寝不足は最強スキル(本人無自覚)
深夜二時。
Midnight Mart 王都支店のバックヤードでは、
人類史上もっとも緊張感のない会議が開かれていた。
参加者: ・異世界王女
・宮廷魔術師
・謎の老人
・夜勤バイト
・寝不足の店長(主催)
店長は段ボールを椅子代わりに座り、目を半分閉じている。
店長
「……で…… ツナマヨが足りない、と……」
ユウト
「“と”じゃないです!! 異世界が買い占めてます!!」
アリシア王女
「我が王都では今、 “ツナマヨを食べた者は名を失わぬ” という噂が広まっている」
ユウト
「宗教じゃないですか!!」
リゼリア
「昨夜、神殿に“ツナマヨ祠”が建ちました」
ユウト
「早すぎる!!」
老人
「正式名称は “白銀の刻印飯”じゃ」
ユウト
「やめて!!」
店長は缶コーヒーを開ける。
プシュ。
その音だけで、全員が静かになる。
店長
「……対応は簡単……」
全員
「……!!」
ユウト
「やめてください!! そのテンションで世界変えないで!!」
店長
「……発注数…… 三倍……」
リゼリア
「なっ……!」
アリシア王女
「王国予算が……!」
ユウト
「倫理観は!?」
店長
「……眠い……」
全員
「最強すぎる……」
その瞬間。
ガラッ。
また客が来た。
今回は――
鎧を着た騎士団十名。
団長
「ここが……“聖ツナマヨの地”か……!」
ユウト
「違います!!」
団員
「試食は……?」
ユウト
「ないです!!」
だが、店長が一言。
店長
「……試食…… 半分切り……」
ユウト
「なんで対応するんですか!!」
団長は感動で震えた。
団長
「なんという慈悲……!」
リゼリア(小声)
「……この男…… 無意識に信仰を操作している……」
アリシア王女
「国王に知られたら終わる……」
老人
「すでに“店長神”として語られ始めておる」
ユウト
「やめて!!! 神増やさないで!!!」
店長はレジに立ち、ぼそっと言う。
店長
「……ポイントカード…… あります……?」
騎士団全員
「「「あります!!」」」
ユウト
「適応力おかしい!!」
ピッ、ピッ、とバーコード音。
そのたびに、
世界がほんの少し安定する気がした。
ユウト
「……ねえ…… これってさ……」
リゼリア
「ええ……」
アリシア王女
「戦争より……」
老人
「外交より……」
全員
「ツナマヨが効いている……」
店長はレジを打ち終え、伸びをした。
店長
「……今日…… 平和だね……」
ユウト
「基準がおかしい!!!」
蛍光灯が、いつも通りに光る。
Midnight Mart 王都支店――
今日もまた、
寝不足が世界を救っていた。




