029 サンタリパパ
〜クベック大陸・アーグラパー王国〜
サンタリパパの住民がロスクルド帝国に支配されている可能性を考えたエド達は、野戦病院で治療を受けている住民に話を聞いてみることにした。
「お前達も、いつかは俺らを裏切るんだ……。」
「今は優しくしても、騙されないぞ……。」
「さっきからずっとこの様子なんです。」
モエが困った様に説明する。
「おじいさん。一体何があったの? 」
ディープが1人の老人に腰を低くして話しかける。ゆっくりと話を聞き出すのは彼女の得意技だ。
「あれは、いつもと何ら変わらない普通の日じゃった……。ワシらがいつも通り仕事をしていると、突然隣のビルが破壊されたんじゃ。」
老人は嫌な記憶を呼び戻す。
「奴らは、ロスクルド帝国と名乗っておった。その中に1人、手から炎を出す奴がおってな」
「アランね。」
この街を襲撃させたのはエドと戦っていたアランだった。
当時この街の建物の中には跡形もなく消えてしまったものもあったそうだ。
もちろんそこの住民は…
「奴はこの街を焼き尽くした。燃え盛る建物と逃げ回る住民でまさにこの世の地獄の様じゃった。
ロスクルド帝国の奴らが引き返した後も、人々に残っていたのは絶望、ただそれだけじゃ。
でもそんなとき、あの方がワシらを救ってくれたんじゃよ。」
あの方。老人がそう呼ぶ男は呆然とする住民の前に立ち、こう言ったという。
「私はコルネリア教の宣教師、ゼロだ。皆のもの、信じるものは救われる。今こそ全員一丸となって立ち上がる時では無いか? 」
「それまでは良かったんじゃが、あの男が教えを説き、住民の間に広まってしまった頃には、もう…」
「すでに人を信じることができなくなってしまった。」
「なるほど。コルネリア教のベースは人の本質は悪と言う考え方だからな。」
状況を理解したディープと理解したエド。
しかし分からない点があった。
「でもゼロとロスクルド帝国の繋がりがよくわからないわ。もしかしたらロスクルド帝国に反撃する流れになるかもしれないのに。」
「確かにそうですね。利用するなら攻め込んだ時点でロスクルド帝国と名乗らないほうが動きやすいのに……。」
「おじいさん、ありがとう。」
「や、奴らには歯向かわん方がいいぞ!」
老人の忠告を聞き、ディープらはその場を後にする。
「じゃあ、ここは頼んだわよ。」
野戦病院は救護係に任せ、自分らは次の戦いに備えて見回りを続ける。
しかしディープとエドの頭の中は、未だにゼロという男のことでいっぱいだった。
「ゼロ。一体どっちの味方なのかしら。」
〜フメイ大陸・デネグ共和国〜
「良かった。ここは無事みたいだ。」
デネグ共和国の中心、セスカーに辿り着いたバール達は何も被害を受けていない街をみて安心する。
「でも、もしかしたらロスクルド帝国が潜んでいるかも。」
ハヤトの言葉に皆気を引き締める。
トゲゾウは南デネグ共和国に残ったため、ここは六槍師無しで守らなければならない。
「ボク達でこの国を守るんだ。」
六槍師とアカツキ義勇団の活躍により一度手を引いたロスクルド帝国。しかし各大陸に散らばっていた兵士長はまた集合し、ロスクルド帝国では兵士長達の会議が開かれようとしていた。




