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「俺は、捜索には出向けない」
タニアは眉を寄せる。
「何でよ? まさか、冒険者ギルドや傭兵ギルドに所属していないと、人探しはしちゃいけないとでも?」
ジャックスは言いにくそうに少し眉根を寄せた。
「いや、そう言うわけじゃないが」
ジャックスの態度ははっきりとしない。セリオも何か知っていそうな顔をしているが、口を挟むつもりはないらしい。タニアはじっとジャックスを見つめ、答えを待つ。しばらく黙っていたジャックスは、小さくため息をついた。
「街の外、特に山や森には魔獣がいる。それは、知っているだろ?」
ジャックスの問いかけに対し、タニアはうなずく。
その目で見たことはなかったが、深い森や山など自然の多い場所には魔獣が多数生息しているという。野生の魔獣は人間を襲う。そのため、魔獣と戦う術を持たない者は、危険な場所には立ち入らないというのが、街の暗黙のルールになっている。
どうしてもそういった場所へ行かなければならない時は、傭兵ギルドや冒険者ギルドに護衛を依頼する。それがこの街の常識だった。
「俺は、プレースメントセンターの職員。事務方だ」
「だから?」
「傭兵や冒険者でもねぇ俺が、仕事以外で魔獣のいる場所へしゃしゃり出ることを快く思わねぇ奴らは大勢いる。特に冒険者たちは血の気が多いからな。この街で穏便に過ごすには、奴らを刺激するわけにはいかんのだ。悪いな」
(つまりそれって、やっかみが出るほどオジサンが強いってことなんじゃ……)
タニアはそう思った。しかし、ジャックスの憂い顔をみるに、何か事情がありそうで、タニアはそれ以上無理強いすることが出来なかった。
静かになってしまったタニアを気遣ったのか、ジャックスがわざとらしいくらい大きな声を出す。
「だから、こいつの働きに存分に期待しよう。なぁ?」
ジャックスがセリオへ視線を向ける。タニアもじとっとした目で見る。
(この人、そんなに強そうには見えないんだけどなぁ)
そんなタニアの気持ちを見透かしたかのように、セリオがニコリと笑った。「任せてくれ」という意図の笑みなのだろうが、その笑顔の爽やかさがかえって胡散臭く、タニアは眉をひそめた。
しばらくの間しかめっ面をしていたタニアだったが、やがて意を決したように、ジャックスを見た。
「この人……セリオが森へ行くことは問題ないの?」
タニアの問いにジャックスは首を縦に振る。
「ああ」
ジャックスの言葉を受け、タニアはセリオに向き合った。
「アタシも一緒に行く」
突然の宣言に、それまで飄々としていたセリオの表情に、初めて動揺の色が浮かぶ。驚きに目を見開き、信じられないとばかりにタニアを凝視している。
その変化に手応えを感じたタニアは、セリオに見せつけるように、ふふんと胸を張った。
そんなタニアに対してセリオはすぐにその表情を消し去った。そして、基本モードのニッコリ笑顔を貼り付けて、あくまでも丁寧な口調で毒を吐く。
「君は自分の言っていることの意味がわかっているのかい? ただの女の子が、魔獣のいる森へ飛び込んで何が出来ると言うのさ? もう一人捜索対象を増やしたいのかい? そういうことなら、話が変わってくるけれど」
タニアは、セリオの可愛げない物言いにムッとする。しかし、こんな所で腹を立てていてもしょうがない。気持ちを抑えて冷静な声で答える。




