第二話 〜雪女に惑わされて〜
「んっ……」
ここは……どこだ?
まだ視界がボンヤリしている。
「俺は一体……」
そうだ、確かあの時見知らぬ女に急に眠らされたんだ!クソっ!俺の勘が当たったのか!とりあえず酷い目に遭う前に早くここから脱出しなければ……
そう思い立ち上がろうとした瞬間だった。
「何だ?この感触……?」
俺は今寝転んでいる。恐らく眠らされていたからだ。だが何となく頭の感触が気になる。
ゆっくりと頭を上げてみる……
「っっ!?」
頭の違和感の正体、それはあの俺を眠らせた彼女の太ももだった。
つまり俺は……彼女に膝枕されていたのだ。
驚きのあまり声を上げそうになってしまった……
だが彼女は目を瞑ったまま動かない。どうやら寝ているようだ。
「にしても彼女、俺に膝枕させたまま器用に寝るなぁ……」
というか何故俺に膝枕なんてしていたんだか。
いや待てよ?彼女が寝ている今、ここから脱出するチャンスなんじゃないか?
そう思い、ここからの脱出を図ることにした。
瞬間だった。
「ふわぁ……あ、起きました?」
「何故こうもタイミング悪く起きるんだよぉぉ!?」
暫くして……
「つまり何だ?アンタは俺の顔色が悪いのを心配してくれて、妖術……?で俺を寝かせた訳か?」
「そ、そうです……グスッ」
「だから本当にすまんて……」
彼女は俺が叫んだ事にどうやらビックリして泣いてしまったようだ……
「すみません……グスッ」
「い、良いんだよ……だからもう泣き止んでくれよぉ」
彼女の親切心から起こした行動は俺の目には自分の下で働かせるために強制的に寝かせたようにしか見えなかった。
「これも俺の疑り深い性格のせいかな……はぁ」
「この度は私のせいでご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございませんでした。良ければここで泊まっていってください。」
「いやいやそんな!俺こそ勘違いしただけで……」
「うっ……そうですよね。ご迷惑をお掛けした私がいる場所でなんて寝泊まりできませんよね…ではいっその事腹を切って……!」
「ストップ!ストーップ!泊まるから!泊まらせてください!」
「で、では……!お茶をお持ちしてきます!」
そう言って彼女は部屋から出ていった。
な、何て奴だ、まさか腹を切るなんて言い出すとは……
「なんだか落ち着かないな……」
突然とはいえ知らない家に来てしまったんだ。しかも……女の子の家に。ヤバい、緊張してきた。冷や汗も出てきそうだ。な、何を焦る事があるんだ俺!こんな事でキョドるような俺じゃないだろ!
「ちょっとだけなら……部屋見ても良いかなー?」
全体的には和室って感じなんだが所々気になる所が……
「和室にベッド……?」
無意識に下を覗いてしまう。
「ん?何だ?本が」
「お茶持ってきましたよーって!何やってるんですか!?」
「うわっ!す、すまんつい!」
「もしかして……見ました?」
「い、いや?何も……?」
「そ、そうですか。なら良いんですが……」
ビックリしたー!てっきり怒られるかと思ったんだが……
その夜……
「あ、お風呂沸いたので先に入って下さーい」
「あ、おうありがとう」
何か平然と風呂まで借りてしまっている……
「ふぅー……」
何だか風呂に入るのが久しぶりな気がする。
「湯加減どうですかー?」
「あ、気持ちいいよー!何なら一緒に入るー?」
「あ、ではそうさせていただきます!」
何て冗談を言いつつ……ん?
「え!?え!?」
「ではお背中お流しいたします!」
いやいや待て待て何で平然と入ろうとしてんの!?いやまずいって!何?こっちの世界では混浴が当たり前なのか!?いつの時代だよ!?
「いや待って心の準備が……!」
「はぁぁ……」
やばいよ…人生初の混浴だよ……それも可愛い子と!
俺の理性が爆発してしまう前に早く上がらないと……
「じ、じゃあそろそろ……」
「分かりました!お背中を流しますね!」
違う、そうじゃない
「どうしました?」
クッ!この純粋な目を裏切れない!
仕方なく俺は背中を流してもらう事にした。
「ハァ……ハァ……ど、どうでしょうか?」
「え?あ、あぁ気持ちいいよ……」
何で背中を洗ってるだけでハァハァ言ってんだよ!クソっ!何か頭が熱くなってる気がするぞ……
「ハァ……では、流しますね?」
「いいよ!自分で流すから……」
「い、いや、ここは自分に任せて下さい!」
こ、ここまでされるとは……つかヤバいもうかなりヤバいんだが。
彼女が俺の体を流そうとした、その時だった。
「うっ……」
バタッ
「え?おい大丈夫……!?」
コイツは……
「い、いやそんな事より早く上げないと!」
「……んっ」
「あ、起きたか。大丈夫か?」
「はっ!す、すみませんでした!」
「い、いや大丈夫だよ」
「すみませんでした。実は私、雪女の家系に生まれているので昔から暑いのに弱くて……」
じゃあ何で風呂に入ったんだよ!つっても俺が冗談交じりに入るか?なんて聞いたからだろうけど……
「なら最初から言っといてくれよ……心配するだろ?」
「す、すみません……」
「自分の事は自分しか知らないんだし、俺が最初に言ったあれも冗談だからな?それに、自分が暑いのに苦手だってのに無理して入りやがって……これからは自分の身体にも気をつけろ。いいな?」
「は……はい!」
そう言って彼は頷いた。
次の日……
「あ、あの!すみません!」
「ん?何だ?」
「じ、実はお願いが……」
「俺に出来ることならなんでもするけど?」
「わ、私と、同棲していただけませんか!」
あー同棲ね、同棲……
え?
「えぇぇぇぇぇ!?」
こうして、雪女の男の娘との同棲生活が始まろうとしていた──




