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テロ当日の動き


 何とか戦いに勝利できたけど、この戦いでギルドの戦士や役員たちが殺されてしまった。そして、私が捕らえた立てこもり犯もドロブに殺された。もう少し早く騒動に気付いていれば、被害が少なく済んだのに……。


「酷い傷……エクスさんをここまで傷つける人は初めてですよ」


「私も少し驚いたわ。片手で戦う羽目になったわ」


「片手だけ? それで敵を倒したんですか?」


「うん。ちょっと本気出した。とりあえず勝てたのはいいんだけど……」


 ティノちゃんは私の表情を見て、犠牲者のことを考えているのだと察したようだ。私がため息を吐きながら周りを見ると、大泣きしているエンカの姿を見つけた。


「先輩! 教官! 生きているなら返事してくださいよ!」


 どうやら、亡くなった戦士の中にエンカの先輩や教官がいたようだ。泣いている様子を見ると、どれだけ亡くなった戦士を慕っていたのかが分かる。他の戦士がエンカの先輩や教官の遺体を運び出したが、エンカは泣きながらそれを止めようとした。


「待ってくれよ! もしかしたら生き返るかもしれねーじゃねーか!」


「人は死んだら生き返らない。考えてみろ、急所を攻撃されているんだ。これで生きてる方が怖いよ」


「気持ちは分かる。だが、現実を見るんだ。俺だって仲間が死んだことを悔しく、悲しく思っている」


「う……う……うァァァァァァァァァァ!」


 エンカは叫びながら地面を殴った。私はこの光景を見て、かわいそうだと思った。だけど、今のエンカを慰めることはできない。何を言っても今のエンカに慰めの言葉は届かないし、精神面がかなり弱っている。これだけは時間が過ぎるのを待つしかない。


 しばらくして、ティノちゃんの治療は終わった。おかげで左肩の痛みがそれなりに収まった。


「ありがとうティノちゃん。それで、私が捕まえた立てこもり犯は全員殺されてたの?」


 私の言葉を聞き、ティノちゃんは驚きの表情を見せた。


「どうして知っているんですか? 確かにエクスさんの言う通り、立てこもり犯は全員殺されていました」


「戦っている最中、ドロブが任務を失敗した奴を処分したとかそんな感じで言っていたから。で、どんな状況だった?」


「額と左胸を何かで貫かれていました」


「鉄砲水で急所を撃ったのね。多分、脳と心臓を貫いて苦しむことなく殺した」


「何でそんな酷いことをするんでしょうか? 仲間なのに」


「仲間だからよ。苦しむ姿を見たくないから、苦しむことがないような殺し方をしたのよ。多分」


 私はティノちゃんに推測を言ってため息を吐いた。だが、訳が分からない。捨て駒のように使うくせに、殺す時は苦しまないように殺すとか……あいつら自身、仲間にそこそこ情があるのかしら? まぁ、悪人の人情なんて知ったことじゃないけど。


「ティノちゃん、とりあえず部屋に戻りましょう。ドロブの取り調べは取り調べのプロに任せて、私たちは休むわよ」


「はい。でも、部屋に戻る前にちゃんとお医者さんに傷の具合を見せてくださいね」


「分かった。それじゃ、ティノちゃんはヴァーギンさんと一緒に部屋に戻ってて」


 私はティノちゃんにヴァーギンさんを渡し、医務室へ向かった。向かう中、私は右腕を回したが、痛みはなかった。ティノちゃんの治療術は完璧だと思うんだけどなー。




 翌朝。私はパンを食べながらテレビニュースを見ていた。すでにメディアの連中が今回の事件のことを嗅ぎつけ、祭りのように騒いでいる。はぁ、あいつらは視聴率のためならどんなことでもやるからなー。ニュースにしたって、こんな事件がありましたーって伝えればいいのに、余計な情報を流す。被害者や容疑者の人間関係や、周りの人たちが語る人物像なんてどうでもいいし、余計な深堀をしてくる。プライバシーって言葉を奴らは知らないのかしら? 知る権利があると言われるが、余計なことまで知りたくない。そう思いながら、くだらないニュースを見ていると、エンカが私とティノちゃんの席に近付いた。


「おい、俺の上司があんたらを呼んで来てくれって言ってたぞ」


「お呼び出し?」


「昨日、あんたが倒したジャッジメントライトの奴が口を割ったらしい」


 その言葉を聞き、私は急いでパンを口の中に放り込み、コーヒーを飲んで無理矢理パンを飲み込んだ。そして、取調室へ走り出した。


「待っていたよ。奴は次のテロについて重要なことを話してくれた」


 エンカの上司が、私とティノちゃんの姿を見て口を開いた。私は返事をすると、エンカの上司は話を続けた。


「予想通り、奴らはアチーナ氏の演説当日にテロを起こすつもりだ」


「やっぱり。で、どんな方法で?」


「デリートボンバーを使うようだ。演説台と、逃げ道になりそうな箇所に地雷のようにデリートボンバーを埋めるようだ」


「地雷のように? あいつら、地雷型のデリートボンバーを開発したのね」


「そのようだ。テロが起こることが確定したため、三日前にアマデウス公園を包囲することに決めた」


「それがいいですね。ギルドの戦士がいれば、奴らは動けないと思います」


 私の言葉を聞き、エンカの上司は不思議そうに声を出した。


「思います? 我々がいると、確実に動けないと思うのだが」


「奴らの中に、戦士を倒すほどの実力者がいます。そいつらがいれば見張りの戦士はあっという間に倒されます。それと、前もって私たちが動いても、それより先に奴らが動く可能性もあります」


「前もってデリートボンバーを設置するのか。ありえるな。今すぐにでも動いた方がいい」


「そうです。本当は私も動きたいのですが……」


 私はそう言いながら左肩を見た。痛みはないのだが、奥深く斬られたため、しばらくの間安静にするようにとギルドの医者から言われたのだ。恐らく、当日まで動けない。まさかこんな形で動けなくなるとは思わなかった。


「そうか……では、見張りは我々に任せてくれ」


「了解しました。何かあったら、連絡をお願いします」


「大丈夫だ。エクスさんは傷の完治に専念してくれ」


 そう言って、エンカの上司は去って行った。




 話が終わった後、エクスとティノは部屋に戻った。エクスが大怪我を負ったため、当日まで動けない。ギルドの戦士だけでは少し不安だが、当日までは彼らに見張りを任せるしかない。


(ヴァーギンさん、アチーナさんはジャッジメントライトに対してどんなことをやったのですか?)


 エクスが俺にこう聞いて来た。アチーナさんがジャッジメントライトにやってきたことか。いろいろあるから、思い出しながら話そう。


(そうだな。まず、奴らの小さな施設を見つけ次第摘発して関係者を捕まえた。この施設で働く奴らが勧誘役で働いている。それと、政治家絡みの問題。これは一筋縄ではいかなかったから、アチーナさんはメディアや週刊誌を利用し、ジャッジメントライトと関係があった政治家を陥れた)


(でも、ジャッジメントライトは表側ではボランティア活動をしている団体だと思われています。名前を出しても大丈夫なんでしょうか?)


(裏ギルドということにしてある。他にも、ジャッジメントライトの募金活動を裏で妨害などやっていたな。だが、反ジャッジメントライトで動いている政治家はアチーナさんだけだったから、何度やっても奴らは不死鳥のごとく蘇る)


(悪人のくせにしぶといですね)


(まだまだ勧誘のための施設は残っているからな。人が減ればまた増やせばいいから)


(メンタル的に陥っている人ほど、ジャッジメントライトみたいな連中に目を付けられ、騙されて仲間になってしまうんですよね)


 と、ティノが話に入ってきた。


(その通りだ。人を助けるのは人。神に頼っていたら、何でもできなくなる。目に見えるものよりも目に見える善人を信じろ。そういうことだな)


(そうですね。弱っている時ほど、悪い人にあれこれ言われてつい信じてしまうんですよね。テレビやネットニュースでそういう人たちもいるって聞いたことがあります)


(ジャッジメントライトはそう言った人たちを利用する悪い奴らだからな。何としても、奴らを倒さないと)


(はい! 私が悪い奴を斬りまくります!)


(エクスさん、物騒なことを言わないでください)


 物騒なことを発したエクスに対し、ティノは少し引いていた。だが、エクスみたいな悪を許さない心を持つ剣士の存在が、この世に必要なのかもしれないと俺は思った。


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