし、奴が張ったバリアを破壊した。奴はバリアが壊されることを予想していて、後ろに下がって私に向かって水のチャクラムを発した。


「クッ!」


 私は体を動かしたのだが、水のチャクラムは私の左肩に深い傷を与えた。


(エクス!)


 心配するヴァーギンさんの声が脳内で響いた。苦痛の表情をする私を見て、ドロブは笑っていた。


「少しの動揺が隙となる。片腕だけでは、剣をまともに降ることもできないでしょう」


「片腕だけ? あんた、ちょっと能天気な所があるんじゃない?」


 奴は私の攻撃手段を封じたと思って笑っていた。それは大きな間違いだ。基本、私は両手で剣を使っている。両手で使う理由は何となくと言うか、扱いやすいからだ。だが、どちらかが傷を負って両手で使えない時のために、片手で剣を使う技術も手にしている。私はヴァーギンさんを右手で持ち、奴を睨んだ。


「ほう。片手で戦うつもりですか」


「そのつもりよ。文句ある?」


「今から死ぬ人に対して文句はありません」


 奴はそう言って私に向かって何発もの水のチャクラムを放った。当たれば痛いが、何度も見た攻撃だから動きを見切ることができる。こんな攻撃、今の私には意味がない。


「あ……当たらない!」


「何度も同じ攻撃をしない方がいいわよ。いずれ、動きを見切って対処されるからね」


 私は奴に接近してこう言った。近くに私が来たことを知って奴は動揺したが、その隙に私は奴の腹に蹴りを入れた。


「グガッ! グワァァァァァ!」


 腹を蹴られただけでこんなに悲鳴を上げるとは。どうやら、落下時のダメージがまだ残っているようだ。奴は腹を抱えながらその場でうずくまり、私を睨んでいた。痛みが体中に走ったせいか、奴の魔力はかなり弱くなっていた。


「さて、よくもギルドの戦士や力のない役員たちを殺しまくったわね。そして、私の左肩もかなり傷つけた。こいつはかーなーりー大きなお仕置きをしないといけないわね」


「大きなお仕置き? ふざけるなよ、ジャッジメントライトの邪魔をする奴が天罰を受けるべきだ!」


「天罰を受けるのはあんたらよ、腐れド低能の犯罪者共が!」


 私は叫びながら奴に接近し、奴の両腕を斬り落とした。両腕を失ったことを察した奴は、泣き叫ぶような悲鳴を上げようとした。その隙に、私は奴の左足も斬り落とした。


「命を奪わないだけ、ありがたく思いなさい。あんたみたいな奴は、一生刑務所の中で懺悔してればいいわ」


 私はヴァーギンさんを鞘に納めながら、激痛を感じて叫んでいるドロブにこう言った。その後、戦いが終わったことを察したギルドの戦士たちが駆け付けた。私は戦いのことを全て話し、ギルドの戦士は驚きの表情をしていた。そりゃそうだ。捕まった仲間を殺しにジャッジメントライトの戦士がギルドに侵入したし、そいつのせいでギルドの戦士たちも命を落とした。


 その後、私は戦士の遺体や泣き叫ぶドロブを運び出すギルドの戦士を見ながら、その場に座って左肩の治療をしていた。そんな中、大急ぎで走って来るティノちゃんの姿を見つけた。


「エクスさん! 大変です、大変で……うェェェェェェェェェェェ! エクスさん、その左肩の傷は一体何ですか!」


「あーこれね。ちょっと隙を突かれてやられた」


「ちょっとどころの傷じゃないですよこれ! うわ……深く斬られてる。すぐに治療するので待っててください!」


 と言って、ティノちゃんは大急ぎで治療を始めた。今、このタイミングで戦いのことを話したらまずいなと思い、私は静かにティノちゃんの治療を受けることにした。


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