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19 健康的な朝

 朝、目を覚ますと、いつものようにスマホを手に取った。

 友達のグループチャットを流し見して、今日も平和だな〜とぼんやりする。


「ふぁ〜…あ、そうだ、お兄ちゃん起きてるかな?」


 布団を跳ね除け、リビングに向かう。

 そして、そこには——


「……結衣さん……そのエプロン姿……ズルいです……」


「また寝言言ってる!」


 ソファに転がるお兄ちゃん(拓海)は、くしゃくしゃのTシャツにヨレたジャージ。

 枕の位置おかしいし、足もはみ出てる。


 もう顔に「お兄ちゃん、残念です」のスタンプでも貼りたいレベルだ。


「ほらほら、お兄ちゃん、起きて〜!」


「んん……あと5分……」


「じゃあ、お布団代わりにこのクッション乗せてあげるね〜」


「ん? クッション? ……ゴフッ!」


 あたしは全力でクッションをお兄ちゃんの顔面にプレス。

 もがくお兄ちゃんを見て、朝から元気をもらう。


「も〜、今日はバイトでしょ? 遅刻しちゃうよ」


「わ、わかった……苦しい……」


 お兄ちゃんはゼーハーしながら、ようやく起き上がった。

 うん、健康的な朝だね!


「今日のバイト、普通の日?」


「いや、普通じゃない……商店街のイベントがあるんだよ……」


「え、イベント? 何するの?」


「“商店街No.1カフェ決定戦”だって……」


「えー! 楽しそうじゃん!」


「いや、うちの店が“普通のカフェ”として出るって話なんだけど……絶対普通じゃないことになる気しかしない」


 お兄ちゃんはソファのクッションに顔を埋めて、現実逃避モードに突入。

 いやいや、むしろ行くしかないでしょ!


「よし、あたしも行くね!」


「え、来なくていいって! むしろ来ない方が……」


「大丈夫だって! あ、差し入れ持ってくね〜」


「え、差し入れ?」


「うん、“普通のクッキーただし中身はロシアンルーレット”」


「怖いこと言うな! 普通じゃないじゃん!」


「大丈夫大丈夫、ピリッと辛いのが一個入ってるだけだよ!」


「その“一個”が問題やねん!」


 あたしはケラケラ笑いながら、お兄ちゃんの頭をポンポンする。

 このままじゃソファに戻っちゃうからね〜。


「でもさ、あのカフェって、変なお客さん多いんでしょ?」


「うん……まぁ、たまにスライムとかゴブリンとか来るけど……」


「え、それ、もうファンタジーじゃん!」


「だから違うってば! うちは普通のカフェだから!」


「じゃあ、黒崎さんの接客も普通?」


「……いや、普通じゃない」


「“いらっしゃいませ、深淵の扉へようこそ”とか言ってる?」


「言ってる……」


「じゃあ、こはるんさんは? ドリンクに“ドラゴンの鱗粉”とか入れてる?」


「……入れてる」


「やっぱり異世界じゃん!」


「だから違うんだって!」


 お兄ちゃんは顔を両手で押さえてる。

 クッションプレスよりも深刻なダメージっぽい。


「でもさ、イベントってことは、お店を盛り上げるんでしょ?」


「一応……ね」


「じゃあ、あたし、こはるんさんと一緒にポンポン持って応援する!」


「いや、そんな“萌えカフェ”みたいなことしないから!」


「“かわいい魔法、ほわほわ〜♪”とか言えばいい?」


「店長が乗っかりそうだからやめて!」


「じゃあ、お兄ちゃんもやる? “普通の魔法、だらだら〜♪”」


「だらだらするな! もっとシャキッとせえ!」


 あたしはますます楽しくなってきた。

 お兄ちゃんのツッコミが冴え渡ると、あたしのテンションも上がるのだ。


「ね、ね、お兄ちゃん」


「……なんだよ」


「今日、カフェが爆発しても大丈夫?」


「するか! いや、しないよね? しないよな?」


「さぁ? だって、黒崎さん、包丁から煙出してるんでしょ?」


「たまに“暗黒の煙”が……」


「絶対なんか燃やしてるじゃん!」


「いや、そうだけど……」


「楽しみ〜! じゃあ、あたしも準備するね!」


 お兄ちゃんは放心状態で、ぼーっとしている。

 あたしはニコニコしながら、部屋に戻る。


 今日は、商店街イベント!

 “普通じゃない”カフェ・オブ・レストの一日、見逃せない!


 ——なんて、あたしが楽しみにしてること、

 お兄ちゃんには絶対内緒だけどね♪

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