039 悩み
〜フメイ大陸・デネグ共和国〜
部屋に戻り、身体を休めるように言われたが、どうやら眠れないようだ。歩くだけで軋んだ音がする廊下を、ビュウが歩いている。
こんな夜中に何をしに外に出るのだろう。
ポケットに手を入れながら、玄関を抜ける。
すると、近くに人影があった。玄関を抜けた先の階段に座っている。
よう、とビュウが声をかけるも、バールの返事には元気がなかった。
どうしたものかと尋ねてみると、
「俺、もう手遅れな気がするんだ。」
何かと思えば、バールは自分が敵を目の前にして何もできなかったことで落ち込んでいたらしい。
「ハヤトがさ、普通にやれば羅天術を身につけるのに1年はかかるって言ってたんだ。あいつでも8ヶ月かかったみたいだし今から1年じゃあもう間に合わないよな。」
「何言ってんだよ!ここにいる以上、力が無いとか言ってねぇで動くしかないだろ!戦闘能力なんて敵と戦いながら上げるもんなんだよ!」
ビュウは以前からバールの身体能力と、羅天術を扱うセンスを高く評価していた。いつかの競争の時に弓矢を放ち、妨害したのもバールを認めていたからこそなのだ。
落ち込むバールにビュウが強く言う。
「あのな、バール。誰にだって元からの実力はあるけどな、実力で勝ち負けが決まるほど羅天術は単純なものじゃねえからな!」
……羅天術は単純なものではない?バールの頭に、ある考えが浮かんだようだ。
(タイミング……? )
そう。今までのバールはどうやって敵を上回る強いパワーを扱って、敵を上からねじ伏せるかしか考えてなかったのだ。
相手との相性や、相手の動きの特徴。そして常に動きを捉えて隙が空いたところで確実に一撃を喰らわせる。これだ。
時間に余裕はない状況で敵に勝つ確率を上げるにはこれしか無かった。
「ビュウ、悪かった。おかげでなんか掴めた気がする。明日から手伝ってくれねえか?」
「もういじけんなよ?」
初めて会った時、喧嘩していた2人はいつのまにかすっかり仲良くなっていた。




