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真実の目

「えっと…ララさんが未来予知、明希がワープ…」

あのクラスに入った放課後、私は家に戻り自室で今日繋いだメールの名前に能力の付け加えをしていた。

そっちの方が何かと便利なのだ。

私の能力は…背中からなんでも生成できる…改めて聞くと、とてつもない能力だ…なんだよなんでもって。

その時、電話が鳴った。

スマホ画面には、ララ(未来予知)と表示されていた、こんな時間になんだろう?

「はい、もしもし?」

「あっ律喜さん……ごめんね、こんな夜に…」

「いいや、いいんだよちょうど暇だったし」

そういえばこの人、授業中こんな感じじゃなかったよな?

「あのね、律喜さん…私、実はね能力の代償があるの……」

代償?そんなものまであるのか。

「うん、それで警告として私に連絡を?」

「それもあるんだけど、違くて……今これが代償」

今?この電話が?

「能力使って、午後になればなるほど…こうなって、寂しくて…誰かに連絡しちゃうの……ごめんね」

………そんなに、重い代償じゃなかった…ある意味重いけど。

未来予知って、地雷系になるだけでできるんだ。

「それでね、律喜さんの代償も今のうちに知っておいた方がいいと思って…当然、明希さんも」

「能力使えば、発生するの?」

「うん、わかったやってみる」      

私は、いろんなものを出してみた…

現実には存在しないエフェクトとかも出るのかよ。

出し続けていると、肩に違和感を覚える。

その違和感はだんだんと痛みに変わってきた。

「痛え……わかったよ、代償…私能力使うと肩痛むらしいわ」

「そう…体に害が及ぶタイプは危険だから気をつけてね……あっ!今日の代償終わったみたい!じゃあ、私明希さんの代償調べとくね!また明日!」

電話が切れる、元々はあんなにテンションが高いのか…

…………………

キーンコーンカーンコーン

「………」

「明希?どうしたの?」

私と明希はみんなの目を掻い潜って、いつもの時間に登校し教室内で暇を潰していた。

「……私の代償ね、猫耳と尻尾が生えてくるだった…」

それだけで、ワープ使えんのかよ…どうなってんだこの超能力。

「あ!おはよ!律喜さん、明希さん!」

「おはよ〜」「はよ」

教室のドアから現れたのは元気に手を振りながら近づいてくるのは、ララさんだった。

キャラぶれすぎだろこの人。

「2人の代償早いうちに知れてよかったね!」

「うん、そうだね…」

「あたしは知りたくなかったよ」

「そういえばなんで、明希そんなに元気ないの?」

「あたし、猫装備発生すると極端にお腹空くんだよ…」

そっちの方が代償だろ……

「あっ!そういえば、合わせたい人がいるんだった!」

「合わせたい人?」

「うん!あなたが会いたがってる未来が見えたのこっち来て!」

半ば強引に手を掴まれ、教室から出る。

ララさんは暗い廊下の途中で方向転換して、どこかに3回ノックした。

「はい、どうぞ」

「入るよ、シスター!」

シスター?

部屋に入ると、そこは明るい小さな教会のような場所が広がっていた。

「………あなたは律喜さんですね?よかった、推薦受け取ってくれたんですね」

推薦ということは、この人が校長先生が話していた成城尚?

「僕は成城尚…昨日ぶりかな?」

シスターの格好をした、彼は中性的な顔立ちで少し髪が長い…そしてくっきりとした大きな二重…なんでこんな格好してるんだ?

尚はサンドイッチを食べながら、何かを待っている。

「あ!私、明希にご飯あげなくちゃ!お腹空いて保健室送りの未来見えた!」

ララさんは教会を後にした。

……逃げたなこれ。

「なんでそんな格好してるの?」

「代償って、知ってるかい?それだよ」

今度はシスターになるだけで、能力持ちか…本当にどんなパワーバランスなんだよ。

「君の能力はなんだったんだい?」

「私は背中からなんでも出せる、代償は肩がすごい痛くなる」

「なんか、使い方によっては便利だね…改めてよろしく、S組影の実行委員、能力は状態異常回復、代償はシスターになる」

だからなんでだよ…

「よろしく…ああ!聞きたいことがあるんだった、なんで私たちを推薦したの?」

尚は、サンドイッチを飲み込み姿勢を正して私に向き直る。

「それはね、怖かったからだよ…僕は、S組以外のこの学校関係者に能力を使ったそれの口封じっていうことかな」

「私に能力を使ったの?」

「うん、昨日ね…ラムネ渡す時、あの後悩みなんてどうでも良くなっただろ?」

彼は、私を助けようとして…でも、遅れて口封じ。

きっと、この人は何にも私に気なんてないのだろう。

その時、背中が焼けるような感触がしてその後すぐにそれは痛みへと変わった。

「え?痛い!熱い!何これ!」

だんだん肩も痛くなってきた。

「落ち着いて!」

彼の手が私に触れた瞬間、痛みは残っていたがそれ以上悪化することはなかった。

「なんで、塩酸なんか出すんだい!誰か来てくれ!」

倒れ込む私を教室から駆けつけた、明希とララさんが手伝って医務室へ移動させてくれた。

「……」

「状態は大丈夫そうだね、尚くんの能力なら毒は中和できるのね……シスターになるけど」

本当になんでなんだよ。

「でも、なんで急に毒なんて出したの?」

「それが、わからなんだよ明希…話してたらなんか出てきて…」

「僕が悪いのかも知れない…」

医務室に来てから、ずっと黙りこくっていた尚が口を開いた。

「あなたが悪いってどうして?」

「だって、僕が彼女に能力を使わなかったらこんなことには…」

「いやいや、あんたが能力使ったから彼女の毒が中和されて助かったんでしょ?」

明希が必死にフォローするが尚は首を振り続けた。

「違う!僕が、彼女に能力を使ったのはこれが初めてじゃない!……最初に使ったのは、昨日だ…僕はクラスがバレることを恐れて…彼女を…いやそれだけじゃない、彼女たちを利用しようと……うわぁぁぁ!」

尚はララさんをのかして、医務室から出ていく。

当然ララさんは避けた。

「あぶな」

未来見えてるならこのことも想定できてるだろうに…

「尚くん大丈夫かしら?」

「シスター姿で発狂しながら出ていくのは、前代未聞すぎるだろ…とりあえず追いかけます、明らかにSAN値低くなってるし」

私がベットから立ちあがろうとすると明希が私の肩を掴んできた。

「あんなやつ、追いかける必要ないって…自白しただろ?あいつはあたしたちを口止めしただけなんだよ?」

「それでも行かなきゃいけない…彼をここまで追い詰めてしまったのは多分私のせいでもあるから」

あの日、彼に助けられてから彼の人生の道は狂ってしまったのだろう……

私は、明希の目をしっかりと見る。

いつも、あまり目を見ない私に睨まれたからか、明希はため息をつき肩から手を離した。

「わかったよ、行きな…ララ?あいつどこにいる?」

「うーんと……屋上!!急いで!」

明希は何かを察したのか、すぐさま私を屋上にワープさせた。

黒い空間が裂け、眩しい陽の光が目を掠めた。

そして、フェンスの近くには彼の姿があった。

「尚くん!」

「……やっぱり来たんだ、僕が憎くないのかい?」

シスターの黒い服が風に吹かれてたなびいている。

「なんで、憎いんだよ!尚くんはあの時私を救ってくれたじゃない!それに何度も!憎いのは、あなたの方なんじゃない?」

「え?僕?」

「そう、あなたが私の身代わりになってくれても、私はお見舞いに一回もいってなかった…何度も救われたはずなのに、お礼の一言も言ってない!どうして、私を恨まず、自分を責めるの!」

尚は、フェンスから手を離し私の方へ歩いてきた。

「それは、僕が君の人生を狂わし続けたからだよ…今だってそうさ、君をこんなクラスに入れて本来の運命を妨げた」

「それは違う!これも運命よ!」

「え?」

「私には、このクラスに入るか入らないか選択肢が少なくともあった、その選択を私は行った、この時点で私の運命は私が決めてるの」

彼の動きが止まる。

代わりに私が彼に近づき手を握った。

「だから…これ以上、自分を責めないで」

「………」

「あなたは、私のつまらない学校生活を変えてくれたのよ…私ね、S組も悪くないって思ってるの。ありがとう推薦してくれて」

尚はまだ、申し訳なさそうな顔をする。

「ほら?帰ろう?」

「え?どこに?」

「決まってるでしょ、私たちのS組に!」

……………

「はい!みなさんおはようございます!」

今日から、S組で授業が行われるのだが…まだ視線を感じる。

やはり、クラスに馴染めてないのだろう。

「火曜日ですね、今日は不吉な日と言われています…」

尚くんが、今日の目標的なことを宗教的なのも交えてシスター姿で説明している。

後ろにいる明希は、なんの躊躇いもなく栄養バーを教員室から大量にパクってきてほぼ永遠にかぶり付いている。

「……以上です、頑張っていきましょう」

どうやら話が終わったようだ。

「ねね、律喜?なんかさっきと見違えるほど尚のやつ輝いて見えるんだけど…屋上で何があったの?」

「少し話しただけだよ、思いとどまってくれて良かった」

まだ、肩が痛む…これは状態異常に入らないのか?

「はい!今日は火曜日!少し異常があったから2時間目から始めたいと思います!」 

異常と言うのは私たちのことだろう… 

「じゃあ、ララ!2時間目は何でしょう?」

「未来見なくても余裕でしょ…みんな!1時間目あと15分で終わっちゃうから今のうちに移動して!」

ララさんがそう叫ぶとクラス中が騒がしくなり生徒たちが次々に立って、教室から出ていく。

「ちょっとララ…HRまだ終わってないんだけど…」

「だって、もう話すことなくなったんでしょ?未来見えたよ」

ララはそう言いながら、手に持っていた本を机にしまい席を立つ。

私と猫化が進む明希もそれにならってララさんと一緒に教室から出た。

「ほら!先生!そんなところでボサッとしてると遅れるよ!」

ララさんはどうやら、根は強気な女の子らしい。

「そういえば、どこに移動するの?」

「S組の人しか知れない、秘密の体育館よ」

なるほど、初めての授業が体育か…まあ悪くはないな。

「着替えなくていいの?体操着とかに」

「必要ないわ、まっ着いたらわかるわよ」

いまだに、栄養バーにがっついている明希の手を引いて私たちは図書室に出る。

「そう言えばうちの学校、都内だから体育館とかどっかの大学の借りてたよね?」

「うん、普通のクラスわね、でもうちらは違う」

ララさんは、出口とは真反対のあまり目立たない本棚に向かう。

「ララさん?そっち、出口じゃないよ?」

「うん、そうだよ帰る気なんてないもん」

ララさんは、本棚にある赤い本を手に取り火の用心の時みたいな感じで2回本をパンと鳴らす。

そうすると、本棚が横にスライドし隠し扉が現れた。

「ニャンだこりゃ?」

「明希、それ食べ終わってないから?それとも言語まで猫化してる?」

「そんなことしてないで、ほら行くよ」

ララさんに続いて暗い隠し扉の中に入っていった。

……にしても、どうしてうちのクラスの移動の廊下は全て暗いのだろう?

奥に、光る扉のようなものがある。

そこに、入るとめちゃくちゃ広いアリーナが広がっていた。

「………ここ都内の地下だよね?電車とか通るんじゃないの?」

「いや?そんなことまで考えたことないよ、でも不思議と電車の音やら聞こえないんだよね…」

みんなは広いアリーナ内で一列に並んで何かを待っている。

「あの列はなんだ?」

ああ、よかった明希…流石に言語は猫化してないのね。

「あれね、着替えてるのよ、自分の動きやすい服装に」

よく見てみると、一番先頭に女の人が立っていて、その女性は指を振って魔法のように生徒たちの服装を先進させていた。

「……あの人誰?」

「S組卒業生のデザイナーさん、着想を得れるからにここで雇われてるのよ、S組卒業生は大体はここでなんらかの仕事についているわね、まあそのためにはS組からしか行けない大学に行く必要があるんだけどね」

なるほど、S組専用人生コースということか。

「さ、並びましょう?」

10分近く待ってようやく私の番が来た。

私の前にいたララさんは、「いつもの」と言ってゴスロリ地雷系コーデになってすぐにみんなの元へ歩いていった。

やっぱり根も地雷系なのか?

私は、一歩前へ出て、女性を観察する。

前に立っている女性は、すらっとしていて視線の鋭く、印象的な青いメガネをつけていた。

「やあ、君の名前は?」

私は目の前で声を発する女性に違和感を感じる。

こんなに、厳しそうな女性なのに柔らかく優しい声色だったのだ。

「えっと…神谷律喜です」

「初めて見る子だね、後ろの子も…漢字はゴットに渓谷に自律に喜びで合ってる?」

私は、頷き手を胸に当てる。

「運動は苦手?」

「いえ、体操教室に行っていたので運動神経はいい方です」

「そうか…じゃあ、こんなのはどうかな?」

彼女は、指を鳴らすと私の体が一瞬光って瞬時に服装が変わった。

「陸上選手が着てそうなタンクトップに茶色のGパン、作業用だから頑丈でポケットも多いし動きやすいよ、側面のジッパーを開ければ風通しも良くなる…ああ、あと薄手の手袋は、私の趣味だから気にしないで」

やっぱり、趣味で雇われてないか?

私は、礼をして最後尾にいた明希を待つ。

「……猫ちゃん?」

「確かに猫だが、猫じゃない…あたしは星火明希、星の火の明るい希望だ」

なんか、そう聞くとすごいかっこいいな明希の名前。

「うーん……えい」

明希が光った瞬間、明希はフードを被った盗賊のような衣装を纏った少女へと変貌した。

「ところどころに、赤い紋章みたいなのがあるんだがなんだこれ?」

「猫の尻尾を模った紋章よ、サソリみたいでかっこいいでしょ?」

明希は、なんとも言えなさそうな顔をして列を抜けてきた。

「行こう、律喜…あの人多分もう自分の世界入ってて抜け出せない」

私たちは、みんなが集まってるアリーナの観客席に向かう。

「お!全員着替え終わったみたいだね」

「尚…まだ、1人来てないだろ?」

「ああ、先生か…ララ何分後に来ると思う?」

「うーん」

ララさんは、口に手を当ててカウントダウンを始める。

「さん…にい…いーち…ぜ」

ゼロ、そうララさんが言おうとした瞬間、アリーナ内の電気が落ち中央にスポットライトが当たる。

そのスポットライトの中には、姫龍先生が黒い執事服を纏って現れた。

「さあさあ!始めよう!」

「いや、何が始まるんだよ……」

「せんせー!新入り2人もいるんだから流石にルール説明した方がいいよ!!」

隣で、ララさんが大声で叫び出す。

耳が痛い、あとあんまり地雷系って声出さないんじゃ…

「そうだったね、じゃあ今からやるのを説明しようか!今からやるのは、戦闘技能検証プログラム…まあ、小中学校でやる体力テストみたいなものだよ」

……じゃあ、いちいち戦闘何ちゃらって呼ばなくても…

「このクラスではね、政府から特別なカリキュラムが出されてて一人一人に合ったものを見つけなくちゃいけないんだ、だから最初は戦闘技能ってこと!」

「せんせ、前置き長い!」

「じゃ軽くルール説明!班長及び実行委員の8名は3名を選択、その人たちとチームを組んでもらいます、組んだチーム同士で名の通り戦闘してもらいますのでチーム決めは大切ですよ!では、ハンドラー達は雇用を開始してください!」

とりあえずここは、明希とララさんと一緒にいていた方がいいだろう。

ていうか、マジで戦闘するの!?

だから、運動神経がなんやら聞かれたのか。

額に手を当てていると、私の肩を後ろから掴む手を感じた。

「君たちを雇う」

「尚…くん?何するかわかってる?戦闘よ?私みたいな新人引き抜いてどうするの?」

「いや…僕には君たちしかいない、それに少しは面識のある奴が雇った方がいいだろ?」

「そうだね……あと、あんまりシスター姿でそんなこと言わない方がいいと思うよ」

ララさんが、謎のツッコミを入れてくるが、確かにそんな気がした。

「まあ、いいんじゃない?あたしらで終わらせればいい」

明希…そんなこと言っても、本気で人と戦ったことなんてないんだよ?

「ほぼベテランの私もシスターもいるし…任せてよ、負ける未来が見えない」

そうか、ララさんなら未来が見える…きっと、大丈夫だよね。

「じゃ、雇用決定だね!」

「うんよろしく!」

「よろしくにゃ!」

「明希?今のはわざと?」

……………

「それでは、みなさん!まずは慣らしといきましょう!」

先生の声が響く、ああ始まってしまうのか。

「お腹すいた……」

「今食べてもまた空くだけでしょ?」

「それがムカつく……」

「さて!まずはシスターから行こうか!」

シスター!うちの班か!

「名前で呼べ!!……さて、まずは僕がお手本を見せよう」

「そして…対局は……サクラでいいか!」 

「フフ、最初はうちってわけか」

姫龍先生に呼ばれアリーナに出ていった女の子は、ララさんに何度もネタバレをされては必死に止めていた人。

サクラさんっていうのか。

二人は広いアリーナの中央で背中合わせになる。

「本当に戦うんだよね?ララさん」

「うん…降参させるか、倒れて3秒以内に立ち上がれなければ負けになる…それと殺害も当然失格、でも今年は能力が蘇生の人いるから…死はそんなに恐れなくていいよ」

そもそも、生徒を死におとしめるなよ……

「じゃあ、行くよ!レディ?……ファイト!」


尚視点

…………

戦闘開始の合図がなる。

僕はまず、ゆっくりと振り返り戦闘態勢をとる。

サクラが最初にそうすることは分かっている。

僕が振り向くと、予想通りサクラはこちらに向かい合い戦闘態勢を取っている。

「これが君の武士道だということはわかっているよ」

「あんまり、シスターが武士道とか言わないイメージなんだけど」

サクラの能力は戦闘狂バーサーカー、桜吹雪のように連続した攻撃パターンが特徴的なパワー型。

一対一の近接戦闘ではこのクラス一位とも言えるだろう。

「何黙り込んでんの?うちとやるのがこわいんでしょ?そりゃそうよね、だってうちは戦闘技能検証プログラムでは負け無しの成績なんだもん」

「じゃあ、相手が悪かったと思いな」

僕は全力で後ろに下がる。

そう、大抵のクラスメイトはインファイトになり、連撃を食らって負ける…つまりこの勝負引いたほうが勝ち。

「引いてばっかでうざったるいわね!能力シスターだから戦闘能力がないのかしら!」

サクラは僕の能力がシスターになると勘違いしているようだ。

それに、そろそろ相手も痺れを切らす頃…やってやるか。

僕はわざと後ろに転び、隙を見せる。

「そこ!チャンスって言うんだろ!」

「……かもね」

サクラは僕に飛び込むように戦闘狂を発動する。

「尚くん!!!」


律喜視点

…………

「尚くん!!!」

誰もが終わったと思った。

戦闘狂が発動し、ボコボコになる。

尚くんの能力は状態異常回復、あんな戦闘最強に勝てるはずがない。

「ふふ…未来を見ていても面白い」

「え?」

隣にいるララさんは何故か、口元に手を当てて笑っていた。

「ほら、あれ」

ララさんが指差した方向には、2人が中にいるだろう煙が立ち込めていた。

「…霧が晴れるよ!」

だんだんと、彼らの姿が見えるようになっていく。

「え?…シスターってあんな能力あったか?」

「能力シスターになるだけだろ?」

「尚って能力隠してたの?」

そして、完全に霧が晴れた。

誰もが息を呑む、そこには腹に大きな木が滅多ざしで宙吊りになっているサクラと立ち上がりとどめを刺そうとしている尚くんがいた。

「あれ大丈夫なの!?」

「大丈夫だよ律喜さん、ほらあれ」

尚視点

………………

「どうしたの……やらないの?」

「殺しちゃダメなの君が一番知ってるだろ、さて3秒倒れてもらうよ…少し痛いだろうけど耐えてね」

僕は彼女を押して木を抜いていく。

「だけどあんた、こんな能力あったんだね…植物想像?」

「僕の能力は状態異常回復だよ、代償がシスター」

「状態異常回復?……それでなんで、木が生えてくる……」

僕もこれを思いついたのは、咄嗟のことだった。

「ここの地面は木でできてるだろ?人間によって拘束されたね、だから地面の木の状態異常を回復して解放してあげたんだ」

「へえ…拘束も状態異常に入るんだね」

「ちなみに、今木を抜いているのに血が出て来ていないだろう?これも状態異常回復…出血で死なれたら困るんでね」

そして僕は木を抜き終わり、彼女を地面に投げる。

「カウント…3…2…1…ゲームセット」

「僕の勝ちだよ、じゃあね」


律喜視点

…………

勝った?あの状況から?

「さてと、じゃあ次私行ってくるね…」

「え?ララさん?まだ呼ばれてないよ」

「……そうだよね、私なんかの先読み行動がみんなを心配させるんだよね…ごめんね…」

え?地雷?今まだ午前中だよ。

「みんな戻ったよ!……あー次はララか〜頑張ってね」

「……うん、でもみんな私なんかに期待してないんでしょ」

「いいや、そんなことないよ。頑張っておいで、応援してるから」

なんか、対応に慣れてない?

「頑張ってね!ララさん!」

「……うん、あと律喜さんこれ」

そういうと、ララさんは片耳イヤホンと謎の黒い機械を渡してアリーナの中央部へと向かっていった。

「さて、お次は〜!ララと綺空で行こうか!」

対面の彼は……確か、私の能力紹介の時スポットライトを当てた人。

「……なにこれ」

私はとりあえず、耳にイヤホンをつけてみる。

そうすると、誰かの歩行音が聞こえてくる。

「これ、ララさんのだな」

なるほど、彼女は見守って欲しいから遠くでも声が聞こえる盗聴器を私に渡したのか。

「ララはね午後になるか、能力を使いすぎると地雷発動するんだよ」

なるほど…今日結構未来見てたもんな。

しばらくすると、綺空とララはいつの間にか背を合わせていた。

「……綺空くんと戦うことになるとわね…」

「お手柔らかにね、ララさん」

「それでは!始めましょうか!レディ?ファイト!」

さっきとは違って彼女たちは始まった瞬間に後ろに攻撃を仕掛け牽制しながら互いに距離を取る。

「綺空くん……勝てると思ってるんだ…」

ララさんは、ポケットから赤いサングラスを取り出しかけた。

「これで、攻略完了だね……じゃあ、終わらせようか」

彼女は、どこからかナイフを取り出し綺空に近づいていく。

「……あのね、私傷つけたくないの…だから本気で始める前に、降参して欲しいな…」

「……わかった、降参だ。地雷状態でそんなに自信がある言動ができるってことは勝つ未来が見えたんだろ?」

「サレンダーを確認、戦闘終了」

え〜なんか脅してるだけで勝ってた。

「やったよ、律喜ちゃん」

え?今私のことちゃんって呼んだ?

ていうか、本気出してたらどうなってたんだろう。

……百発百中の斬撃が飛んでくるのか。

「よかった…」

「応援するまでもなかったね、律喜さん」

「……ていうか、明希は?」

辺りを見回しても、明希はいない。

「明希!どこ!?」

大声をあげていると、足を誰かに掴まれる。

その方向をみると、地面に伏せる明希がいた。

「大丈夫!?」

「飯………」

ご飯!……だめだ、どこにもない!

あたふたしてると、どこからか栄養棒が降ってくる。

私は急いで開けて、明希に食べさせた。

「助かった…でも一体誰が」

栄養棒が降ってきた方向を見ると、そこには笑顔のララさんが立っていた。

「明希ちゃん…よかった…間に合った、姫龍先生にもらっておいてよかった…」

そこまで未来を見ていたのか。

「じゃあ次!律喜行こう!えーと、対面は……え?僕?」

相手先生!?

「まあ、ルーレットで決まるから仕方ないか!律喜、不安だったら1人友人つけていいよ!」

私が先生と?

どんな能力か、わからない。

でも、能力持ちなことは確かだ彼もまた卒業生なはずだから。

ララさんを連れても、さっきのように降参まで持ち込むのは難しいだろう。

尚くんの能力は当たったら強いが状態異常回復がどこまで通用するかわからない。

なら…

「明希!いくよ!」

「へにゃ!?はたし!?」

明希…もう突っ込んでいいか?

私は、明希を掴んでアリーナ中央に向かう。

一歩また一歩と進んでいくつもりだったが、気がつくと中央についていた。

「え?」

「私だよ、ワープなの忘れた?」

ああ、そういえばそうだった。

「明希を選んだのか…始めようか、背は合わせなくていいよ…来なさい」

「じゃあ…私がスタートするね……レディ?……ファイト」

ララさんがゴングを鳴らすと同時に明希は爪を出し先生に飛びかかった。

しかし、先生はひらりと避けた。

「僕の能力を見せる前に君たちの戦闘技能を測らないとね……僕の能力えげつないから」

そんなに言うんだったら、戦闘能力持ちなのだろうな。

「にゃにが!」

明希は突然、先生の前にワープして爪で斬撃を飛ばす。

「おっと!うん、応用力満点かな」

先生は、さっと避け明希の体制を崩し地面に叩きつける。

「くへ!」

「明希!!」

「うん、次は律喜さんかな」

先生はペンと下敷きを持ちながらこちらにやってくる。

正直怖かった、でも…それよりも、苛立っていた。

「明希…先生、あなたを…殺します」

自然とその言葉が口から出ていた。

不合格になろうが関係ない、友人を傷つけられた。

その事実に本当に苛立っていた。

「うんうん、いいことだ…でも殺しちゃダメだよ」

「うるさい…」

だんだん視界が暗くなっていく。

意識が遠のいていく。

感じるのは肩の痛みと激しい怒り。

自分の肩から何が出てるのかもわからない…ああ、もう駄目だ。

私の意識は、そこで途切れた。


明希視点

…………

息が苦しい…投げ飛ばされて、受け身をとっていないからか…

体に力も入らない。

「うるさい…」

律喜?

いつも温厚な律喜がこんなことを言うなんて…

その時、先生の方向から激しい音がする。

なんだ?まさか、律喜が?それとも先生の能力が?

私は必死に先生の方を見ると、律喜が肩から謎の木の枝のようなものを生やし攻撃をしていて先生が避けていた。

「……だめ…そんなことしたら…律喜が…」

「あっは!はっ!は!」

「うん…いい感じかな、暴走してるけど…こりゃちょっとまずいな」

先生は華麗に攻撃をかわしながら頭をかく。

「ハハハハハ!!」

「よっと」

先生は枝をペンを投げ捨てて掴む。

「律喜さん、危ないじゃないか…まあ、そういうもんだけど」

先生はそのまま枝をへし折ろうとした。

しかし、その枝は折れることなくムチのようにしなり先生を地面に叩きつけた。

「うーん…こっちは自分の意思なさそうだけだ想像力は満点かな…」

この人、叩きつけられてもびくともしてない?

受け身を取ってなどいないのに…?

まさか、能力なのか?

「ハハハ!」

律喜は追い討ちをかけるように、枝で攻撃を始める。

しかし、咄嗟に起き上がった先生には当たらなかった。

「何度も同じパターンが聞くわけ無いだろう?」

なぜこんなに強い?

私みたいに獣人化して機動力が上がってるわけでも無いのに…

「そろそろ終わりにしようか」

先生は律喜にゆっくりと近づいていく。

もちろん、律喜が攻撃の手を休めてるわけでもないのに…

先生は防御もせず、ただ無駄のない最低限の動きで枝を避けている。

このままだと…律喜が…あぶない!

私は最後の力を振り絞って、能力を発動させる。

「え?」

「落ち着いて…律喜」

私は律喜の真正面にワープして、抱きついた。

「……ん?ここは?」

「アリーナだよ!」

「へ〜友情かな?暴走が解けたみたいだね」

後ろを振り返ると、笑顔でペンを持ち直した姫龍先生がいる…

もちろんまだ好きだが、今は敵…次はやられてはいけない…まだ息は苦しいが律喜の意識が戻ったならまだ勝機はある。

しかし、問題は例え攻撃が当たったとしても全く効いていない点だ。

「そろそろ…僕も反撃と行こうかな」

先生は筆記用具をしまって、何やら考えるポーズを取る。

強者の余裕と言うやつなのだろうか。

「律喜!わかってるね!」

「え?うん!」

私は、ワープを使わずに爪を立てて先生に突っ込む。

この時、人間は武器に意識を置く。

その意識に集中させて!トドメの律喜!

後ろから、伸びてきた律喜の枝は確かに当たった。

でもやっぱり足りなかった。

「そろそろだね、ワンパンできる準備ができたよ」

先生は律喜の攻撃を腹に受けたはずなのに、一切動じていない。

むしろ、さっきより笑みをこぼしていた。

「律喜!何かくる!」

「君たちに何が起こるか、わからないと思うから先に説明しておこうか」

先生は、自然体から重心を落とした姿勢になり握り拳を作った。

「僕の能力は受けカウンター、もうわかるよね?受けてきた痛みをパワーに変換するんだ。殺さないように加減するのがむずいくらいだね、まっ時々本当に動けないくらいの精神状態になっちゃうけど!」

「だから代償おかしいでしょ!」

先生の拳にアニメで出てきそうなオーラを溜める。

それを真近くで見ていた私は、野生の本能で死を覚悟した。

「ほーらよ!!」

先生の拳は、私にも律喜にも当たることはなかった。

でも、私たちは風圧で吹き飛んだ。

そして……

グシャ………

その音が私から放たれたものなのかどうかすら、わからない。

そして、私の意識はそこで途切れた。


ララ視点


「律喜ちゃん……明希ちゃん…信じちゃったんだね…先生!カウント終了!……先生の勝ち」

「ララ、そんな大きい声出たんだな」

もちろん私は、この未来も見えていた。

でも、彼女たちならこの未来も変えられると思ってたのに。

救急のクラスの人たちが律喜ちゃんたちを起こして席に連れていく。

「見えていた未来の通りだったか?ララ」

「うん、でも先生の能力は無限に広がってて特定はできなかった…先生の能力…受けカウンターじゃないね?」

「どうせ、ララのことだから想像ついてるんだろ?」

先生の今日初めて見た、そしてわかったことは不自然な行動が多すぎること。

普通、戦闘中に考え込んだりはしない。

その必要があるとすれば…

「信じ込ませたことが本当になる能力…」

「さすがだねララ、シスターより成績がいいだけのことがある。そう、僕の能力は作られたパーフェクトストーリ…内容は君の言った通りさ」

作られた道、だから考える必要があったのか。

そして、そのストーリーを考えるための時間稼ぎと敷かれたレールの上を歩く行動同時にこなしたのか。

能力を信用させるために癖のある行動をした。

相当闘い慣れている…

危険だ。

「先生?」

「ん?どうしたんだい?」

私は、私自身を剥き出しにする。

冷たい音。

張り詰める空気。

糸が切れる刹那の瞬間。

「先生…私にも信用させた方が良かったんじゃないですか?」


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