028 コルネリア教
アメーメー大陸を目指す途中、ヤマト王国との戦いを終えたアメーメー大陸グループは二手に分かれていた。1つはピス大陸に戻り仲間の安否を確認したバンズ班。そしてもう1つはアメーメー大陸へと移動したサンダース。
彼は何をしにアメーメー大陸へと渡ったのだろう。
〜アメーメー大陸・北方コヘバス国〜
夏でもそこまで気温が高くならないこの地域。今日は風がとても強く吹いている。
北方コヘバス国はサンダースの出身国でもあり、他国との交流をあまりしない事でも知られている。そんな国の中心部には、ゼアの天山と呼ばれる地域があった。
「久しぶりだな。こんなところへ来るのも。」
〜フメイ大陸〜
ヒトミとメグミを倒したフメイ大陸グループも二手に分かれていた。
「ビュウ達の班は、南デネグ共和国に残ってくれ。ここは被害がとても大きい。みんなで協力するんだ。」
トゲゾウが指示を出す横で、ビュウが救護係の治療を受けている。
彼の腕は戦いで完全に折れてしまっていた。
「バールとハヤト達は、デネグ共和国に向かってくれ。あそこは被害状況が分からないから、何あったらすぐ連絡するんだぞ。」
「バール、行こう!」
バールは1人で悩んでいた。ハヤトの声は彼に届いていない。
(俺に力があれば、、目の前で人が死ぬ事なんてなかったんだ。)
バールは目の前で仲間の首が飛ばされたことを引きずっていた。
何もできなかった自分と、師匠の期待に応えられなかった自分を酷く責めた。
「気にすんな。バールが今生きているんだから、死んだ仲間の分まで頑張るだけだよ。」
ハヤトはいつもマイペースだ。かなり戦闘能力が高いことはバールも気付いていたが、普段の彼を見てもとてもそうは思えない。
しかし、先ほど動かなくなったバールを助けてくれたのは、間違いなくハヤトだったのだ。
「なぁ、ハヤト。お前なんでそんなのんびりしてられるんだ? 」
「のんびりなんかしてないよ。ただ焦ってもいい事なんて無いから、今の状況を受け入れてるだけだよ。」
「お前さ、強えよな。俺と同い年なのに何でこんなに差があるんだろうな。さっきも凄かったよ。あんな岩ごと敵を真っ二つにするなんて、普通の奴にはできない。」
「そんな褒められた事ないからなんか照れるなぁ。けど、バールもこれからどんどん強くなるよ。ボクはそんな気がする。」
2人は互いを高め合いながら、デネグ共和国へと向かうのであった。
〜クベック大陸・アーグラパー王国〜
「かなり復興が進んでるわね。ここだけ技術が発展してるだけあるわ。」
ここアーグラパー王国サンタリパパは、クベック大陸、いや世界的にみてもあらゆる産業が発達している地域である。
ロスクルド帝国はここを最初に襲撃したのだ。
ディープとエドが到着すると、すでに救護係が被害を受けた人の対応をしている。
「病院が足りなくて、野戦病院を建てるしか無かったそうです。私達が到着するまでは医師も足りなくて治療が全然進まなかったらしくて…… 」
モエが説明する。
彼女の母は医療がとても発達している国で育ったためかモエもその能力を受け継いでいるのだ。
その能力を買われてトゲゾウの元で修行している。
「でも、少し困ったことがあるんです。」
「困ったこと? 」
「はい。なぜかサンタリパパには輸血用血液製剤が無いんです。私達の能力では血を増やす事はできないので輸血しようと思ったのですが…… 」
世界では採血さたままの血液ではなく、患者が特に必要とする成分だけを輸血する成分輸血が主流になっていた。現在では採血された血液を使っている国はほとんど無いらしい。
「おかしいわね、これだけ発展している国なのに血液製剤が無いなんて。採血されたものはないの? 」
「それも無いんです。それは私達の血液でなんとかなるんですが…… 」
まだ何か問題があるらしい。
「サンタリパパの人達は、輸血を酷く怖がっている様で、どう話し合っても受け入れてくれないんです。」
「それって…… 」
「コルネリア教。」
エドがすかさず口を挟む。
「コルネリア教? 」
コルネリア教。ロスクルド帝国が起源とされる宗教の1つ。人類には皆悪魔の血が流れているという教えの元、様々なものを受け入れることを断っている。輸血もその中の1つだったのだ。
「でもここってコルネリア教が信仰されてるなんて聞いたことないけど。」
「恐らく洗脳されたんだろう。この絶望的状況下だ。ロスクルド帝国はこいつらを利用する事に決めたんだろう。」
「でも襲ったのは彼らよ? 」
「自ら名乗らなければ、そいつがどこの出身かなんて完全に分からないだろ。心の拠り所を求める国民の前に出て、自分が救世主にでもなろうとしたんだろう。」
エドの見立て通り、サンタリパパの市民はロスクルド帝国によって洗脳されていた。考えてみれば、技術が発展していると言っても多くの被害者を出したのにこの早さで復興が進むのは困難だろう。恐らく自らの手で壊滅させたこの国復興を支援する事で、ロスクルド帝国は仲間を増やそうとしているのだろう。
「ロスクルド帝国……世界を巻き込んで何がしたいんだ? 」




