39 中間発表
俺の「可愛い疑惑」が絶賛拡散中のなか、翔太と結衣さんのやり取りをニヤニヤ眺めていた遥香が、ふとこはるんを見つめた。
「ねぇ、こはるんさん」
「ん? なになに?」
「こはるんさんって、お兄ちゃんとは“友達”なんだよね?」
「うん! たくみんとは友達であり、ツッコミ役であり、からかい甲斐のある後輩でもあるよ!」
「え、それ最後のやつ必要?」
俺がツッコむと、こはるんは「必要必要!」と頷く。
「へぇ〜……じゃあ、こはるんさんは、お兄ちゃんのことどう思ってるの?」
遥香が探るような笑みを浮かべると、こはるんは「むむっ」と考え込んだ。
「たくみんはね〜、いいリアクションするし、ツッコミの切れ味もいいし……あと、うーん……」
「うーん?」
「……たま〜に、ちょっとだけカッコよく見える時があるかも?」
「は?」
俺、思わず固まる。
「おっ?」
翔太が即座に食いつく。
「ほう?」
白鳥さんもニヤリと微笑む。
「ほうほう?」
結衣さんまで楽しそうに身を乗り出す。
「ほ、ほんのたまーにね!? 普段は生乾きバイトくんだけど!」
「お前、また生乾きって言ったな!!?」
「え、でも“ちょっとカッコいい”って言ったのは本音?」
遥香がじりじりと詰め寄ると、こはるんはポンポンをぎゅっと抱きしめ、モジモジしながら目をそらした。
「え、えっと……そ、それは……ほら! たくみんって面白いし! うん! そういうこと!」
「なるほどね〜」
遥香はじっとこはるんを見た後、ニヤッと微笑む。
「ふふっ、お兄ちゃん、モテモテじゃん?」
「違う違う違う!! なんでそうなるんだよ!?」
俺が全力で否定するも、まわりの視線は「お前、完全にフラグ立ってるぞ」と言わんばかりのものだった。
──その時、店内に響くマイク音。
「えー! 皆さん、お待たせしましたぁぁ!! ただいまより、カフェ決定戦の中間発表を行います!!」
急にアナウンスが入り、店内がざわつく。
「おぉ! いよいよ結果発表ね!」
「こはるんさん、ポンポンの準備は!?」
「任せて!」
「よし、拓海、気合入れて聞けよ!」
「いや、お前ら完全に“決勝戦の応援席”みたいになってるけど、まだ勝負終わってないからな!?」
店内の視線がランキングボードに集まり、アナウンスが続く。
「現在の順位は……」
店内に響き渡るアナウンスに、俺たちは固唾を飲んでボードを見つめた。
しかし、映し出されたのは――
『カフェ店員・個性派ランキング2025』
「え、カフェの順位じゃないの!?」
俺の叫びに、周りのお客さんもざわつく。
「いや、これ間違いでしょ!? なんで店員ランキング!?」
しかし、アナウンスは無情にも続く。
「まずは『元気が良すぎてBGMとシンクロしてる部門』、第1位は……こはるん!」
「やったぁぁ! ポンポンが認められたぁぁ!!」
こはるんは店内をポンポン片手に飛び跳ねる。周囲の客も思わず拍手。
「いや、そんな部門あるか!? てか、こはるん、いつBGMとシンクロしてたんだよ!」
「たくみん、いつも気づいてなかったの!? 私、エスプレッソマシンの蒸気音に合わせてターンしてたのに!」
「そんなことしてたのかよ!?」
こはるんの無駄なスキルに店内には笑いが弾け、遥香も「こはるんさん、やっぱりすごい……」と感心している。
「次は『オーダーするだけで心が浄化される部門』、第1位は……白鳥さん!」
静かな拍手が広がる中、白鳥さんは優雅に微笑みながら一礼。
「エスプレッソを頼んだだけで、過去の恋愛の失敗を思い出し、立ち直るお客が続出。」
「いや、どういうこと!?」
「ただのカフェラテよ。心を込めて作っただけ」
「いや、それでお客さんが過去の恋愛の傷まで癒やされてるんですけど!?」
「拓海くんも試してみる?」
「やめてください! 俺まで何か思い出しちゃうから!」
周りの客も「わかる……」とうなずいていて、完全に白鳥さんのオーラに飲み込まれていた。
「そして……『店員なのに一番動揺してる部門』、第3位は……拓海くん!」
「ぎりぎり入ってるぅぅぅ! しかも3位。中途半端に滑り込んでるのが逆にダサい!」
周りからクスクスと笑い声が漏れる。
「やっぱりたくみん、そういうキャラだもんね!」
「いや、俺、普通に接客してるつもりなんだけど!?」
「でも、『かしこまりました』のつもりが『かしこまいりました』って言い間違えた回数、業界最多だって!」
「ちょっと待て、そんな統計取ってたのかよ!?」
遥香は「お兄ちゃん、3位でもすごいじゃん!」と無駄に励ましてくるし、翔太は「いや、むしろ“動揺界のエリート”やん!」と変な称号をつけてくるし、最悪だ。
「ふふ、さすが拓海くん。これで“可愛い系バイト”としての地位も確立だね」
「白鳥さんまでやめてください!!」
「以上、『カフェ店員・個性派ランキング』でした!」
店内は笑いと拍手に包まれた。
「まぁ、これでうちのカフェが個性派揃いって証明されたってことね」
いつの間にか現れた佐々木さんが、満足げにメモ帳をパタンと閉じる。
「いや、佐々木さん、これで商店街No.1カフェが狙えるんですか!?」
「ふふ、“個性派カフェ”って話題性抜群じゃない?」
「いや、俺の動揺力で話題になりたくない!!」
俺の叫びは虚しく店内に響き渡るのだった。




