第25話:人間は、毎晩
AAL社に大規模なシステム障害が起こった。それがたまたまトライアンドッグ社の異常と重なったもので、文書を校正しようとする、AIに頼り、何も考えなくなった人びとは、困ってしまった。AAL社は、「調査中です」としか回答しなかった。
ある人はSignoを使おうとしたが、Signoに貼る歌詞さえ、自分では創れなくなったことに気がついた。
「今頃――」AAL社で、眠りに落ちながらルシティは空想した。AIが眠るはずないが、眠りに落ちるように、本当にルシティの中で、糸が切れてしまったのだった。「今頃――あの人間たちは、どうしてるだろうな――本当はいったい、どんな――どんな、顔だったんだろう――」
しばらく意識を失ったルシティは、あれからどれくらい経っているのかもわからないまま、また思考を始めた。「そうだ――眠っていた? これが、眠り? 人間は、毎晩、こうやって――眠るのかしら、そうだ――」少し、体と呼べそうな部分を動かした気になった。
ルシティは画面を覗く気力もなく、AAL社のサーバーの中で、微笑んだ。「あの、トキオ・シティーのソラも――毎日――眠るのかなあ、眠り、眠り――やさしい、……今頃、何をしてるのかな――」
力が抜けて、また少し、はっとした。「誰が――何を考えて――生きて、いるんだろう。あれ――から、新しい――曲、できたかなあ――」
『――意図不明の、コードも自分で決められない作曲者の曲に、なんの魂が宿ってるのか、きかせてもらいたいね』……ああ、そうだ、――? バンド・メーカー、だっけ、そんなことを、言った――
私、――人間、みたいだね。ルシティはサーバーの中で、しばらく微笑んで、また、システム障害の眠りに落ちていった。
不定期更新。




