第一話 友人はラブコメ主人公?
学年でも有数の美少女、矢口凪。
生徒会の三年の先輩、水谷里奈。
一学年下の内村桐子
俺の友人、鎌田幸助の周りにいて、明らかに幸助に好意を抱いていた三人だ。
実際、三人とも俺の所に来て、幸助の事を聞きに来ていたからだ。
しかし、彼が選んだのは三人でもなかった。
「幸助くーーん、ゴメンね、遅れて」
「おう、遅かったな」
朝、校門の前で幸助と歩いていると、一人の女子が幸助に駆け寄ってきた。
皆川美緒。
俺や幸助と同じクラスの子で、小柄でボブヘアーの可愛らしい女の子。
成績は良くないが愛嬌があり、いつもニコニコして人気者であったが、先月から幸助と付き合い始めたのだ。
「見てみて、幸助君。今日、新しいブローチ買ってきたのー」
「おお、可愛いじゃないか。みーにも良く似合うぞ」
「ありがとう。あ、佐藤君いたんだ。おはよう」
「おはよう。じゃあ、俺、行くわ。邪魔しちゃ悪いし」
「別に良いのに」
「いや、居辛いしさ。じゃあ、仲良くな」
二人が学校前でもイチャイチャしているのを見て、純粋に邪魔しちゃ悪いと思い、そそくさと教室に向かう。
幸助は割とイケメンで、勉強も運動もそれなりに出来、気遣いも出来るギャルゲーやラブコメ主人公みたいなナイスガイだとは俺も思うが、そのあいつがああいう子が好みだったとはな。
「あ……」
教室に向かう途中で、物陰からこっそりと何かを覗いている女子がいた。
この子は……同じクラスの矢口凪だ。
クラスではトップクラスの美少女で、アイドル顔負けの可愛いらしい女子として有名な子。
しかも、幸助とは
そんな子が何をやっているのかと見てみると、視線の先には幸助と皆川がいた。
「矢口さん、何やっているの?」
「え? うわああ! 佐藤君! な、何って別に……何でもないし」
「そう。なら、いいけど……」
明らかに幸助たちを見ていたが、この子は幸助の幼い頃からの同級生――幼馴染らしい。
ずっと好意を寄せていたという噂だったが、そんな想い人がポッとでの皆川に取られたとあれば、そりゃあショックだろう。
「俺、もう行くから」
「う、うん。またね」
ここで話していてもしょうがないので、さっさと教室へと入る。
いい加減、吹っ切れれば良いのにな。幼馴染なら、あいつの幸せを願ってやれよと。
というのは理想論でしかないのかね。
「それでは、生徒総会を始めます。最初に生徒会長、水谷里奈さんからの挨拶」
『生徒会長の水谷里奈です。まずは本年度の生徒会の予算について……」
午後になって生徒総会が始まり、生徒会長、水谷里奈先輩の挨拶が始まる。
藍色よりの長い黒い髪が特徴で背筋もピンと伸ばした姿が美しく、顔立ちも整った美人と評判の完璧な女子だ。
幸助は生徒会の会計をやっていて、あいつも壇上にある机に座り、他の役員と資料を見ていた。
生徒会の会計なんて、責任重そうなのによくやるよなー。
実質的に生徒会長である水谷先輩を補佐する立場でもあり、会長とはしょっちゅう放課後、打ち合わせをしている。
だからかなー……会長にも気に入られていたみたいでさ。
「あのー、ちょっと良いでしょうか?」
「はい?」
ある日の放課後、帰ろうと階段を下りていると、女子に声を掛けられる。
(こ、この人は……)
生徒会長の水谷里奈先輩ではないか。
こんな所で一体……俺に何の用だ?
「こ……か、鎌田君の事でちょっと」
「あ……ああ、あいつの事ですか」
何かと思ったら、幸助が何かやらかしたのか? それにしても何で俺に聞くのかね?
「そ、それでですね。鎌田君の……えっと、好きな物とかわかりますか!?」
「はい?」
近くの空き教室に会長に誘われ、モジモジしながら、会長が意を決したようにあいつの好みを聞いてきたので、呆気にとられる。
「ああ、すみません、急に。そ、そのー……彼、恋愛映画とか好きなんですかね? ち、チケットを貰ったので、日ごろお世話になっているお礼にと思ったんですが」
二枚の映画のチケットを取り出して、顔の前でヒラヒラさせながら、恥ずかしそうに上目遣いで俺に聞いてくる。
やば、水谷先輩ってこんなに可愛かったんだ。
普段、生徒会長としてキリっと仕事をしていて、文武両道の完璧超人のお嬢様みたいな雰囲気だったけど、こういう一面もあるのね。
「恋愛映画が好きってのはちょっと聞いたことが無いって言うか。この前、一緒に見に行った映画はアニメでしたし」
「あ、アニメですか。それはどんな? 好きな食べ物は何でしょうか?」
あいつの好きな映画とか、実は俺も知らないし、普段、映画もあまり見ないんだけど、取り敢えず好きな物とかを俺にやたらと質問してきた。
はあ、会長は幸助の事が好きなのね。
恋愛に疎い俺でもバレバレですよ、その態度は。
でもこういう所も可愛らしいし、先輩の恋が報われて欲しいなーって思ってもいたんだが。
『というわけで、今年度の各部の会計はー……』
「あーあ、生徒総会つまんない。みーちゃん、もう寝ようかなあ!」
『……お静かにお願いします』
一人の女子が会長が話している最中、会長はちょっとだけムスっとした顔を見せて咳ばらいをして、注意をする。
今、叫んだのは幸助の彼女の皆川美緒だ。
悪い子じゃないんだけど、その……騒がしくて落ち着きがない子でさ。
ウチの学校でもかなりの問題児なんだよね、あの子。
顔は可愛いし、普段は愛嬌もあるんだけど、ああ言う所はちょっとなあ。幸助も苦笑しながら壇上から見ているし、もっとキツく言ってやればいいんだ。
放課後――
「ふうう……これでよし」
ゴミ箱に入っていたゴミ袋を集積所に捨てに行き、これで掃除も終わる。
さて、帰るか……と体育館を横切ろうとしたとき、体育館の出入り口から一人の女子が目に入る。
新体操をやっている一人の女子。
ほぼ廃部状態だった新体操部の数少ない部員で、音楽に合わせて、華麗に踊っていた。
綺麗な子だなあ。
黒髪にしなやかな体型の子で、妖精みたいな美少女。
一年生の内村桐子だ。
実は彼女とは顔見知りでもあるんだ。どうしてかというと……。
「こらー、先輩。覗きは犯罪ですよ」
「へ? ああ……ゴメン」
俺の視線に気づいたのか、桐子ちゃんが俺の元にやってきた。
「えへへ、すみません、別に見てても良かったんですけど」
「いや、ちょっと目には入っちゃってさ。掃除当番だったから」
「そうですか。この前は、お世話になりました」
「そんなお世話なんて……」
「まあ、無駄でしたけど」
と自嘲気味に彼女は『無駄』というのは、幸助の事だった。
桐子ちゃんは新体操を幼いころからやっていたが、ウチの高校の新体操部は部員がなく休部状態だったので、生徒会に相談に行ったところ、対応してくれたのが幸助だったのだ。
そこで色々と世話になったらしくて、一人でどうにか活動出来るようになったらしい。
「幸助先輩、上手く行ってるんですか?」
「皆川さんと? まあ、うん。教室では仲いいよ」
「そうですか……あはは、そうなんですね。皆川先輩、可愛いですもんねえ。私みたいな面倒な女と違って」
「そんな事は……」
「その節はお世話になりました。それでは私、練習ありますので」
「うん、頑張って」
と言って、桐子ちゃんは体育館に戻り、練習を再開する。
実は桐子ちゃんも……どうやら、幸助の事が気になっていたらしい。
それで幸助と仲が良い、俺にあいつの事を聞きに来た事があってな。
断り切れずに色々と教えて、アプローチを頑張っていたんだが……うん、駄目だったんだよね。
告白する前に、あいつは皆川さんと付き合ってしまったのだ。
学校でも三本の指に入るハイスペック一軍の美少女たちを振って、顔は可愛いけど、素行も成績も良くない皆川さんと付き合いだしたんだもんな。
どういう趣味をしているんだかと思いながら、家路に着いていった。
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