ありがとう
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暖かい光に目を開くと、二人は終戦の丘の中腹辺りに倒れていた。辺りには花が咲き、風がそよそよと流れている。二人の体の傷は癒えていて、もうすっかり痛みは無かった。
立ち上がって頂上の方を見れば人影が四つ。一人と三人が向かい合うように立っている。フローディがユーリエを見れば、その光景を寂しそうに見つめていた。フローディも心に感じる寂しさを隠してマキナを見る。するとマキナの体が少しずつ透けていた。完全に消えてしまう前にこっちを見て必死に口を動かす。音は聞こえないけれど、確かにその声は届いた。
「みんな、ありがとう」
マキナの体はゆっくりと空に解けていく。その光が見えなくなるまで大きく手を振って、見送った。光が全て消えたところでようやく手を下ろす。別れはあっけないほど簡単に終わってしまった。まるで何もなかったように世界は変わらない。
「行っちゃったね」
「そうだな……」
「寂しい?」
「そりゃ、まぁ、ちょっとは」
素直じゃないな。ものすごく寂しそうな顔をして何を言ってるんだか。そこではたと思い当たり、いたずらっぽく笑ってユーリエを見る。
「ユーリエ、初恋だったもんねー」
「えっ、お前、なんでそれ――――」
「伝えなくてよかったの?」
ぐっと言葉に詰まって、ユーリエは再び空を見上げる。彼女の姿を探すように遠く、空の彼方を見ている。
「……もう二度と会えないだろうからな」
「そっか。そうだね。人生は一期一会だもんね」
笑いながら釣られて見上げた空は、別れには似合わない、清々しいまでの快晴だった。人生とは一期一会。新たな旅立ちにはきっと、これくらいがちょうどいい。
これからもたくさんの出会いがあって、たくさんの別れを繰り返す。けれどもそれはけして辛いことなんかじゃなくて、これからも進んでいくための大切な一歩なのだ。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
一話を投稿した時点で、三人読んでくれる人がいれば成功だと思っていましたが、予想以上の方にお届けできて、感無量です。完結まで投稿すること完成と評するなら、この作品を完成できたのは読んでくれる人の力が大きいなと、実感しております。
見守ってくれたあなたのおかげです。本当にありがとうございます。
あとがきってなんだか感謝の言葉しか出てこないですね……。次回作の完成までに勉強、し……ます、たぶん。
最後に一つ、ユーリエとフローディのお話はここで終わりです。完結までお付き合いいただき本当にありがとうございました。




