065 覚悟
六槍師が集まった日の夜。ディープ宅では二人の少年が何やら真剣な表情で睨み合っていた。
「うーむ……。これだ!あっ」
「ハヤトお前……弱いな。悪いけど先に上がらせてもらうぜ!」
「くそ〜また負けたよ〜運ゲー強いなバールは」
二人がまた一からゲームをやり直そうとした時、誰かが疲れた様子で帰ってきた。
「ただいま〜」
「あ、ディープさんおかえり」
「何やってんの?あんた達。」
ディープが粘りつくような視線で二人を見つめる。
「ババ抜き。ディープさんもやる?」
「やらないわよ。まったく、子供じゃあるまいし……」
バールの誘いをやれやれと断ったディープ。二階の部屋に荷物を置こうと、階段を登ろうとした時、今度は誰かがバタバタと階段を降りてくる。
「ちょっと!!私のアイス食べたの誰よ!!」
「あらベイリーちゃん、あんたも来てたの?」
アカツキ義勇団のベイリーという少女も来ていた。ディープのように長くて茶色い髪の毛を二つに結んでいる。
「あ、ディープさん聞いてくださいよ!せっかくトキさんに珍しいアイス食べさせて貰えるって楽しみにしてたのに、この中の誰かが食べちゃったんですよ〜!」
「トキさん……この子達のこと孫みたいに扱ってますね……」
「ふぉっふぉっふぉ。せっかく手に入ったのに、もったいないのう。」
「わんわん!」
今日のディープ宅はとても騒がしい。テワ国の事で頭を悩ませていたディープは、早めの犯人探しに出る。
「バール、あんたの口、甘い匂いするわよ。」
「げっ……ディープさん犬みたいに鼻効くんだった……。」
「バレちゃったね」
「バール!!私のアイス返せ!!」
「わんわん!」
少し横になりたいからと、どんちゃん騒ぎのリビングを離れ寝室に移動するディープ。それをトキが制止する。
「お主、何かあったな?」
ディープの疲れをトキは見抜いていた。
「ええ……実は……まぁ、この際だからバール達も聞いてちょうだい。」
師匠の一言で大人しくなるバール達。
「今、隣のテワ国で不可解な失踪事件が多発してるの。あんた達と同じくらいの子が次々と消えているんだけど、何も手掛かりが無くて……。」
「ディープさん、テワ国に行くんですか?」
ハヤトが質問した。
「ええ、義勇団からも何人か連れて行きたいんだけど、そもそもあの国は何があるのかハッキリしてないし、色々と危険なのよ。その準備に追われてて……」
「なら、俺らがいくよ」
ディープの唯一の弟子であるバールが名乗りをあげた。バールが行くならボクも。とそれにハヤトも続く。
「ベイリーは?」
「わ、私はまだ『特』が使えないし……。」
危険という言葉に怖気付いたのか、テワ国行きを躊躇うベイリーを、バールが軽く小突く。
「なら、留守番しててくれ。その間に俺ら成長してくるからよ。」
おそらくベイリーは負けず嫌いなのだろう。バール達に先を行かれまいと言い返す。
「じゃあ行くわよ!!その代わり、敵がいたら守ってよね」
「ベイリー、シャールに色々教わってるんでしょ?じゃあシャールにも来てもらおうよ」
ハヤトも話に参加したところで、勝手に話を進めるバール達にディープがこう言い聞かせる。
「いい?あくまでも目的は調査よ。もし何かがいても、今回は戦わずに帰ってくる。それができるなら連れて行くわ。相手のことを何も知らずにただ闇雲に攻めても意味ないからね?」
ディープの言いつけを素直に受け入れるバール達。こうして、テワ国での調査に参加するメンバーが決まったのだが、果たしてテワ国ではいったい何が起こっているのか。そしてバール達の身に何が起こるのか。それはこの段階では誰も知る由も無かった……。




